2023年04月24日

くみいれ


堂の天井(くみいれ)の上にかき上りて、川人は呪を誦(ず)し、大納言は三密を唱へてゐたり(今昔物語)、

とある、

くみいれ、

は、

組入天井、

の略で(デジタル大辞泉・岩波古語辞典)、

格子形に組んだ天井。6~8cm角くらいの木材を10~20cm間隔に組むもので、古代の寺院に多く用いられたろ、

とあるhttps://www.architectjiten.net/ag15/ag15_621.html

格縁(ごうぶち 天井板に格子の形に組まれた木)を碁盤目に組み、その上に裏板を張って仕上げた天井、

である。因みに、

三密、

とは、

身密・語密(口密)・意密(心密)、

の三で、おもに密教でいい、

身密・手に諸尊の印契(印相)を結ぶ、
口密(語密)・口に真言を読誦する、
意密・意(こころ)に曼荼羅の諸尊を観想する、

の総称(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E5%AF%86・日本大百科全書)、顕教(けんぎょう)では、凡人では推し測れない仏の、

身業(しんごう)、
口業(くごう)、
意業(いごう)、

の、

三業(さんごう・さんぎょう)、

をいう(日本大百科全書・https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A5%AD#%E4%B8%89%E6%A5%AD)。

格天井.jpg



「組入天井」は、

格天井(ごうてんじょう)、

と言われるもののひとつで、

格間は一般的に45〜90センチ程度の正方形、

をしており、格子の間隔が狭いもの(6~8センチ角くらいの木材を10~20センチ間隔)に組むのを、

組入天井、

といい、裏板の代わりにさらに格子を組み入れたものを、

小組格天井(こぐみごうてんじょう)、

という。

格調高い天井様式で、重厚感があり、書院造り、寺院建築、大広間などに用いられている、

とある(https://www.homes.co.jp/words/k5/525001395/)

ただ、

組入天井、

と、

格天井、

とは厳密には異なり、組入(くみいれ)天井は、

梁や桁といった構造材に格子の木組みをのせ、板をかぶせる天井です。一見格天井と同じに見えますが、格天井が梁や桁といった構造材とは完全に独立した天井であるのに対し、組入天井は構造材に直接天井を乗せており、その分天井高が高くなります、

とありhttps://nara-atlas.com/naraarch-glossary/ceiling/、水平な天井としては最も古くから見られる屋根で、法隆寺や唐招提寺の金堂などで見ることができるが、中世までの寺院建築ではたびたび用いられたものの、近代和風建築においては格天井が多用された(仝上)とある。

組み入れ天井.jpg

(組入(くみいれ)天井 https://blog.goo.ne.jp/38_gosiki/e/8d541b2960dc7b2dc4059c46bea95cb8より)


法隆寺・金堂と五重塔.jpg


格天井、

は、

格縁天井、

ともいわれ、

格子状に木材を組む伝統的な天井、

のことで、

構造材に直接格子を組んだ組入天井と違い、格天井は構造材から格子をぶら下げて板を張る吊り天井であるため、相対的に天井が低くなりやすいです。また見た目の上でも、一本一本の材が太く、格間(ごうま 格子同士の隙間の面)が広い豪快な印象のものが多いのも特徴、

とあり、構造や仕上げによって細かいバリエーションがあり、湾曲した格子材(支輪)によって格天井の中央を持ち上げる(天井の一部を一段高くすることを「折上」と呼ぶ)、

折上格(おりあげごう)天井、

や、

その中心をさらに持ち上げる、

二重折上格 (にじゅうおりあげごう)天井、

があり、二条城二の丸御殿内「大広間」など、非常に格式の高い空間に用いられる技法であり、また、格子の間にさらに細かい格子材を入れる、

小組格天井(こぐみごうてんじょう)、

も、施工に手間がかかる分くらいの高い人の居室などに用いられた(仝上)とある。

組入天井、

は、

古代の寺院に多く用いられ、

見れば檜網代(ひあじろ)を以て天井(くみれ)にしたり(今昔物語)、

と、

組み天井、
組み入れ、
くみれ、

とも言った(デジタル大辞泉)。因みに、「檜網代」は、

檜で編んだあじろ(むしろに近い)、それを組み合わせて天井にした、

とある(佐藤謙三校注『今昔物語集』)。

二重折上天井.jpg

(二重折上天井 https://www.touken-world.jp/tips/26166/より)

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:46| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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