2023年05月08日

有識


本(もと)より有識(いうしき)なる者にて、賤しき事をばせずして(今昔物語)、

の、

有識、

は、

教養ある者、

とある(佐藤謙三校注『今昔物語集』)。この、

有識(ゆうしき)、

は、漢語であり、

凡學事毋為有識者所笑、而為見仇者所快(漢書・朱浮傳)

ものしり、
見識ある人、

の意で(字源)、

有識之士、心獨怪之(後漢書・何皇后紀)、

と、

有識之士、

という言い方もある(仝上)。和語でも、

有識(ゆうしき)

は、

いと有識の者の限りなむなりかし、さてはうたはいかがありけむ(宇津保物語)、

と、

広く物事を知っていること、
学問・識見のあること、

の意で使うが、さらに、その知識の中身を、

とりどりに有識にめでたくおはしまさふもただことごとならず(大鏡)、

と、

諸芸諸道にすぐれていること、
芸能が上手であること、また、その人、

の意で用い、また、

たぐひなき天の下のゆうそくにはものし給めれど(夜の寝覚)、

と、

才知・人柄・家柄・容貌などのすぐれた人、

の意で使ったりするが、さらにそれを、

ある有職の人、白き物を着たる日は火ばしを用ゐる、苦しからずと申されけり(徒然草)、

と、

朝廷や公家の制度・故実などに精通していること、また、その人、

の意に特定して使い、この場合、

ゆうしき、
ゆうしょく、

とも訓ませ、

有識、

に、

有職、

とも当てるようになる(日本国語大辞典)。

有職故実、
有識故実、

の、

有識、
有職、

である。また、

有識、

を、

うしき、

と訓ませると、仏語で、

対象を分析、認識する心のはたらきのあるもの、
心識あるもの、

の意(精選版日本国語大辞典)で、

有情(うじょう)、

である。

心識、

とは、仏語で、

心のこと、

であり、

心王の種々のはたらきを蔵するところから、心といい、その識別のはたらきから識というが、小乗ではこれらを同じものとみる、

とあり、また、

六識(ろくしき)、
八識(はっしき)、

などの総称(「八識」で触れた)でもある。

有情(うじょう)、

とは、仏語で、

Sattva(生存するものの意)、

つまり、山川草木などの、

非情・無情、

の対で、

感情など心の働きを持っているいっさいのもの、

つまり、

人間、鳥獣などの生き物、

をいう。この「有識」の意味の派生で、

うしき、

は、

醍醐の惡禅師は、後、有識に任じて、駿河阿闍梨といひけるが(平治物語)、

と、

僧の職名、

として使い、

僧綱(そうごう 僧尼を管理するためにおかれた僧官の職で、僧正・僧都・律師からなる)、

に次ぐ、

已講(いこう 「三会已講師(さんえいこうし)」の略 宮中の御斎会、薬師寺の最勝会、興福寺の維摩会の三会の講師を勤めた)、
内供(ないぐ 「内供奉(ないぐぶ)」の略 宮中の内道場に奉仕し、御斎会(ごさいえ)のときに読師(どくし)、または天皇の夜居(よい)を勤めた)、
阿闍梨(あじゃり ācārya の音訳。弟子を教授し、その軌範となる師の意)、

の総称として用いる(岩波古語辞典・大言海)。

「職」 漢字.gif

(「職」 https://kakijun.jp/page/1822200.htmlより)

「職」 金文・戦国時代.png

(「職」 金文・戦国時代 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E8%81%B7より)

「職」(漢音ショク、呉音シキ)は、

会意兼形声。戠の原字ば「弋(くい)+辛(切れ目をつける刃物)」からなり、くいや切れ目で目じるしをつけること。のち、「音(口に出さずだまっているさま)+弋(めじるし)」の会意文字となり、口で言う代わりにしるしをつけて、よく区別すること、識別の識の原字。職はそれを音符とし、耳をくわえた字で、耳できいてよく識別することを示す。転じて、よく識別でき、わきまえている仕事の意となる、

とある(漢字源)が、別に、

形声。「耳」+音符「戠 /*TƏK/」。「しる」「わかる」を意味する漢語{識 /*stək/}を表す字。のち仮借して「しごと」「公務」を意味する漢語{職 /*tək/}を表す字、

ともhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E8%81%B7

形声。耳と、音符戠(シヨク)とから成る。耳に聞いて知り覚える意を表す。転じて「つかさ」の意に用いる、

とも(角川新字源)、

形声文字です(耳+戠)。「耳」の象形と「枝のある木に支柱を添えた象形とはた織りの器具の象形」(はたをおるの意味だが、ここでは、「識(ショク)」に通じ(同じ読みを持つ「識」と同じ意味を持つようになって)、「他と区別して知る」の意味)から、よく聞きわきまえる事を意味し、それが転じて(派生して・新しい意味が分かれ出て)、「細部までわきまえ努める仕事」を意味する「職」という漢字が成り立ちました、

ともhttps://okjiten.jp/kanji788.htmlあり、いずれも会意文字(既存の複数の漢字を組み合わせて作られた文字)ではなく、形声文字(意味を表す部分と音を表す部分を組み合わせて作られた文字)説を採る。

「識」  漢字.gif

(「識」 https://kakijun.jp/page/1913200.htmlより)

「識」(漢音ショク、呉音シキ、漢音・呉音シ)は、「八識」で触れた。

「有」(漢音ユウ、呉音ウ)は、「有待(うだい)」、「中陰」で触れた。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:50| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください