今は昔、内舎人(うどねり)より大蔵の丞(じょう)になりて、後には冠(かうぶり)給はりて大蔵の大夫とて(今昔物語)、
の、
内舎人、
は、
律令制で、中務(なかつかさ)省に属する文官、
で、
帯刀し、宮中の宿直、天皇身辺の警護・雑事、行幸時に供奉(ぐぶ)して前後左右を警護する職、
にあたる(広辞苑・大辞林)、
天皇近侍の官、
であり、
四位以下五位以上の者の子弟が選ばれたが、平安時代には低い家柄の者も任ぜられた、
とある(仝上)。
近習(きんじゅ)舎人(日本書紀)、
が内舎人の前身とされ(日本大百科全書)、
大宝元年(701)六月設置され、定員90人、
「養老軍防令」では、
五位以上者の子孫(21歳以上)の聡敏(そうびん)者から採用、中務(なかつかさ)省に属し、帯刀して禁中宿衛、行幸警衛を任とした、
が、
武官でなく文官、
で、大臣らの子を任ずることが多い(たとえば大伴家持)。延喜(えんぎ)(901~923)以後、良家の子の任用が絶え、諸家の侍を任じて卑官化し、武士が任ぜられることが多くなると、その本姓と「内舎人」を略した呼称が使われ、
源氏は源内、平氏は平内、藤原氏は藤内、橘氏は吉内、紀氏は喜内、清原氏は清内、伴氏は伴内、
といった(仝上・https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%85%E8%88%8E%E4%BA%BA・岩波古語辞典)。
「内舎人(うどねり)」の、
内は禁内(きんだい)をさし、大舎人(おおとねり)に対する称、
とある(日本大百科全書)。「大舎人」は、
おおどねり、
ともいい、
律令制での下級官人、
をいい、
交替で宮中に宿直し、行幸の供や雑用、
をした。
中務省の左右大舎人寮(おおとねりりょう)に属し、四位、五位の子や孫をあてた。定員は各800人。弘仁十年(819)、左右あわせて400人となった、
とある(精選版日本国語大辞典)。
内舎人、
は、
分番官(順番に勤務する)の大舎人に対して長上官(毎日出勤する)、
である(仝上)。
うちとねりの略(日本大百科全書)、
とも、
うちとねりの転(広辞苑・大辞林)、
ともある。
天皇または皇族に近侍し、雑役に当たる官人を、
舎人(とねり)、
というが、
とねり、
は、
律令制で天皇、皇族などに近侍して警固、雑事にあたった下級官人、
の総称で、内舎人、大舎人、の他、
中宮舎人(400人)、
東宮舎人(600人)、
衛府の兵士(衛門府衛士は400人、左右衛士府の衛士は各600人)、
などの総称である(精選版日本国語大辞典・ブリタニカ国際大百科事典・日本大百科全書)。
とねり、
は、
トノ(殿)イリ(入)の約(岩波古語辞典・大言海)、
刀禰(とね)入りの意(大言海・和訓栞)、
殿侍(とのはべ)りの義(古事記伝・雅言考・日本語原学=林甕臣)、
トネリ(殿寝)の義(言元梯)、
トノモリ(殿守)の約轉(祝詞考)、
など諸説あってはっきりしないが、いずれも、
近侍、
の含意である。なお、
とねり、
の当てた、
舎人(しゃじん)、
は、漢語である。
宮中に宿直して取締を為す官、秦代より始まる、
とあり(字源)、『漢書』高帝紀の師古の注に、
舎人は左右近侍の官と記す、
に由来して、我が国で使われたとある(日本大百科全書)。
舎人職は、
一種のキャリアコースであったらしく、
有力者の子弟・子孫や白丁(無位無官者)はまず舎人を務める段階を踏み、その後官人や郡司となりえたが、中でも蔭子孫(おんしそん 五位以上の貴族官人の子・孫)は内舎人、大舎人、二宮(東宮・中宮)舎人のいずれかを務めたあと主典を経ず判官に進み、とくに内舎人は長上(常勤)待遇で考限(撰任に必要な年限)が短く昇進に有利で、藤原武智麻呂など上級貴族の子弟がこのコースをとった、
とある(世界大百科事典)。、
天皇に近侍し、宿直や遣使をつとめる間に天皇に忠節をつくす習慣を養わせ、このように養成された大舎人を他の官司の官人に任じ、天皇による支配を官司に浸透させるしくみであった、
と解されている(仝上)。
内舎人から選抜された者が摂政、関白の随身を務めたこともあり、これを内舎人随身と呼ぶ。21歳以上の四位以下五位以上の子弟から選抜された。また、三位以上の子弟でも希望があれば無条件で任官された。長上の扱いを受けたために他の舎人系の官職よりも昇進に有利であった、
ともある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%85%E8%88%8E%E4%BA%BA)。
(「舍」 金文・西周 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E8%88%8Dより)
「舎(舎)」(シャ)は、
会意兼形声。余の原字は、土を伸ばすスコップのさま。舎は「口(ある場所)+音符余」で、手足を伸ばす場所。つまり、休み所や宿舎のこと、
とある(漢字源)。別に、
形声。音符「余 /*LA/」+羨符「口」(他の字と区別するための記号)、
とも(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E8%88%8D)、
象形。口(垣根の形)と、(建物の形)と、亼(しゆう)(集の古字)とから成り、「やどる」、ひいて「おく」意を表す、
とも(角川新字源)、
会意兼形声文字です(余+口)。「先の鋭い除草具」の象形(「自由に伸びる」の意味)と「ある場所を示す文字」から、心身をのびやかにして、「泊まる(やどる)」、「建物」、「ゆるす」を意味する「舎」という漢字が成り立ちました、
ともあり(https://okjiten.jp/kanji841.html)、微妙に解釈が異なる。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95