一乗の峯には住み給へども、六根五内の□位を習ひ給はざれば、舌の所に耳を用ゐる間、身の病となり給ふなりけり(今昔物語)、
とある、
六根五内、
の、
六根、
は、
目、耳、鼻、舌、身、意、
五内、
は、
肝、心、脾、肺、腎、
とある(佐藤謙三校注『今昔物語集』)。
以是功徳、荘厳六根、皆令清浄(法華経)、
六根清徹、無諸悩患(無量寿経)、
とある、
六根(ろくこん・ろっこん)、
は、
根は、能性の義、六境に対して、迷ひの六意識を生ずれば六根といふ、
とある(大言海)。
「根機」で触れたように、「根」は、、
根気、
性根、
と使うように、仏教用語の、
能力や知覚をもった器官、
を指し(日本大百科全書)、
サンスクリット語のインドリヤindriyaの漢訳で、原語は能力、機能、器官などの意。植物の根が、成長発展せしめる能力をもっていて枝、幹などを生じるところから根の字が当てられた、
とあり(仝上)、外界の対象をとらえて、心の中に認識作用をおこさせる感覚器官としての、
目、耳、鼻、舌、身、
また、煩悩(ぼんのう)を伏し、悟りに向かわせるすぐれたはたらきを有する能力、
の、
信(しん)根、勤(ごん)根(精進(しょうじん)根)、念(ねん)根(記憶)、定(じょう)根(精神統一)、慧(え)根(知恵)、
をも、
五根(ごこん)、
という(広辞苑・仝上)が、
目、耳、鼻、舌、身、
に、
意根(心)を加えると、
六根、
となる(精選版日本国語大辞典)。仏語で、
六識(ろくとき)、
つまり、
六根をよりどころとする六種の認識の作用、
すなわち、
眼識・耳識・鼻識・舌識・身識・意識、
の総称、
つまり、
六界、
による認識のはたらきの六つの対象となる、
六境(ろっきょう)、
つまり、
色境(色や形)、
声境(しょうきょう=言語や音声)、
香境(香り)、
味境(味)、
触境(そっきょう=堅さ・しめりけ・あたたかさなど)、
法境(意識の対象となる一切のものを含む。または上の五境を除いた残りの思想など)、
で、別に、
六塵(ろくじん)、
ともいう対象に対して認識作用のはたらきをおこす場合、その拠り所となる、
六つの認識器官、
である。だから、
眼根・耳根・鼻根・舌根・身根・意根、
といい、
六情、
ともいう(仝上)。
五内(ごだい・ごない)、
は(「だい」は「内」の漢音)、
一念不離、五内爛裂(「三教指帰(797頃)」)、
と、漢方で、
体内にある五つの内臓、
つまり、
五臓(ごぞう 心臓・肝臓・肺臓・腎臓・脾臓)、
の意となる。
をいう。
「根」(コン)は、「根機」で触れたように、
会意兼形声。艮(コン)は「目+匕(ナイフ)」の会意文字で、頭蓋骨の目の穴をナイフでえぐったことを示す。目の穴のように、一定のところにとまって取れない意を含む。眼(目の玉の入る穴)の原字。根は「木+音符艮」で、とまって抜けない木の根、
とある(漢字源)が、
木のねもと、ひいて、物事のもとの意を表す、
ともある(角川新字源)。
(「内」 甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%86%85より)
「内」(漢音ダイ、呉音ナイ)は、
会意文字。屋根の形と入とを合わせたもので、おおいのうちにいれることを示す、
とある(漢字源)。
形声。「宀(家)」+音符「入 /*NUP/」。{内 /*nuups/}を表す字。もと「入」が{内}を表す字であったが、「宀」を加えた、
とも(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%86%85)、
会意。入と、冂(けい いえ)とから成り、家に入れる、ひいて、「うち」の意を表す、
とも(角川新字源)、
会意兼形声文字です(冂+入)。「家屋」の象形と「入り口」の象形から家に「はいる」を意味する「内」という漢字が成り立ちました。また、入った中、「うち」の意味も表すようになりました、
ともある(https://okjiten.jp/kanji236.html)。ほぼ同解釈である。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95