2023年07月04日

矢目


己いひつるやうに、今日より我が許に來らば、此の御社の御矢目負ひなむものぞ(今昔物語)、

の、

矢目負ひなむもの、

は、

神の罰として矢を受けるだろう、

の意で、

矢目、

は、

矢のささった所、

の意(佐藤謙三校注『今昔物語集』)とある。

鎧(よろひ)に立ったるやめを数へたりければ(平家物語)、

と、

矢の当たった所、

の意から、

矢を受けた跡、

の意、さらに、

矢疵(きず)、

の意でも使い(広辞苑)。その派生から、

水際を五寸ばかり下て、やめ近にひゃうど射るならば、のみを以て割る様にこそあらんずらめ(義経記)、

と、

矢を射る時の目標、

の意ともなる(広辞苑)。

」で触れたように、

め(目・眼)の語源は、

見(ミ)と通ず。或いは云ふ、見(ミエ)の約、

とあり(大言海)、

器官としての「目」は、「見る」という動作から来ていると思える。ただ、「憂き目」「酷い目」「嬉しい目」という用例の、

め(眼・目)、

が、

見えの約。先ず目に見て心に受くれば云ふ、

のに対し、その意味の外延を拡げた、「賽の目」「木の目」「網の目」「鋸の目」という用例の、

め(目)、

は、

「間(ま)の転」

と、両者の出自を区別している(仝上)。

矢目、

の、

め、

は、明らかに後者に当たる。

一二あるのみにはあらず五六三四さへありけり双六の采(万葉集)、

の、

め、

も、

小さい点、

の意で、後者の意味の派生に連なると見える。

「矢」 漢字.gif



「矢」(シ)は、「征矢」で触れたように、

象形。やじりのついたやの形にかたどり、武器の「や」の意を表す、

とある(角川新字源)。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:矢目
posted by Toshi at 03:34| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください