2023年07月05日

さうぞきたる


参る人、返る人、様々行きちがひけるに、えもいはずさうぞくきたる女あひたり(今昔物語)、

さうぞきたる、

は、

装束きたる、

と当て、

名詞装束(さうぞく)」の語末を活用させて動詞化した(彩色(サイシキ)、さいしく。乞食(こつじき)、こつじく)、

さうぞ(装束)く、

の(学研全訳古語辞典・大言海)、

自動詞カ行四段活用(か/き/く/く/け/け)、

で、

裳(も)・唐衣(からぎぬ)など、ことごとしくさうぞきたるもあり(枕草子)、

と、

身に着ける、

意だが、

装う、
着飾る、

という含意である(学研全訳古語辞典)。その派生で、

唐(から)めいたる舟、作らせ給(たま)ひける、急ぎさうぞかせ給ひて(源氏物語)

支度する、
装備する、
整える、

意でも使う(仝上)。

装束、

は、

しゃうぞく、

とも訓ませるが、

装、

の漢音が、

しゃう、

呉音が、

さう、

で、

しゃうぞく(しょうぞく)→さうぞく(そうぞく)、

と転音した(強悍(おぞ)し、おずし)ものとある(大言海)。

装束(しゃうぞく・さうぞく)、

は、

装(よそほ)ひ束(つか)ぬるにて、身支度なり、

とあり(仝上)、漢語であり、

至夜勤所部云、陳悦欲向秦州、命皆装束(北史・李弼傳)、

と、

旅支度、

の意で(字源)、

時已日暮、出告従者、速装束、吾當夜去(捜神記)、

と、

扮装(いでた)つこと、

とある(大言海)。和語でも、

参りて奏せむ。車にさうぞくせよ(大鏡)、

と、

支度、
用意、

の意でも使うが、転じて、

夜は、きららかに、はなやかなるさうぞく、いとよし(枕草子)、

と、

衣服、
服装、

の意となり、さらに、

はたと、しゃうぞくしたりけるが、田に陥りて、小袖・直垂ぬらし(雑談集)、
参りて奏せむ。車にさうぞくせよ(大鏡)、

と、

盛装、

の意となり、特に、

御即位、人人装束寸法、大なる様被御覧及、可為国家之費、……人人装束、忽縮寸法了(吉口傳)、

と、

束帯、衣冠、直衣等の服装の総称、

として使う(仝上・岩波古語辞典)。

装束く、

と似た言葉に、

装束す、

と、

名詞「装束」に「す」が付いた自動詞(サ行変格活用)、

あり、また、

装束(さうぞきた)立つ、

と、

まことに寅(トラ)の時かとさうぞきたちてあるに(枕草子)、

の、自動詞の、

着飾る、

意や、

大きにはあらぬ殿上童(てんじやうわらは)のさうぞきたてられて歩(あり)くも、うつくし(枕草子)、

の、他動詞の、

着飾らせる、

意で使う(学研全訳古語辞典)。

「装」 漢字.gif

(「裝(装)」 https://kakijun.jp/page/12196200.htmlより)

「装」(漢音ソウ、呉音ショウ)は、

会意兼形声。爿(ショウ)は、すらりと長い寝台を縦に画いた象形文字。壯はそれに士(おとこ)を加え、すらりと背の高い男を示す。裝は「衣+音符壯」で、すらりと細く身ごしらえをととのえること、

とある(漢字源)。別に、

形声。衣と、音符壯(サウ)とから成る。衣でつつんでしまう、ひいて、用意する意を表す。また借りて、かざる意に用いる、

とも(角川新字源)、

形声文字です(壮(壯)+衣)。「寝台を立てて横から見た象形(「寝台」の意味だが、ここでは「ながい」の意味)とまさかり(斧)の象形(「男子」の意味)」(背の高い男の意味だが、ここでは「倉(ソウ)」に通じ(同じ読みを持つ「倉」と同じ意味を持つようになって)、「しまう・かくす」の意味)と「衣服のえりもと」の象形から、「衣服で身をつつむ」、「よそおう」を意味する「装」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji1023.html

「束」 漢字.gif



「束」 甲骨文字・殷.png

(「束」 甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E6%9D%9Fより)

「束」(漢音ショク、呉音ソク)は、

会意文字。「木+O印(たばねるひも)」で、たき木を集めて、その真ん中ひもをまるく回して束ねることをしめす、ちぢめてしめること、

とある(漢字源)。別に、

象形。物をふくろの中に入れ、両はしをしばった形にかたどり、「たば」「たばねる」意を表す、

とも(角川新字源)、

象形。両端を縛った袋の形を象る。もと「東」と同字で、「しばる」「たばねる」を意味する漢語{束 /*stok/}を表す字、

ともhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E6%9D%9F

象形文字です。「たきぎを束ねた」象形から「たばねる・しばる」を意味する「束」という漢字が成り立ちました、

ともhttps://okjiten.jp/kanji601.htmlあり、象形文字説が大勢である。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:21| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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