2023年07月15日

瀉瓶(しゃびょう)


一筋を徹さむために、みな、この様に違ひたるをば習ひ直して、残ることなく瀉瓶(しやびやう)し終はりにき(梁塵秘抄口伝集)

の、

瀉瓶(しゃびょう)、

は(「びょう」は「瓶」の呉音)、

写瓶、

とも当て(広辞苑)、

仏教語で、瓶の水を他の瓶に一滴残らずそそぎ移すように、師から弟子に仏法の奥義をことごとく伝授すること、

とある(馬場光子全訳注『梁塵秘抄口伝集』)。また、

その弟子、

の意もある(精選版日本国語大辞典)。

真言宗では、

瀉瓶相承、

とも使い、転じて、

後鳥羽院は、彼の卿(藤原定輔)に御琵琶習はせ給ひて、既に瀉瓶せさせ給ふべきになりにけるとき(古今著聞集)、

と、

秘曲啄木の伝授を以て琵琶の奥義を究めるとする意識に「瀉瓶」の語が用いられている、

という(馬場光子全訳注『梁塵秘抄口伝集』)ように、

学問や芸道、

においても用いられた(精選版日本国語大辞典)。

瀉(写)瓶相承(しゃびょうそうじょう)、

は、

五つには我に事(つか)ふるより来(このか)た、我が所説の十二部経を持し、一たび耳を経れば会て再問せず、瓶水を瀉(うつ)して之を一瓶に置くが如し(涅槃経巻四十)、

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B3%95%E6%B0%B4%E5%86%99%E7%93%B6

師から弟子へと教法が次々に受け継がれていく際、その教法の授受が、あたかも一器の水を他の一器に移すように、一滴たりとも遺漏なくすべてが伝えられ、受け継がれていくこと。師資相承は一宗の奥義を伝え、授受伝承されるものであるから、師の教えが正しく、間違いなく伝えられねばならない。その授受がすべて完全にそのまま移されることを示す言葉である、

とありhttp://jodoshuzensho.jp/daijiten/index.php/%E7%80%89%E7%93%B6%E7%9B%B8%E6%89%BF

法は譬えば水の能(よ)く垢穢(くえ)を洗うに……其の法水も亦復是(またまたかく)の如し、能く衆生の諸(もろもろ)の煩悩の垢を洗う(無量義経説法品第二)、

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B3%95%E6%B0%B4%E5%86%99%E7%93%B6

法水瀉瓶(ほっすいしゃびょう)、

という言い方もする。また、

親から子に血が受け継がれるように、受け継いだ仏教の諸々すべてをそっくりそのまま次代に継承させる、

という、

血脈相承(けちみゃくそうじょう)、

あるいは、

ロウソクからロウソクへと、法の灯火(火)を移していく、

という、

伝灯相承(でんとうそうしょう)、

という言葉もあるhttps://tenshinryu.net/?p=1711

「瀉」 漢字.gif


「瀉」(漢音シャ、呉音サ)は、

会意兼形声、寫の舄(シャク・セキ)は鵲(セキ)と同じく、大きな口をあけて声をはきだすカササギを描いた象形文字。寫は、それを音符とする形声文字で、こちらの物をそちらへうつすこと。その原義には関係ない。瀉は「水+音符寫で、液体を外へまたは低い方へ移すこと、

とある(漢字源)。注ぐ意で、「傾瀉(ケイシャ)」、吐く意で、「吐瀉(トシャ)」、流れ出る意で、「瀉出(シャシュツ)」、流れがきわめて速い意で、「一瀉千里(イッシャセンリ)」等々。

「寫」 漢字.gif

(「寫」 https://kakijun.jp/page/9B8D200.htmlより)


「冩」 漢字.gif

(「冩」 https://kakijun.jp/page/996F200.htmlより)


「写」 漢字.gif

(「写」 https://kakijun.jp/page/0516200.htmlより)

「寫(冩・写)」(シャ)は、

形声。寫の舄(シャク・セキ)はカササギの姿を描いたもの。ここでは単なる音符で、もとの意味には関係ない。寫は場所を移す意味を含む、

とある(漢字源)。別に、

形声。宀と、音符舄(セキ→シヤ)とから成る。外から家の中に物を移しおろす、転じて、物をうつしとる意を表す、

とも(角川新字源)、

形声文字です(宀+舄)。「おおい」の象形と「かささぎ(スズメ目カラス科の鳥)」の象形(「かささぎ」の意味だがここでは、「席(せき)」に通じ(同じ読みを持つ「席」と同じ意味を持つようになって)、「しく(敷)」の意味)から、実物を下に置き、その上に紙をかぶせて「かきうつす」を意味する「写」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji494.html

「甁」 漢字.gif


「瓶」 漢字.gif


「甁(瓶)」(唐音ビン、漢音ヘイ、呉音ビョウ)は、

会意兼形声。并は「人二人+=印二つ」の会意文字で、二つあわせ並べることを示す。瓶は「瓦(土器)+音符并(ヘイ)」。もと、二つ並べて上下させる井戸つるべ。のち水をくむ器や、液体を入れる小口の容器を指すようになった、

とあり(漢字源)、

会意兼形声文字です(并(幷)+瓦)。「人を並べつないだ」象形(「あわせる」の意味)と「粘土をこねて焼いた土器」の象形(「土器」の意味)から、同じ鋳型(いがた)で作った半分を合わせて作る「かめ」を意味する「瓶」という漢字が成り立ちました

ともあるが、

形声。「瓦」+音符「并 /*PENG/」。「かめ」「つるべ」を意味する漢語{瓶 /*beeng/}を表す字。かつて「会意形声文字」と解釈する説があったが、誤った分析である、

と否定しhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%93%B6、また、

形声。瓦と、音符幷(ヘイ)とから成る。小形のほとぎ、「かめ」の意を表す(角川新字源)ともある。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:15| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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