2023年08月01日

鐵圍山


勝れて高き山、須彌山耆闍崛山(せん)鐵圍山(てちゐせん)、五臺山、悉達(すだち)太子の六年行ふ檀特山(だんとくさん)、土山(どせん)黒山(こくせん)鷲峯山(ぶせん)(梁塵秘抄)、

とある、

悉達(すだち)太子、

の、

悉達(すだち)、

は、普通、

Siddhãrtha、

の音訳で、

しったたいし、

と訓ませ、

悉達多(しったるた)、

ともいい、

釈迦の出家前の名、

である。

耆闍崛山(ぎじゃくっせん)、

は、マガダ国の首都ラージャグリハ(王舎城)近くにある山、

Gṛdhrakūṭa(グリドラクータ)、

の音訳、

霊鷲山(りょうじゅせん)、
鷲峰山(じゅほうせん)、

と訳され、

釈迦が『観無量寿経』や『法華経』を説いたとされる山として知られる、

とあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9C%8A%E9%B7%B2%E5%B1%B1。また、

五台山(ごだいさん)、

は、別名は、

清涼山、

中国にある古くからの霊山であり、

峨眉山(がびさん)、天台山、五台山、

あるいは、

五台山、峨眉山、普陀山(ふださん)、

を三大霊場といい、

五台山、峨眉山、普陀山、九華山(きゅうかざん)、

を四大霊場とし、

五台山は文殊菩薩、
峨眉山は普賢菩薩、
九華山はお地蔵様、
普陀山は観音様、

の住む聖地とされているhttp://tobifudo.jp/newmon/seichi/5daisan.htmlとある。また、

土山(どせん)、
黒山(こくせん)、

は、法華経に載っている山https://mukei-r.net/poem-ryouzin/ryouzin-hisyou-6.htmとある。

鐵圍山(てちゐせん)

は、

てついせん、

が転訛(連声)して、

てっちせん、
てちいせん、

とも訓ませ、

須彌山(しゅみせん)を中心とする四洲を囲む九山八海(くせんはっかい)の一番外側の、鉄でできた山、

をいう(広辞苑・精選版日本国語大辞典)が、一説に、

この外にさらに大鉄囲山があり、先の山との間に八大地獄があるといい、また三千世界おのおのを囲む山である、

ともいう(仝上)。

須弥山の概念図.jpg



須弥山から右半分.gif

(須弥山の右側断面図 http://tobifudo.jp/newmon/betusekai/uchu2.htmlより)

仏教の世界観で考える小宇宙の、

九山八海(くせんはっかい)

とは、

須彌山(しゅみせん)を中心とし、鉄囲山(てっちせん)を外囲とする、山、海の総称、

で、

中央の須彌山と外囲の鉄囲山と、その間にある持双山、持軸山、担木山、善見山、馬耳山、象鼻山、持辺山の七金山を数えて九山とし、九山の間にそれぞれ大海があるとする。海は七海が内海で、八功徳水をたたえ、第八海が外海で鹵水海(ろすいかい)、この中の四方に四大陸が浮かび、われわれはその南の大陸(南閻浮提)に住む、

という(仝上)。四大陸は、

須弥山に向かって東には半月形の毘提訶洲(びだいかしゅう、あるいは勝身洲)、南に三角形の贍部洲(南洲あるいは閻浮提)、西に満月形の牛貨洲(ごけしゅう)、北に方座形の倶盧洲(くるしゅう)、

がありhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A0%88%E5%BC%A5%E5%B1%B1、「贍部洲(せんぶしゅう)」は、インド亜大陸を示している、とされる(以上、「金輪際」で触れた)。

三千世界」で触れたように、

須弥山(しゅみせん)を中心に、その周りに四大州があり、さらにその周りに九山八海があるとされ、これを一つの、

小世界、

という。小世界は、下は風輪から、上は色(しき)界の初禅天(しょぜんてん 六欲天の上にある四禅天のひとつ)まで、左右の大きさは鉄囲山(てっちせん)の囲む範囲である。「小世界」の大きさは、

直径が太陽系程の大きさの円盤が3枚重なった上に、高さ約132万Kmの山が乗っています、

とあるhttp://tobifudo.jp/newmon/betusekai/uchu.html。この層は、

三輪(さんりん)、

と呼ばれ、

虚空(空中)に「風輪(ふうりん)」という丸い筒状の層が浮かんでいて、その上に「水輪(すいりん)」の筒、またその上に同じ太さの「金輪(こんりん)」という筒が乗っている。そして「金輪」の上は海で満たされており、その中心に7つの山脈を伴う須弥山がそびえ立ち、須弥山の東西南北には島(洲)が浮かんでいて、南の方角にある瞻部洲(せんぶしゅう)が我々の住む島、

http://www.tendai.or.jp/houwashuu/kiji.php?nid=90)、三つの円盤状の層からなっている。いちばん下には、

円盤状つまり輪形の周囲の長さが「無数」(というのは10の59乗に相当する単位)ヨージャナ(由旬(ゆじゅん 1ヨージャナは一説に約7キロメートル)で、厚さが160万ヨージャナの風輪が虚空(こくう)に浮かんでいる、

その上に、

同じ形の直径120万3450ヨージャナで、厚さ80万ヨージャナの水輪、

その上に、

同形の直径は水輪と同じであるが、厚さが32万ヨージャナの金でできている大地、

があり、その金輪の上に、

九山、八海、須弥四洲、

があるということになる(日本大百科全書)。そして、

「三千世界」は、

須弥山有八山、遶外有大鐵圍山、周廻圍繞、幷、一日月、晝夜回轉、照四天下、名一國土、積一千國土、名小千世界、積千箇小界、名中千世界、積一千中千世界、名大千世界、以三積千、故三千大千世界(『釋氏要覧(宋代)』)、

とあるように、一世界が1、000個集まったものを小千世界といい、小千世界が1、000個集まったものを中千世界といい、中千世界が1、000個集まったものを大千世界、

といい、それが、

三千世界、

つまり、

三千大千世界、

である(精選版日本国語大辞典)。

須弥山」は、

梵語Sumeruの音写(インド神話のメール山、スメール山、su-は「善」を意味する、美称の接頭辞)、

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A0%88%E5%BC%A5%E5%B1%B1

蘇迷盧(そめいろ)、
須弥留(しゅみる)、

とも表記、

ふつう、

しゅみせん、

と訓ませ、

妙高山、
妙光山、

と漢訳する(広辞苑)。

古代インドの世界観が仏教に取り入れられたもので、世界の中心にそびえるという高山、

とされ、この世界軸としての聖山は、

バラモン教、仏教、ジャイナ教、ヒンドゥー教にも共有されている、

とあるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A0%88%E5%BC%A5%E5%B1%B1

風輪・水輪・金輪と重なった上にあり、大海中にあり、高さは八万由旬(ユジユン 一由旬は四〇里、一説に約7キロメートル)。水に没している部分も八万由旬、縦・横もこれに等しく、金・銀・瑠璃(ルリ)・玻璃(ハリ)の四宝からなり、頂上は帝釈天(たいしゃくてん)が住む、

忉利天(とうりてん)、

で、頂上には善見城(ぜんけんじょう)や殊勝殿(しゅしょうでん)がある。

須弥山には甘露の雨が降っており、それによって須弥山に住む天たちは空腹を免れる、

とある(仝上)。

「鐵」  漢字.gif


「鐵(鉄)」(漢音テツ、呉音テチ)は、

会意文字。鐵は「金+切るしるし+呈(まっすぐ)」で、まっすぐに物を切り落とす鋭利な金属を表す。「鉄」は「金+音符失(シツ・テツ)」の形成文字、

とある(漢字源)。別に、

形声。「金」+音符「戜 /*LIK/」。「くろがね」を意味する漢語{鐵 /*hliik/}を表す字、

ともhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E9%90%B5

形声。金と、音符(テツ)とから成る。「くろがね」の意を表す。鉄は、もと、紩(ちつ)の別体字であるが、俗にの略字として用いられていた。教育用漢字はこれによる、

とも(角川新字源)、

会意兼形声文字です。「金属の象形とすっぽり覆うさまを表した文字と土地の神を祭る為に柱状に固めた土の象形」(土中に含まれる「金属」の意味)と「川のはんらんをせき止める為に建てられた良質の木の象形と握りの付いた柄の先端に刃のついた矛の象形(「災害を断ち切る器具」の意味)と口の象形と階段の象形(「突き出る」の意味)」(「大きな矛」の意味)から「てつ」を意味する「鐵」という漢字が成り立ちました、

ともhttps://okjiten.jp/kanji2817.htmlある。

「圍」 漢字.gif

(「圍」 https://kakijun.jp/page/9AA1200.htmlより)

「圍(囲)」(漢音イ、呉音エ)は、

会意兼形声。韋(イ)は、口印の周囲を、右足と左足が回っているさまを示す会意文字。圍は、「囗(かこむ)+音符韋(イ)」で、ぐるりと周囲をかこむこと。韋がからだにまきつけるなめし皮の意に転用されたため、圍がその原義をついだ、

とある(漢字源)。「囲」の使用は、日本では中世から見られるが、

「韋」の下部から「ヰ」という部分を抜き出して生じたものか、

ともあるhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%9B%B2。別に、

会意形声。囗と、韋(ヰ 周りをめぐる)とから成り、かこいの周りをめぐる意を表す。ひいて「かこむ」意に用いる、

とも(角川新字源)、

会意兼形声文字です(囗+韋)。「周辺を取り囲む線」の象形(「めぐらす」の意味)と「ステップの方向が違う足の象形と場所を示す文字」(「かこむ」の意味)から、「かこいめぐらす」を意味する「囲」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji630.html

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:52| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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