もくれんじ


聖(ひじり)の好む物、木の節(ふし)鹿角(わざづの)鹿の皮、蓑笠錫杖木欒子(もくれんじ)、火打笥(け)岩屋の苔の衣(梁塵秘抄)、

の、

木欒子(もくれんじ)、

は、

もくげんじ(欒樹・木槵子)、

の別称、

ムクロジ科の落葉高木、

で、

中国原産、寺院などに栽植。高さ10メートル以下、葉は羽状複葉。夏、黄色の小花を大きな花序につけ、長楕円形の蒴果(さくか)を結ぶ。球形の種子は数珠玉に用い、また、花を眼薬や黄色染料とする、

とある(岩波古語辞典・広辞苑)

センダンバノボダイジュ、
ムクレニシ、
ムクレンジノキ、
モクレンジュ、
モクレンジ(木欒樹)、
ムクロジュ(無患子・木穂子)、

ともいい、古名、

ムクレジ(牟久礼之)、
ムクレニ(牟久礼邇)、
ムクレニシ、

とあり(大言海・https://gkzplant.sakura.ne.jp/mokuhon/syousai/magyou/mo/mokurennju.html)、漢名、

欒華、
欒樹、
木欒子、

である(仝上・精選版日本国語大辞典)。色葉字類抄(平安末期)に、

欒、モクレンシ、木槵子、モク(ク)ェンシ、可用念珠木名、

とある。和名ムクロジは、モクゲンジの漢名、

木欒子、

を誤用し、その字音に由来していると言われる(仝上・大言海)が、

モクゲンジ(無患子・木穂子)、

が、

ムクロジの漢名、

無患子、

の誤用(日本語源大辞典・牧野新日本植物図鑑・精選版日本国語大辞典)ともある。いずれにせよ、

木欒子(もくれんじ)、

つまり、

欒樹・木槵子(もくげんじ)、

が、

むくろじ(無患子)、

を、誤称したことに間違いはない。

ムクロジ/むくろじ/無患子.jpg


ムクロジの実.jpg

(ムクロジの実 仝上)

ムクロジの黒い種子は、正月の羽根突きの玉や数珠になる (2).jpg

(ムクロジの黒い種子は、正月の羽根突きの玉や数珠になる 仝上)

ムクロジ、

は、

漢名無患子の音の転(名言通)、
ムクレニシ(木欒子)の誤りの誤用(大言海)、

という転訛とは別に、

ムクロジが家にあると病を知らないとして「無患子」(むくろし)と呼ばれるようになった、
実のなる様子を「ツブナリ」と表現し、これが転訛した、
種子が黒いため「実黒地(みくろじ)」が転訛した、

等々の説があるhttps://www.uekipedia.jp/%E8%90%BD%E8%91%89%E5%BA%83%E8%91%89%E6%A8%B9が、どうも漢語との関係から見ると、後付けの説のようである。。

「欒」 漢字.gif



「欒」 中国最古の字書『説文解字』.png

(「欒」 中国最古の字書『説文解字』(後漢・許慎)・漢 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E6%AC%92より)

「欒」(ラン)は、

会意兼形声。䜌は、むつれるを含む。欒はそれを音符とし、木を添えた字、

とある(漢字源)。

むくろじ科の落葉小高木。種子は球形でかたく、数珠につかわれる、

とあり、

もくげんじ、

とも(仝上)とある。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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