龍女が佛(ほとけ)に成ることは、文殊のこしらへとこそ聞け、さぞ申す、沙竭羅王(しゃがらわう)の宮を出でて、變成男子として終(つい)には成佛道(梁塵秘抄)、
文殊の海(かい)に入(い)りしには、沙竭羅王波をやめ、龍女が南に行(ゆ)きしかば、無垢や世界にも月澄めり(仝上)、
の、
沙竭羅王(しゃがらおう)、
は、
沙羯羅王、
とも当て、
沙伽羅龍王、
とも、
しゃかつら、
しゃかちら、
しゃがら、
ともいい(精選版日本国語大辞典)、
八大竜王の娑伽羅(しゃから)、
の別の呼び名、
とある(https://naming-dic.com/wa/word/62270957)。
「沙伽羅」は、
Śāgara、
の音訳。「沙伽羅」の他、
娑羯羅、
沙竭、
沙羯羅、
娑伽羅、
などと当てている(精選版日本国語大辞典)。
八大龍王の一つ、
で、
観音二十八部衆の一つ、
であり、
護法の龍神、
また、
降雨の龍神、
として、
請雨法のおりの本尊、
とされる(仝上)。
(沙竭羅龍王(浅草寺 頭部に龍を頂いている) https://4travel.jp/travelogue/10587532より)
八大龍王(はちだいりゅうおう)、
は、
八龍王、
八大龍神、
ともいい(大言海)、
有八龍王、難陀龍王、跋難陀、娑伽羅竜王、和修吉龍王、徳叉迦龍王、阿那婆達多龍王、摩那斯龍王、優鉢羅龍王等、各與若干百千眷属俱ト説ケリ(法華経・序品)、
と、
難陀(なんだ)・跋難陀(ばつなんだ)・娑伽羅(しゃがら)・和修吉(わしゅきつ)・徳叉迦(とくしゃか)・阿那婆達多(あなばだった)・摩那斯(まなし)・優鉢羅(うはつら)、
の八龍王をさす(仝上・精選版日本国語大辞典)。
娑伽羅龍王、
は、
海や雨をつかさどる、
とされることから、
時により過ぐれば民の歎きなり八大龍王雨やめ給へ(金槐集)、
と、
航海の守護神、
や
雨乞いの本尊、
とされる(仝上)。
(沙羯羅像(右)。畢婆迦羅像(左)(興福寺蔵) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AB%E5%A4%A7%E7%AB%9C%E7%8E%8Bより)
竜族の八王、
は、
霊鷲山にて十六羅漢を始め、諸天、諸菩薩と共に、水中の主である八大竜王も幾千万億の眷属の竜達とともに釈迦の教えに耳を傾けた。釈迦は「妙法蓮華経」の第二十五 観世音菩薩普門品に遺されているように「観音菩薩の御働き」を説いた。その結果、「覚り」を超える「阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい、原語Anuttara samyaksaMbodhi)、無上正等正覚(むじょうしょうとうしょうがく)」を得て、護法の神となるに至った、
とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AB%E5%A4%A7%E7%AB%9C%E7%8E%8B)。この八大龍王、
は、
天龍八部衆、
に所属するとされるが、
八部衆
竜神八部、
ともいう、
仏教を守護する異形の神々、
で、
天(天部)、竜(竜神・竜王)、夜叉(やしゃ 勇健暴悪で空中を飛行する)、乾闥婆(けんだつば 香(こう)を食い、音楽を奏す)、阿修羅(あしゅら)、迦楼羅(かるら 金翅鳥で竜を食う)、緊那羅(きんなら 角のある歌神)、摩睺羅迦(まごらか 蛇の神)、
の8神をいう(精選版日本国語大辞典)。「迦楼羅」については「迦楼羅炎」で触れた。
「竜宮」で触れたが、
爾時、文殊師利、坐千葉蓮花、大如車輪、俱來菩薩、亦坐寶蓮華、従於大海、婆竭羅龍宮、自然湧出、住虚空中(妙法蓮華経・提婆達多品)、
とあるように、
大海の底に娑竭羅(しやから)竜王の宮殿があって、縦広8万由旬(ゆうじゆん 1由旬は帝王1日の行軍里程)もあり、七重の宮牆(きゆうしよう)、欄楣(らんび)などはみな七宝をもって飾られている(長阿含経)、
とか、
海上に白銀、瑠璃、黄金の諸竜宮があって、毒蛇大竜がこれを守護しており、竜王がここに住み珍宝が多い(賢愚因縁経)、
などと説く(大言海・世界大百科事典)、
娑竭羅龍王(しゃからりゅうおう)の娘(第三王女)、
は、
善女(如)龍王、
と呼ばれ、
その年わずか八歳の竜少女、
とあり(妙法蓮華経・提婆達多品)、文殊師利菩薩はこの竜女は悟りを開いたと語るも、
智積菩薩はこれに対し、お釈迦様のように長く難行苦行をし功徳を積んだならともかく、僅か8つの女の子が仏の悟りを成就するとは信じられないと語った。また釈迦の弟子の舎利弗も、女が仏になれるわけがないと語った。
のに、
竜女はその場で法華経の力により即身成仏し、それまで否定されていた女子供でも動物でも成仏ができることを身をもって実証した、
とある(https://www.wdic.org/w/CUL/%E5%A8%91%E7%AB%AD%E7%BE%85%E9%BE%8D%E7%8E%8B%E3%80%82%E5%A5%B3)。
なお、
二十八部衆(にじゅうはちぶしゅう)、
は、
千手観音の眷属、
で、東西南北と上下に各四部、北東・東南・北西・西南に各一部ずつが配されており、合計で二十八部衆となる。
娑伽羅龍王(さがらりゅうおう)、
は、27番目に数えられている(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%8C%E5%8D%81%E5%85%AB%E9%83%A8%E8%A1%86)。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95