法華経持(たも)てばおのづから、戒香(かいかう)涼しく身に匂ひ、経には是名持戒、行頭陀者(づださ)と説いたれば、佛(ほとけ)の道には障(さわり)あらじ(梁塵秘抄)、
の、
是名持戒、
行頭陀者、
は、
法華経見宝塔品第十一の偈文、
であり、
此経難持
若暫持者
我即歓喜
諸仏亦然
如是之人
諸仏所歎
是則勇猛
是則精進
是名持戒
行頭陀者
則為疾得
無上仏道
云々とつづく(http://www.kujhoji.or.jp/youten/sub14_2_09.htm)。
是戒を持ち
頭陀を行ずる者と名く、
ということらしい(仝上)。
「乞食」、「斗藪(とそう)」で触れたように、「頭陀(ずだ・づだ)」は、
梵語ドゥータ(dhūta)、
の音写、
洗い流すこと、
除き去ること、
が原意(本大百科全書)、
頭陀者、漢言抖擻、謂抖擻煩悩離諸滞着(四分律行事鈔)、
と、
抖擻(とそう)、
と訳し(抖擻はふるい落とす意)、
払い除くの意、
で、
頭陀此應訛也、正言杜多、譯云洮汰、言大灑也、舊云抖擻、一義也(玄應音義)、
と、玄奘(げんじょう)は、
杜多、
と当てた(仝上・大言海)。「頭陀」は、
頭陀支(ずだし)、
頭陀行(ずだぎょう)、
とも呼ばれ、
衣食住に対する欲求などの煩悩を取り除く、
意味で(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jeb1947/1980/129/1980_129_L88/_pdf/-char/ja)、
世尊爾時以此因縁集比丘僧、為諸比丘随順説法、無数方便讃歎頭陀端嚴少欲知足楽出離者(四分律)、
と、仏陀も頭陀行をすることを賞賛していた、とある(仝上)。上記、「十二頭陀」(じゅうにずだ)とは、
仏道修行者が守るべき衣食住に関する一二の基本的規律、
で、
衲衣(納衣 のうえ 人が捨てたぼろを縫って作った袈裟)・但三衣・常乞食・不作余食(次第乞食)・一坐食・一揣食・住阿蘭若処(あらんにゃ)・塚間坐・樹下坐・露地坐・随坐(または中後不飲漿)・常坐不臥の十二項目(顕戒論)、
とされる(精選版日本国語大辞典)が、
十二または十三の実践項目、
とし、
糞掃衣(ふんぞうえ 捨てられた布片を綴りあわせて作られた衣を着用する)、
但三衣(たんざんえ 三衣一鉢(さんえいっぱつ)、大衣・上衣・中着衣の三衣のみを着用する)、
持毳衣(じぜいえ 毛織物で作った衣のみを保持する)、
常乞食(じょうこつじき 托鉢乞食のみによって食物を得る)、
次第(しだい)乞食(行乞時には貧富好悪を選別せず、順次に行乞する)、
一食法(一日一食のみ食する)、
節量食(食を少なく、過食をしない)、
時後不食(食事の後で再び食事・飲み物を摂ってはいけない)、
阿蘭若住(あらんにゃじゅう 人里離れたところを住所とする)、
樹下坐(じゅげざ 樹の下を住所とする)、
露地坐(ろじざ 常に屋外を住所とする)、
塚間住(ちょうけんじゅう 塚墓つまり墓所の中やその近くを住所とする)、
随得敷具(ずいとくしきぐ 与えられたいかなる臥坐具(がざぐ)・住所も厭わず享受する)、
常坐不臥(じょうざふが 常に坐して横臥しない)、
などを挙げている(http://jodoshuzensho.jp/daijiten/index.php/%E9%A0%AD%E9%99%80)。「頭陀支(ずだし)」は、
パーリ(上座部仏教)系では13支、
大乗系では12支、
を立てるとあり(日本大百科全書)、諸部派・大乗の文献で項目や配列に若干の相違があるようである(仝上)。
因みに、頭陀の修行者が常に携行する持ち物を、
頭陀十八物(ずだのじゅうはちもつ)、
といい、持ち物を入れるために首に掛ける袋を、
頭陀袋(ずだぶくろ)、
という(仝上)。これが転じて、死装束の一つとして、
首にかけて、死出の旅路の用具を入れる袋、
つまり、
僧侶の姿になぞらえて浄衣(経帷子きょうかたびら)を着せた遺体に、六文銭などを入れて首に掛ける。三衣袋(さんねぶくろ)と称して、血脈を入れることがある、
を頭陀袋と呼ぶ(仝上・広辞苑)。
(ラオス・ルアンパバーンでの僧侶の托鉢 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%89%98%E9%89%A2より)
頭陀行(ずだぎょう)、
は、
乞食行(こつじきぎょう)、
行乞(ぎょうこつ)、
ともいうが、
托鉢(たくはつ、サンスクリットpindapata)
である。
信者の家々を巡り、生活に必要な最低限の食糧などを乞う(門付け)街を歩きながら(連行)又は街の辻に立つ(辻立ち)により、信者に功徳を積ませる修行、
となる(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%89%98%E9%89%A2)。
「陀」(漢音タ、呉音ダ)は、
会意兼形声。「阜+音符它(タ 長くのびる)」、
とある(漢字源・角川新字源)。別に、
会意兼形声文字です(阝+它)。「段のついた土の山」の象形と「蛇(へび)」の象形(「蛇」の意味)から「蛇のように曲がりくねった険しい崖」を意味する「陀」という漢字が成り立ちました、
ともある(https://okjiten.jp/kanji2777.html)。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95