2023年08月15日

頭陀


法華経持(たも)てばおのづから、戒香(かいかう)涼しく身に匂ひ、経には是名持戒、行頭陀者(づださ)と説いたれば、佛(ほとけ)の道には障(さわり)あらじ(梁塵秘抄)、

の、

是名持戒、
行頭陀者、

は、

法華経見宝塔品第十一の偈文、

であり、

此経難持
若暫持者
我即歓喜
諸仏亦然
如是之人
諸仏所歎
是則勇猛
是則精進
是名持戒
行頭陀者
則為疾得
無上仏道

云々とつづくhttp://www.kujhoji.or.jp/youten/sub14_2_09.htm

是戒を持ち 
頭陀を行ずる者と名く、

ということらしい(仝上)。

乞食」、「斗藪(とそう)」で触れたように、「頭陀(ずだ・づだ)」は、

梵語ドゥータ(dhūta)、

の音写、

洗い流すこと、
除き去ること、

が原意(本大百科全書)、

頭陀者、漢言抖擻、謂抖擻煩悩離諸滞着(四分律行事鈔)、

と、

抖擻(とそう)、

と訳し(抖擻はふるい落とす意)、

払い除くの意、

で、

頭陀此應訛也、正言杜多、譯云洮汰、言大灑也、舊云抖擻、一義也(玄應音義)、

と、玄奘(げんじょう)は、

杜多、

と当てた(仝上・大言海)。「頭陀」は、

頭陀支(ずだし)、
頭陀行(ずだぎょう)、

とも呼ばれ、

衣食住に対する欲求などの煩悩を取り除く、

意味でhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jeb1947/1980/129/1980_129_L88/_pdf/-char/ja

世尊爾時以此因縁集比丘僧、為諸比丘随順説法、無数方便讃歎頭陀端嚴少欲知足楽出離者(四分律)、

と、仏陀も頭陀行をすることを賞賛していた、とある(仝上)。上記、「十二頭陀」(じゅうにずだ)とは、

仏道修行者が守るべき衣食住に関する一二の基本的規律、

で、

衲衣(納衣 のうえ 人が捨てたぼろを縫って作った袈裟)・但三衣・常乞食・不作余食(次第乞食)・一坐食・一揣食・住阿蘭若処(あらんにゃ)・塚間坐・樹下坐・露地坐・随坐(または中後不飲漿)・常坐不臥の十二項目(顕戒論)、

とされる(精選版日本国語大辞典)が、

十二または十三の実践項目、

とし、

糞掃衣(ふんぞうえ 捨てられた布片を綴りあわせて作られた衣を着用する)、
但三衣(たんざんえ 三衣一鉢(さんえいっぱつ)、大衣・上衣・中着衣の三衣のみを着用する)、
持毳衣(じぜいえ 毛織物で作った衣のみを保持する)、
常乞食(じょうこつじき 托鉢乞食のみによって食物を得る)、
次第(しだい)乞食(行乞時には貧富好悪を選別せず、順次に行乞する)、
一食法(一日一食のみ食する)、
節量食(食を少なく、過食をしない)、
時後不食(食事の後で再び食事・飲み物を摂ってはいけない)、
阿蘭若住(あらんにゃじゅう 人里離れたところを住所とする)、
樹下坐(じゅげざ 樹の下を住所とする)、
露地坐(ろじざ 常に屋外を住所とする)、
塚間住(ちょうけんじゅう 塚墓つまり墓所の中やその近くを住所とする)、
随得敷具(ずいとくしきぐ 与えられたいかなる臥坐具(がざぐ)・住所も厭わず享受する)、
常坐不臥(じょうざふが 常に坐して横臥しない)、

などを挙げているhttp://jodoshuzensho.jp/daijiten/index.php/%E9%A0%AD%E9%99%80。「頭陀支(ずだし)」は、

パーリ(上座部仏教)系では13支、
大乗系では12支、

を立てるとあり(日本大百科全書)、諸部派・大乗の文献で項目や配列に若干の相違があるようである(仝上)。

因みに、頭陀の修行者が常に携行する持ち物を、

頭陀十八物(ずだのじゅうはちもつ)、

といい、持ち物を入れるために首に掛ける袋を、

頭陀袋(ずだぶくろ)、

という(仝上)。これが転じて、死装束の一つとして、

首にかけて、死出の旅路の用具を入れる袋、

つまり、

僧侶の姿になぞらえて浄衣(経帷子きょうかたびら)を着せた遺体に、六文銭などを入れて首に掛ける。三衣袋(さんねぶくろ)と称して、血脈を入れることがある、

を頭陀袋と呼ぶ(仝上・広辞苑)。

ラオス・ルアンパバーンでの僧侶の托鉢.jpg

(ラオス・ルアンパバーンでの僧侶の托鉢 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%89%98%E9%89%A2より)

頭陀行(ずだぎょう)、

は、

乞食行(こつじきぎょう)、
行乞(ぎょうこつ)、

ともいうが、

托鉢(たくはつ、サンスクリットpindapata)

である。

信者の家々を巡り、生活に必要な最低限の食糧などを乞う(門付け)街を歩きながら(連行)又は街の辻に立つ(辻立ち)により、信者に功徳を積ませる修行、

となるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%89%98%E9%89%A2

「陀」 漢字.gif

(「陀」 https://kakijun.jp/page/da08200.htmlより)

「陀」(漢音タ、呉音ダ)は、

会意兼形声。「阜+音符它(タ 長くのびる)」、

とある(漢字源・角川新字源)。別に、

会意兼形声文字です(阝+它)。「段のついた土の山」の象形と「蛇(へび)」の象形(「蛇」の意味)から「蛇のように曲がりくねった険しい崖」を意味する「陀」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji2777.html

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:58| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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