法華経持(たも)てばおのづから、戒香(かいかう)涼しく身に匂ひ、経には是名持戒、行頭陀者(づださ)と説いたれば、佛(ほとけ)の道には障(さわり)あらじ(梁塵秘抄)、
の、
持戒、
は、
持律、
ともいい、
仏教の戒律を堅く守ること、
である(精選版日本国語大辞典)。
智慧によって欲望を制御して、悪を行わないように自覚的に実践すること、
である(ブリタニカ国際大百科事典)。「四衆」で触れたように、世俗人が実践すべき戒としては、
不殺生、
不邪淫、
不偸盗、
不妄語、
不飲酒、
の、
五戒、
があるが、出家者(比丘、比丘尼)は、『四分律』で、
男性の修行者は250戒、女性は348戒、
あるとされる(精選版日本国語大辞典)。ただ、「戒」は、
サンスクリット語のシーラśīla、
の訳語で、
自ら心に誓って順守する、
徳目であるとされる(日本大百科全書)が、「シーラ」は、
習慣性、
を意味し、
自分にとって良い習慣を身につける、
というのが持戒の意味(https://www.nichiren.or.jp/glossary/id57/)とある。これによって悟りの彼岸に至ることを、
持戒波羅蜜、
という(百科事典マイペディア)とある。
六波羅蜜、
のひとつである。「六波羅蜜」については、「禅定」で触れたが、
波羅蜜(はらみつ)、
は、
サンスクリット語のパーラミター pāramitāの音写、
で、「六波羅蜜(ろくはらみつ)」は、
大乗仏教の求道者が実践すべき六種の完全な徳目、
布施波羅蜜(施しという完全な徳)、
持戒波羅蜜(戒律を守るという完全な徳)、
忍辱波羅蜜(にんにくはらみつ 忍耐という完全な徳)、
精進波羅蜜(努力を行うという完全な徳)、
禅定波羅蜜(精神統一という完全な徳)、
般若波羅蜜(仏教の究極目的である悟りの智慧という完全な徳)、
を指し、般若波羅蜜は、他の波羅蜜のよりどころとなるもの、とされる(仝上)。
持戒の対語が、
破戒、
である。なお、
戒香(かいこう)、
は、
持戒の人の徳が四方に影響することを、香の遠く匂うのにたとえた語、
である(広辞苑・精選版日本国語大辞典)。
(「戒」 金文・西周 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E6%88%92より)
「戒」(漢音カイ、呉音ケ)は、
会意文字。「戈(ほこ)+両手」で、武器を手に持ち、用心して備えることを示す。張りつめて用心する意を含む、
とある(漢字源・角川新字源)。別に、
会意文字です(廾+戈)。「左右の手」の象形と「矛(ほこ)」の象形から、武器を両手にして「いましめる」を意味する「戒」という漢字が成り立ちました、
ともある(https://okjiten.jp/kanji1287.html)。
参考文献;
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95