2023年08月25日

補陀落


本體観世音、常在補陀落(ふだらく)の山(せん)、為度(ゐど)や衆生、生々示現大明神(梁塵秘抄)、

の、

補陀落、

は、

普陀落、

とも当てる、

梵語ポータラカPotalaka、

の音写、

光明山、
海島山、
小花樹山、

と訳す(広辞苑)とある、

インドの南海岸にある、八角形で、観音の住所といわれる山、

で、興福寺の、

南円堂、

の円形はこれを模しているhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A3%9C%E9%99%80%E8%90%BDとされる。

補陀落伽山、此云海嶋也(陀羅尼集経)、

と、

海島、

ともされ、また、玄奘は、

秣剌耶山東、有布呾落迦山、山径危険、巌谷敧傾(大唐西域記)、

と、

南インドのマラヤ(秣剌耶)山の東にある、

としているhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A3%9C%E9%99%80%E8%90%BD

於此南方有山、名補怛洛迦、彼有菩薩、名観自在(新華厳経・八法界品)、

と、

観音の浄土、

として崇拝された(日本国語大辞典)。「観音」については「観音勢至」で触れた。

白衣観音図.jpg


補陀落山(ふだらくせん)、
補陀落浄土、

ともいう(広辞苑)。「観音勢至」で触れたように、その住所は、中国では舟山列島中の、

普陀山普済寺、

日本では、

那智山、

を当てる(仝上・広辞苑)が、中国・日本で、多く観音の霊場にこの名を用い、日本では、

熊野、
日光、

が補陀落になぞらえられhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A3%9C%E9%99%80%E8%90%BD、中世には、観音信仰に基づき、熊野灘や足摺岬などから小船に乗って補陀落を目指す、

補陀落渡海、

が盛んに行われた(仝上)。

補陀落渡海、

は、阿弥陀(あみだ)信仰が極楽浄土を願うように、

観音信仰、

で、観音菩薩のいる補陀落山に往生することを願い、

小舟に乗って熊野那智山や四国足摺岬、室戸岬などから出帆すること、

をいうが、

信仰のためとはいいながら、実在かどうか定かでない補陀落に向かって決死の船出をするふしぎな宗教現象なので、古来なぞとされている、

とある(世界大百科事典)が、古来からの、

死後魂は海上のかなたにある先祖の住む常世国(とこよのくに)に帰る、

日本人の神観念が根底に流れていて、それが観音信仰と結び付いた(日本大百科全書)とする見方もある。

『熊野年代記』は868年(貞観10)の、

慶竜上人の渡海、

919年(延喜19)の、

補陀落(山)寺祐真上人と道行(同行)13人の渡海、

1131年(天承1)の同寺高厳上人の渡海、

等々、平安時代の渡海者3人、室町時代の渡海者10人、江戸時代の渡海者6人とその同行をあげている(世界大百科事典)。『吾妻鏡(あづまかがみ)』1233年(天福1)に、御家人の下河辺行秀(しもかわべゆきひで)が紀州那智の海岸から補陀落渡海したという報告があり、

船に屋形をつくり、外から釘を打ち、30日分の食糧などを積んで単身出発した、

という(仝上)。

9世紀から15世紀までは、

50年に1件、

の割合だったが、16世紀前半に、

4件、

後半に、

11件、

17世紀前半にかけて、

15件、

と流行のピークに達しhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A3%9C%E9%99%80%E8%90%BD%E6%B8%A1%E6%B5%B7、17世紀後半の江戸時代中頃になると、ほぼ発生しなくなる(仝上)とある。

普済寺.jpg


なお、冒頭の、

ゐど、

と訓ませている、

為度、

は、親鸞の、

広由本願力回向(こうゆほんがんりきえこう)
為度群生彰一心(いどぐんじょうしょういっしん)

にある(正信偈)、

為度、

と同じで、

広く本願力の回向に由って、群生を度せんがために、一心を彰す、

の、

度する、

であると思われる。「度する」というのは、

「渡らせる」ということで、苦悩に満ちた状態から、苦悩が解消した状態へ導くことです。迷いの此岸から、覚りの彼岸へ渡らせることです、

とあるhttps://jodo-shinshu.info/category/shoshinge/shoshinge45.html

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:36| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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