大梵天王は、中の間にこそおはしませ、少将波利女の御前は、西の間にこそおはしませ(梁塵秘抄)、
大梵天王(だいぼんてんおう)、
は、
大梵皇帝、
大梵王、
ともいい、
大梵天の王、
で、
Mahã-brahman(マハーブラフマン)、
を、
淫欲を離れているため梵(ぼん)といわれ、清浄・淨行、
と訳す(https://pseudo.ddo.jp/share/nexus/daibon.html)とあり、
色界四禅天の中の初禅天の王、
名を、
尸棄(しき)、
といい、仏が出世して法を説く時には必ず出現し帝釈天と共に仏の左右に列なり法を守護する、
仏法守護の神で娑婆世界の主、
とされる。バラモン教では万物の根源法である梵の神格化されたものとされ、宇宙の造物主として崇拝された(仝上)。
色界初禅天の主にして、又三界の主也、色界大梵天中の高楼閣中に住す、淫欲を離れ清浄なる王なり、故に又清浄天ともいう。其像は女身にして蠶衣を着け、手に柄香爐を執る、
とあり(https://www.arc.ritsumei.ac.jp/artwiki/index.php/%E5%A4%A7%E6%A2%B5%E5%A4%A9%E7%8E%8B)、
色界初禅天に三天あり、第一重を梵衆天第二重を梵輔天、第二重を大梵天といふ。大梵天は即ち初禅天の第一位の主君で梵輔天はその輔佐の臣梵衆天はその臣庶である、梵は清浄の義で此初禅天以上にあつては、淫欲更に起らぬので、清浄世界を梵天と名づける。この大梵天の宮城に住する大梵王は高麗の宝台に坐し、珠飾微妙の棲閣に居る、
とある(仏教辞林)。「三界(さんがい)」で触れたように、仏教の世界観で、
生きとし生けるものが生死流転する、苦しみ多き迷いの生存領域、
を、
欲界(kāma‐dhātu)、
色界(rūpa‐dhātu)、
無色界(ārūpa‐dhātu)、
の3種に分類(色とは物質のことである。界と訳されるサンスクリットdhātu‐はもともと層(stratum)を意味する)し、「欲界」は、
もっとも下にあり、性欲・食欲・睡眠欲の三つの欲を有する生きものの住む領域、
で、ここには、
地獄(じごく)・餓鬼(がき)・畜生(ちくしょう)・修羅(しゅら)・人・天、
の六種の、
生存領域(六趣(ろくしゅ)、六道(ろくどう))、
があり、欲界の神々(天)を、
六欲天、
という。「色界」は、
性欲・食欲・睡眠欲の三欲を離れた生きものの住む清らかな領域、
をいい、
絶妙な物質(色)よりなる世界なので色界の名があり、
四禅天、
に大別される。「四禅天」(しぜんてん)は、
禅定の四段階、
その領域、とその神々をいい、「初禅天」には、
梵衆・梵輔・大梵の三天、
「第二禅天」には、
少光・無量光・光音の三天、
「第三禅天」には、
少浄・無量浄・遍浄の三天、
「第四禅天」には、
無雲・福生・広果・無想・無煩・無熱・善見・善現・色究竟の九天、
合わせて十八天がある、とされる。
「無色界」は、
最上の領域であり、物質をすべて離脱した高度に精神的な世界、
であり、
空無辺処・識無辺処・無処有処・非想非非想処、
の四天から成り、ここの最高処、非想非非想処を、
有頂天(うちょうてん)、
と称する(広辞苑・日本大百科全書・世界大百科事典)。「非想非々想天」については触れた。
((三界 大辞泉より 「有頂天」には、色界(しきかい)の中で最も高い天である色究竟天(しきくきょうてん)とする説、色界の上にある無色界の中で、最上天である非想非非想天(ひそうひひそうてん)とする説の二説がある)
つまり、「大梵天(だいぼんてん)」は、
色界十八天の中の第3天である。初禅三天(大梵天・梵輔天・梵衆天)の中では最高位となる、
らしい(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E6%A2%B5%E5%A4%A9)。つまり、色界の初禅天の、
大梵天、
梵輔天、
梵衆天、
の三天のうち、大梵天は、
初禅天の王、
であり、
梵輔天は、
家臣、
梵衆天は、
一般庶民に当たる(精選版日本国語大辞典)とある。
梵天は、
Brahman、
の訳。古くは、
ぼんでん、
ともいい、
インドの古代宗教で、世界の創造主として尊崇された神。古代インド思想で宇宙の根源とされるブラフマンを神格化したもの、
である(精選版日本国語大辞典)。それが、仏教にはいって、
色界(しきかい)の初禅天(しょぜんてん)に住する仏教護持の神となった(精選版日本国語大辞典)。
大梵天王、三十六天主、帝釈天王、四方之四王、三界之諸天、閻魔法王、天神地祇、一切護法、共成随喜、咸倍威光(「三代格」嘉祥三年(850)一二月一四日)、
と、
八方天、
の一つで、帝釈天と対をなすことが多い(仝上)とある。
十二天、
は、
仏教の護法善神である「天部」の諸尊12種の総称、
で、十二天のうち、特に八方、
東西南北の四方と東北・東南・西北・西南、
を護る諸尊を、
八方天、
あるいは、
護世八方天といい、更に、
天地を護る諸尊、
を加えて、
十天、
ともいう(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%81%E4%BA%8C%E5%A4%A9)。すなわち、
東方の帝釈天(たいしゃくてん インドラIndra)、
南方の焔魔天(えんまてん ヤマYama)、
西方の水天(バルナVaruna)、
北方の毘沙門天(びしゃもんてん バイシュラバナVaiśravaa、クベーラKuvera)、
東南方の火天(アグニAgni)、
西南方の羅刹天(らせつてん ラークシャサRākasa)、
西北方の風天(バーユVāyu)、
東北方の伊舎那天(いしゃなてん イーシャーナĪśāna)、
上方の梵天(ぼんてん ブラフマーBrahmā)、
下方の地天(ちてん プリティビーPthivī)、
日天(にってん スーリヤSūrya)、
月天(がってん チャンドラCandra)、
をいう(日本大百科全書)。
(梵天像(明代 北京・智化寺) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A2%B5%E5%A4%A9より)
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95