2023年09月18日

喜見の城


忉利(たうり)は尊き處なり、善法堂には未申(ひつじさる)、圓生樹より丑寅(うしとら)に、中には喜見(きげん)の城(じやう)立てり(梁塵秘抄)、

の、

喜見城(きけんじょう)、

は、梵語、

Sudarśana、

の訳語、

帝釈天(たいしゃくてん)の居城、

とされ、

須弥山(しゅみせん)の頂上にある忉利天(とうりてん)の中央に位置し、七宝で飾られ、城の四門に四大庭園があって諸天人が遊び戯れるというので、楽園などのたとえにされる、

とある(精選版日本国語大辞典・広辞苑・デジタル大辞泉)。

善見城(ぜんけんじょう)、
喜見、
喜見宮、
喜見城宮、

等々とも呼ばれる(仝上)。

忉利天.jpg


善法堂(ぜんぽうどう)、

とは、

善法、

ともいい、

忉利天(とうりてん)の中にあるといわれる、帝釈天(たいしゃくてん)の善見城外の堂。三十三天がここに集まる、

とある(精選版日本国語大辞典)。

圓生樹、

は、

在忉利天善見城之東北(俱舍論)、

とあり、

城外東北有圓生樹、是三十三天受欲樂所也。其圓生樹盤根、深廣五十踰繕那、聳乾上昇、枝葉傍布、高廣量、等百由繕那、挺葉開花、妙香芬馥、順風熏滿百由繕那、逆風時猶徧五十、

ともある(仏学大辞典)。

忉利天」は、

梵語、多羅夜登陵舎(トラーヤストリンシャ Trāyastriſśa)の音写、

で、また、

怛利耶怛利奢、

に作り、

三十三天、

と漢訳する(大言海・デジタル大辞泉)。唐代の『慧苑音義』(慧苑・撰述 22年)には、

忉利、訛言、正云怛利耶怛利奢、言怛利耶者此云三也、怛利舎十三也、謂須弥山頂、四方各有八天城、當中有一天城、帝釈所居、総数有三十三處、

とあり、

忉利天者……住蘇迷蘆山(Sumeru の音訳、須彌山)頂、山頂有宮、名善見白、亦名喜見城、……更加是帝釈所住、喜見城成三十三天也(天台宗の僧源信(恵心僧都942~1017)「三界義(11C初)」)、

ともある。つまり、原意は、

三十三、

つまり、

三十三種の天(または天神)からなる世界、

を意味するので、

三十三天、

と意訳された(日本大百科全書)。

欲界、

の、

六欲天、

は、上から、

他化自在天(たけじざいてん) 欲界の最高位。六欲天の第6天、天魔波旬の住処、
化楽天(けらくてん、楽変化天=らくへんげてん) 六欲天の第5天。この天に住む者は、自己の対境(五境)を変化して娯楽の境とする、
兜率天(とそつてん、覩史多天=としたてん) 六欲天の第4天。須弥山の頂上、12由旬の処にある。菩薩がいる場所、
夜摩天(やまてん、焔摩天=えんまてん) 六欲天の第3天。時に随って快楽を受くる世界、
忉利天(とうりてん、三十三天=さんじゅうさんてん) 六欲天の第2天。須弥山の頂上、閻浮提の上、8万由旬の処にある。帝釈天のいる場所、
四大王衆天(しだいおうしゅてん) 六欲天の第1天。持国天・増長天・広目天・多聞天の四天王がいる場所、

となる(精選版日本国語大辞典・http://yuusen.g1.xrea.com/index_272.html)が、

忉利天、

は、

欲界の六天のうちの第二、

須弥山(しゅみせん)の頂上にあり、

帝釈天は、

中央の喜見城(きけんじょう)の、

殊勝殿(しゅしょうでん)、

に住み、四方の峰に八天があるので、

三十三天、

ともいう(広辞苑・デジタル大辞泉・日本大百科全書)。『慧苑音義』には、

この天、須弥山の頂に在り、四方に各八天の住処あり中央の善見城を加ふるゆゑに三十三天となる、帝釈天王の居所である、

に続いて、

往昔迦葉仏入滅の時一女人あり発心して塔を修す、また三十二人ありてこれを助修す、この功徳によりて女人は忉利天王に転生し、其助修者は皆輔臣となつたと、三十三天ある所以である、

とある(仏教辞典)。ちなみに、三十三天は、中央の、

喜見城(きけんじょう)天(善見城天)、

のほか、

善法堂天(ぜんぽうどう 善見城の南西に善法堂があり、ここに天人が定期的に集まり会議を開く)、
山峯天(さんぽうてん 北東の外側にある)、
山頂天(さんちょうてん 北西の外側にある)、
鉢私地天(はっしちてん 北西にある)、
倶吒天(くたてん 北東にある)、
雑殿天(ぞうでんてん 北西の外側にある)、
歓喜園天(かんぎえんてん 北方にある。ここには善見城の周囲にある4つの庭園のうちの1つ歓喜園と如意池がある。ここへ入ると自然に歓喜の心が生じるとされる。「かんぎおん」とも)、
光明天(こうみょうてん 北東の外側にある)、
波利耶多天(はりやたてん 北東の外側にある)、
離険岸天(りけんがんてん 東にある。その内側には善見城の周囲にある4つの庭園のうちの1つ衆車園と如意池がある)、
谷崖岸天(こくがいがんてん 東にある。その内側には善見城の周囲にある4つの庭園のうちの1つ衆車園と如意池がある)、
摩尼蔵天(まにぞうてん 北東の外側にある)、
旋行天(せんぎょうてん 北東にある)、
金殿天(こんでんてん 北東の外側にある)、
鬘影天(まんえいてん 南東にある)、
柔軟天(じゅうなんてん 南東の外側にある)、
雑荘厳天(ぞうしょうごんてん南東の外側にある)、
如意天(にょいてん 南東にある)、
微細行天(びさいぎょうてん 南東の外側にある)、
歌音喜楽天(かおんきらくてん 南の外側にある。その内側には善見城の周囲にある4つの庭園のうちの1つ粗悪園(悪口園)と如意池がある)、
威徳輪天(いとくりんてん 南西の外側にある)、
月行天(げっこうてん 南西にある)、
閻摩那娑羅天(えんまやさらてん 南西の外側にある)、
速行天(そっこうてん 南西の外側にある)、
影照天(えいしょうてん 西の外側にある。その内側には善見城の周囲にある4つの庭園のうちの1つ雑林園と如意池がある)、
智慧行天(ちえぎょうてん 西の外側にある)、
衆分天(しゅうぶんてん 西の外側にある)、
曼陀羅天(まんだらてん 北西にある)、
上行天(じょうぎょうてん 北西にある)、
威徳顔天(いとくがんてん 北西の外側にある)、
威徳燄輪光天(いとくえんりんこうてん 北西にある)、
清浄天(しょうじょうてん 北西の外側にある)、

とあるhttps://jiincenter.net/toriten-33ten/

須弥山図.jpg

(須弥山圖 広辞苑より)

須弥山」については触れた。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:54| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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