2023年11月10日
十惡五逆
弥陀の誓ひたのもしき、十惡五逆の人なれど、一たび御名(みな)を称(とな)ふれば、来迎引接(らいごういんぜう)疑はず(梁塵秘抄)、
の、
十惡五逆、
は、
「業障(ごうしょう)」で触れたが、「五逆」(ごぎゃく)は、
五逆罪、
ともいい、仏教で説く、
五種の重罪、
ともいい、この五つの重罪を犯すと、もっとも恐ろしい無間地獄(むけんじごく)に落ちるので、
五無間業(ごむけんごう)、
ともいう。その数え方に諸説あるが、代表的なものは、
所謂五逆罪、是指殺父、殺母、殺阿羅漢、破和合僧、出佛身血。若犯其中之一、即墮無間地獄、
と(「和合僧」とは、僧衆によって構成される教団のこと。五人以上の僧が和合したものをいう)、
母を殺すこと、
父を殺すこと、
悟りを開いた聖者(阿羅漢)を殺すこと、
仏の身体を傷つけて出血させること(仏身を傷つけること)、
仏教教団を破壊し分裂させること(僧の和合を破ること)、
とされる。前二者は、
恩田(おんでん 恩に報いなければならないもの)に背き、
後三者は、
福田(ふくでん 福徳を生み出すもの)に背く、
もので、仏法をそしる謗法罪(ぼうほうざい)とともに、もっとも重い罪とされる(日本大百科全書・広辞苑)。
「十悪」(じゅうあく)は、
離為十悪(南斉書・高逸伝論)、
とあるように、
身、口、意の三業(さんごう)が作る十種の罪悪、
の意で、「十惡」は、
十惡業、
ともいい、
殺生(せっしょう)・偸盗(ちゅうとう)・邪淫(じゃいん)・妄語(もうご)・綺語(きご)・悪口(あっく)・両舌(りょうぜつ)・貪欲(とんよく)・瞋恚(しんに)・邪見(じゃけん または愚癡ぐち)、
をいい、
殺生(せっしょう)・偸盗(ちゅうとう)・邪淫(じゃいん)、
を、
一是殺人奪命、二是不與而取、包括盜竊、搶竊、三是邪淫、指於家室之外發生兩性關係、這三種都是行為、故稱為身惡、
とある、
身悪、
を、
身三(しんさん)、
といい、
妄語(もうご)・綺語(きご)・悪口(あっく)・両舌(りょうぜつ)、
を、
一是妄言、包括狂妄語、虛浮語、欺騙語等;二是兩舌、即挑撥離間、搬弄是非、造謠中傷等;三是惡口、指惡言惡語、粗暴語、出口傷人之語等;四是綺語、指髒話、雜穢語、粗話等。由於這四種都是出自口的語言行為、故稱為「口惡」、
とある、
口惡、
を、
口四(くし)、
といい、
貪欲(とんよく)・瞋恚(しんい)・邪見(じゃけん)、
を、
一是貪慾、指貪財、貪色、貪名、貪圖享受等各種貪慾;二是瞋恚、指的是憎惡、慍怒、仇恨和記恨等;三是邪見、指不信佛法、不信因果、並宣揚之、
とある、
意惡、
を、
意三(いさん)、
といい、
げに嘆けども人間の、身三・口四・意三の、十の道多かりき(謡曲・柏崎)、
と、
身三口四意三(しんさんくしいさん)、
という言い方をする(精選版日本国語大辞典・広辞苑)。この逆が、
十善(じゅうぜん)、
で、
十悪を犯さないこと、
で、
不殺生・不偸盗(ちゅうとう)・不邪淫・不妄語・不綺語(きご)・不悪口(あっく)・不両舌・不貪欲・不瞋恚(しんい)・不邪見、
といい、
十善業、
十善戒、
十善業道、
という(仝上)。また、
邪見、邪思維、邪語、邪業、邪命、邪精進(又叫邪方便)、邪念、邪定、
を、
八邪、
とする言い方もある(http://www.fodizi.tw/fojiaozhishi/3347.html)。
正道やその前段階である善根をさまたげる三つのさわり、
を、
三障(さんしょう)、
というが、それは、
煩悩障(ぼんのうしょう 貪欲、瞋恚(しんい)、愚痴(ぐち)などの煩悩)、
業障(ごうしょう 五逆、十悪などの行為)、
報障(異熟障すなわち地獄、餓鬼、畜生の苦報など)、
をいい、「四障」(ししょう)という言い方もあり、それは、
悟りを得るための四つの障害、
の意で、
仏法を信じない闡提(せんだい 闡提障)、
我見に執着する外道(外道障)、
生死の苦を恐れる声聞(声聞障)、
利他の慈悲心がない独覚(独覚障)、
の四つを言うが、一説に、
惑障(物に迷うこと=煩悩)、
業障(悪業のさわり)、
報障(悪業のむくい)、
見障(邪見)、
ともある。ついでに「五障」というのもあり、
修道上の五つの障害、
を指し、
煩悩障(煩悩(ぼんのう)のさわり)、
業障(ごつしよう 悪業のさわり)、
生障(しようしよう 前業によって悪環境に生まれたさわり)、
法障(ほつしよう 前生の縁によって善き師にあえず、仏法を聞きえないさわり)、
所知障(しよちしよう 正法を聞いても諸因縁によって般若波羅蜜(はんにやはらみつ)の修行ができないさわり)、
をいう(仝上・世界大百科事典)。ただ、信、勤、念、定、慧の五善根にとってさわりとなる、
欺、怠、瞋、恨、怨、
を五障ということもある(仝上)。こうした、
悪業(あくごう)によって生じた障害、
を、
悪業のさわり、
つまり、
業障(ごうしょう・ごっしょう)、
という。
「業」(漢音ギョウ、呉音ゴウ)は、「一業所感」で触れたように、
象形。ぎざぎざのとめ木のついた台を描いたもの。でこぼこがあってつかえる意を含み、すらりとはいかない仕事の意となる。厳(ガン いかつい)・岩(ごつごつしたいわ)などと縁が近い、
とある(漢字源)が、別に、
象形。楽器などをかけるぎざぎざのついた台を象る。苦労して仕事をするの意か、
とも(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E6%A5%AD)、
象形。かざりを付けた、楽器を掛けるための大きな台の形にかたどる。ひいて、文字を書く板、転じて、学びのわざ、仕事の意に用いる、
とも(角川新字源)、
象形文字です。「のこぎり状のぎざぎざの装飾を施した楽器を掛ける為の飾り板」の象形から「わざ・しごと・いた」を意味する「業」という漢字が成り立ちました、
ともあり(https://okjiten.jp/kanji474.html)、
ぎざぎざのとめ木のついた台、
が、
のこぎり状のぎざぎざの装飾を施した楽器を掛ける為の飾り板、
と特定されたものだということがわかる。
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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