2023年11月25日
朗詠
朗詠のことを、とりどり語り侍りき(梁塵秘抄口伝集第十二)、
の、
朗詠、
は、漢語で、
朗詠長川(孫綽、遊天台山賦)、
と、
朗吟、
と同義で、
清くほがらかに歌う、
意(字源)だから、和語でも、
和歌を朗詠する、
というように、
詩歌を声高くうたう、
意でも使う(広辞苑)が、特に、
漢詩文の秀句を訓読みに和げて歌ひし節、
をいい(字源)、平安中期以降、管弦の遊びの折などに、
漢詩文の二節一連のものに曲節をつけてうたう自由なリズムの謡物、
をいう(大辞林)。元来、
嵯峨天皇(九世紀)以来、詩文専ら行われて、詩を朗詠せしが、醍醐天皇(十世紀)の頃より、和歌大いに起りて、歌をも朗詠せり、
と(大言海)、和歌もその対象となり(岩波古語辞典)、中世以降、
雅楽化、
された(デジタル大辞泉)。
竜笛(りゅうてき)・篳篥(ひちりき)・笙(しょう)の伴奏で、数人が旋律をつけて独唱・斉唱、
し(「竜笛」・「篳篥」・「笙」については、「篳篥」で触れた)、
拍節がないこと、音高が固定していないこと、
が特徴とある(広辞苑)。朗吟するための詩歌、歌曲を集めたものに、藤原公任の、
和漢朗詠集、
藤原基俊の、
新撰朗詠集、
などがある(広辞苑)。なお、催馬楽・今様などを含めて、広義には、「郢曲(えいきょく)」に含まれる(学研古語辞典・日本大百科全書)。地方の民謡を詞章とした拍節的(一定の時間単位で繰り返されるアクセントの周期的反復)な、
催馬楽、
に対して、
朗詠、
は二節一連の漢詩を用い、自由拍子で拍節はない。
漢詩を一ノ句から三ノ句に分け、各句の初めを独唱、「付所(つけどころ)」の指示がある箇所からは笙(しょう)・篳篥(ひちりき)・竜笛(りゅうてき)(各一管)の付奏により斉唱で謡われる、
とある(仝上)。
源雅信が一定の曲節をつけたという『極楽尊』『徳是北辰(とくはこれほくしん)』などを、
根本七首、
と称し、のちに曲目が増え、藤原宗忠・忠実(ただざね)らの『朗詠九十首抄』、藤原公任(きんとう)の『和漢朗詠集』につながる(仝上)。宇多天皇の孫にあたる源雅信(920~93)が、そのうたいぶりのスタイルを定め、一派を確立し、雅信を流祖とする源家(げんけ)と、《和漢朗詠集》《新撰朗詠集》の撰者藤原公任、藤原基俊などの流派である藤家(とうけ)の2流により、それぞれのうたいぶりや譜本を伝えた(世界大百科事典)が、藤家(とうけ)は絶えた(日本大百科全書)とある。
210種の詞章があったというが、現在は14種、
とされる(山川日本史小辞典)。
2の句の音域が高くて困難なことから、
二の句がつげぬ、
という言回しがうまれたともいう(仝上)とある。
二の句、
とは、雅楽の朗詠で三段階あるうちの二段目の句、
のことで、
一段目は低音域、二段目は高音域、三段目は中音域で、二の句は高音域である。高音のまま詠じ続けて、息切れしやすく難しいことから、声に出せないさまを「二の句が継げない」と言うようになった、
とある(語源由来辞典)。
「朗」(ロウ)は、
会意兼形声。良は、きれいに精白したこめをもたらすことを示す会意文字。清らかで曇りがない意を含む。粮(リョウ)の原字。朗は「月+音符良」で、月が澄んでいること、
とある(漢字源)。
形声。月と、音符良(リヤウ、ラウ)とから成る。月光が明るい、ひいて「あきらか」「ほがらか」の意を表す(角川新字源)、
会意兼形声文字です(良+月)。「穀物の中から特に良いものだけを選び出す器具」の象形(「よい」の意味)と「欠けた月」の象形から、良い月を意味し、そこから、「あかるい」を意味する「朗」という漢字が成り立ちました(https://okjiten.jp/kanji1073.html)、
ともある。
「詠(漢音エイ、呉音ヨウ)は、
会意兼形声。「言+音符永(ながい)」、
とあり(漢字源)、
会意形声。言と、永(ヱイ)(ながい)とから成り、声を長く引いて「うたう」意を表す(角川新字源)、
会意兼形声文字です(言+永)。「取っ手のある刃物の象形と口の象形」(「(つつしんで)言う」の意味)と「支流を引き込む長い流域を持つ川」の象形(「いつまでも長く続く・はるか」の意味)から、口から声を長く引いて「(詩歌を)うたう」を意味する「詠」という漢字が成り立ちました(https://okjiten.jp/kanji1238.html)、
ともある。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
簡野道明『字源』(角川書店)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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