2023年11月29日

くいな


水鶏(くいな)啼と人のいへばや佐屋泊(さやどまり)(芭蕉)、

の、

水鶏、

は、

秧鶏、

とも当て、

ツル目クイナ科の鳥の総称、

で、

クイナ・ヒクイナなどの類、

をいい、

世界に約130種、鳥類の中で絶滅種が最も多く、1600年以降、世界の島嶼(とうしょ)に生息するクイナのうち14種以上が絶滅した、

とある(広辞苑)。詩歌に詠まれるのは、夏に飛来する、

緋水鶏、

で、和歌以来、もっぱら鳴き声が詠まれ、

人が戸をたたく音、

に比されて、

たたく、

と表現される(仝上・雲英末雄・佐藤勝明訳註『芭蕉全句集』)。

ヒクイナ.jpg


ヒクイナ、

は、

緋水鶏、
緋秧鶏、

と当て、

ナツクイナ、

とも呼ばれ(精選版日本国語大辞典)、

ツル目 クイナ科 ヒメクイナ属、

に分類されるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%82%AF%E3%82%A4%E3%83%8A。古くは単に、

水鶏(くひな)、

と呼ばれ、その独特の鳴き声は古くから、

たたくとも誰かくひなの暮れぬるに山路を深く尋ねては来む(更級日記)、

と、

水鶏たたく、

と言いならわされてきたhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%82%AF%E3%82%A4%E3%83%8A。その連想から

「く(来)」といいかけて用いる、

など、古くから詩歌にとりあげられてきた(日本国語大辞典)。

全長20センチ程、上面の羽衣は褐色や暗緑褐色、喉の羽衣は白や汚白色、胸部や体側面の羽衣は赤褐色、腹部の羽衣は汚白色で、淡褐色の縞模様が入る、

とあり(仝上)、湿原、河川、水田などに生息する。

クイナ.jpg


「くいな」は、

水雉、

とも当て、

ツル目 クイナ科 クイナ属に分類されhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%82%A4%E3%83%8A、全長30センチ程度、体形はシギに似る。くちばしは黄色、背面が褐色で黒斑があり、顔は灰鼠色、腹には顕著な白色横斑がある(広辞苑・精選版日本国語大辞典)。秋、北方から渡来、湿原、湖沼、水辺の竹やぶ、水田などに生息する(仝上)。また、

薮の中にいることが多いので姿を見ることは少ない鳥、

ともあるhttps://www.suntory.co.jp/eco/birds/encyclopedia/detail/1515.html

くいな、

の和名は、

ヒクイナの鳴き声(「クヒ」と「な」く)に由来https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%82%A4%E3%83%8A
鳴きはじめは、クヒクヒと聞ゆと云ふ、ナは鳴くの語根(ひひ鳴き、ひひな。馬塞(うませき)、うませ)(大言海)、

と、鳴き声説があるが、「ひくいな」を「くいな」と呼んでいたとすると、

「クッ クッ」あるいは「クリュッ クリュッ」と聞こえる声、

を出しているのは、

くいな、

の方でhttps://www.suntory.co.jp/eco/birds/encyclopedia/detail/1515.html

ヒクイナ、

は、

「コン コン コン」あるいは「クォン クォン クォン ‥‥コココ‥」と聞こえ、次第に早口になります、

とあるhttps://www.suntory.co.jp/eco/birds/encyclopedia/detail/1527.html。この声が、夕方から夜にかけてよく聞くことが出来るので、夜間の訪問者を意識して、

戸を叩く、

と言ったと見られる(仝上)。とすると、「ひくいな」と「くいな」を区別していなかったとしても、鳴き声からは、「くいな」の鳴き声を「たたく」といったのとは矛盾してくる。他には、

キクナ(來鳴)の義(日本釈名)、
クヒナ(食菜)の義(名語記)、

や、

クヒナキ(食鳴)の義、夜中に田に鳴く蛙を食いながら啼くから(名言通)、
クヒア(喰蛙)の義(言元梯)、

がある(日本国語大辞典)。たしかに、本草和名には、

鼃鳥、久比奈(鼃(蛙)を食ふと云ふ)、

とあるのだが。

クイナ(広辞苑).jpg

(クイナ 広辞苑より)

参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:52| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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