炉開や左官老行(おいゆく)鬢(びん)の霜(芭蕉)、
の、
炉開(ろびらき)、
は、
茶家で、陰暦10月1日または同月の中の亥の日に、それまで使用していた風炉(ふろ)をしまい、炉をひらくこと、
をいい、
開炉(かいろ)、
ともいい(精選版日本国語大辞典)、
爐塞(ろふさぎ)、
に対し(大言海)、11月より翌春5月まで、半年間、
炉による茶の湯がおこなわれる、
とあり(https://www.omotesenke.jp/cgi-bin/result.cgi?id=2201)、また、その年の春に摘まれた新茶を使いはじめる口切の茶の頃と重なって、
口切り、
ともいい、
開炉の頃は茶の湯の正月ともよばれる(仝上)。
9月、昨年製の茶の尽くるに催す、
のを、
名残りの茶、
という(大言海)とある。また、広く一般に、
暖をとるために炉を使い始めること、
をも、
炉開、
といい(精選版日本国語大辞典)、
初冬に囲炉裏を使い始めること、
をいう(松尾芭蕉(雲英末雄・佐藤勝明訳註)『芭蕉全句集』)ともある。千利休の頃は、
柚の色づくのを見て炉を開く、
ともいわれた(https://www.omotesenke.jp/cgi-bin/result.cgi?id=2201)とある。季語は、
冬である。
口切に堺の庭ぞなつかしき(芭蕉)、
の、
口切り、
は、これも茶事にともなって、
十月初めに新茶の壺の封を切ること、
をいう(松尾芭蕉(雲英末雄・佐藤勝明訳註)『芭蕉全句集』)。炉開きに行なわれ、
葉茶壺に入れ目張りをして保存しておいた新茶を、陰暦10月の初め頃に封を切り、抹茶(まっちゃ)にひいて客に飲ませる、
ものである(精選版日本国語大辞典)。
口切り、
は、
一般には、
今度取て来たらば、汝に口切をさせうぞ(狂言「千鳥(室町末‐近世初)」)、
と、
容器などの口の封を切って初めてあけること。また、そのあけたばかりのもの、
をいい、
くちあけ、
くちびらき、
ともいい、転じて、
糀町の乾物屋より口切して(浮世草子「世間娘容気(1717)」)、
と、
物事をし始めること、
をいい、
てはじめ、
かわきり、
くちあけ、
ともいう(精選版日本国語大辞典)。
風炉(ふろ)、
は、「点前」でも触れたが、
茶釜を火に掛けて湯をわかすための炉、
をいい、
夏を中心に5月初めごろから10月末ごろまで用いる。
爐塞、
は、
茶人の家にて、陰暦3月晦日に、地爐を閉じて、(4月朔日からは)風爐を用いること、
をいう(大言海)。
(茶道で使われる風炉(画面奥) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A2%A8%E7%82%89より)
なお、「茶事」、「茶道具」、「茶」については触れた。
(「爐(炉)」 https://kakijun.jp/page/E0A2200.htmlより)
「爐(炉)」(漢音ロ、呉音ル)は、
会意兼形声。盧(ロ)は「入れ物+皿(さら)+音符虎(コ)の略体」の形声文字で、つぼ型のまるいこんろのこと。のち金属で外側をまいた、または大型のかまどの意ともなる。爐は「火+音符盧(ロ)」で、盧(まるいつぼ、こんろ)の原義をあらわすため、火印を添えた、
とある(漢字源)。常用漢字は俗字による(角川新字源)。別に、
会意兼形声文字です(火+盧)。「燃え立つ炎」の象形(「火」の意味)と「口の小さな亀の象形と食物を盛る皿の象形」(「クルッとろくろ(轆轤)を回して作った飯入れ」の意味)から、「いろり」を意味する「炉」という漢字が成り立ちました、
ともある(https://okjiten.jp/kanji1569.html)。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95