2024年01月22日
離(か)る
山里は冬ぞさびしさまさりける人目も草もかれぬと思へば(古今和歌集)、
の、
かる、
は、
離る、
と当てるが、
離る、
は、
ある、
と訓ませると、
散る、
とも当て、
アラ(粗)の動詞形、
で、
廿人の人の上りて侍れば、あれて寄りまうで来ず(竹取物語)、
と、
別れる、
散り散りになる、
意で、その外延で、
鮪(しび)突く海人(あま)よ其(し)が阿礼(アレ)ばうら恋(こほ)しけむ(古事記)、
と、
遠のく、
疎くなる、
となり、
さかる、
と訓ませると、
離(さ)くの自動詞形、
で、
大和をも遠く離りて岩が根の荒き島根に宿りする(万葉集)、
と、
へだたる、
遠ざかる、
意で、
はなる、
とよますと、
放る、
とも当て、
大君の命(みこと)畏み愛(うつく)しけ真子が手波奈利(ハナリ)島伝ひ行く(万葉集)、
と、
離れる、
意である(広辞苑・日本国語大辞典)。いずれも、
かる(離)、
と似た意味であるが、「離(か)る」は、
空間的・心理的に、密接な関係にある相手が疎遠になり、関係が絶える意、多く歌に使われ、「枯れ」と掛詞になる場合が多い。類義語アカルは散り散りになる意。ワカルは、一体になっているものごと・状態が、ある区切り目をもって別のものになる意、
と、使い分けられていたとある(岩波古語辞典)。
離(か)る、
は、
か(涸・枯)れると同源(広辞苑)、
切るると通ず(大言海)、
とある。
かる、
に当てるのは、
離る、
の他に、
刈る、
駆る、
枯る、
涸る、
嗄る、
等々とある。
涸る、
嗄る、
枯る、
は、意味からも、
水気がなくなる、
意と通じるのはわかる気がするが、他についても、「かる」で触れたように、
離る、
と繋がっていく。
刈る、
も、
切り離す、
意であり、
切る、伐(こ)るに通ず、
とあり(大言海)、
伐(こ)る、
は、類聚名義抄(11~12世紀)に、
伐、キル・コル
とあり、
離(か)る、
も、
切るるの義、
であり(大言海)つながっていく。さらに、
枯(涸・乾)る、
も、
カル(涸)と同根。水気がなくなってものの機能が弱り、正常に働かずに死ぬ意。類義語ヒ(干)は水分が自然に蒸発する意だけで、機能を問題にしない、
とあり(岩波古語辞典)、万葉集に、
耳無(みみなし)の池し恨めし吾妹子が来つつ潜(かづ)らば水は涸れなむ、
とある。こう見ると、
刈ればそのまま枯れるという意から、カル(枯)に通じる(和句解)、
涸る、
と
刈る、
はつながり、
離る、狩る、涸ると同源、
となる(日本語源広辞典)。
「離」(リ)は、
会意。離は「隹(とり)+大蛇の姿」で、もと、へびと鳥が組みつはなれつ争うことを示す。ただし、ふつうは麗(きれいにならぶ)に当て、二つくっつく、二つ別々になる意をあらわす、
とあり(漢字源)、また、
会意兼形声文字です(离+隹)。「頭に飾りをつけた獣」の象形と「尾の短いずんぐりした小鳥」の象形から、「チョウセンウグイス」の意味を表したが、「列・刺」に通じ(「列・刺」と同じ意味を持つようになって)、切れ目を入れて「はなす」を意味する「離」という漢字が成り立ちました、
ともある(https://okjiten.jp/kanji1304.html)が、
会意文字と解釈する説があるが、誤った分析である。音韻形態が示すように実際には形声文字である、
とされ(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E9%9B%A2)、
形声。「隹」+音符「离 /*RAJ/」。一種の鳥を指す漢語{離 /*raj/}を表す字。のち仮借して「はなれる」を意味する漢語{離 /*raj/}に用いる、
とか(仝上)、
形声。隹と、音符离(チ、リ)とから成る。こうらいうぐいすの意を表す。借りて「はなれる」意に用いる、
とされる(角川新字源)。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください