2024年01月29日
もみづ
雪降りて年の暮れぬる時にこそつひにもみぢぬ松も見えけれ(古今和歌集)
は、論語子罕篇の、
歳寒くして、然る後、松柏の彫(しぼ)むに後(おく)るるを知る、
を踏まえる(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)とある。この、
もみづ、
は、
我が宿(やど)の萩(はぎ)の下葉(したば)は秋風(あきかぜ)もいまだ吹かねばかくぞもみてる(万葉集)
とある、四段活用動詞、
もみつ、
が平安初期以後上二段化し、語尾が濁音化したもの、
とあり(岩波古語辞典・日本国語大辞典)、
もみつ、
は、
紅葉つ、
黄葉つ、
と当てる(広辞苑)。その、
もみづ、
の連用形の名詞化が、
もみぢ(紅葉。黄葉)、
である。
もみち(もみぢ)、
は、
色を揉み出すところから、もみじ(揉出)の義、またモミイヅ(揉出)の略(日本語源広辞典・和字正濫鈔・日本声母伝・南嶺遺稿・類聚名物考・牧の板屋)、
紅(もみ)を活用す(大言海)、
モミヂ(紅出)の義、モミ(紅)の色に似ているところから(和句解・冠辞考・万葉考・和訓栞)、
モユ(燃)ミチの反(名語記)、
モミテ(絳紅手)の義(言元梯)、
等々あるが、もともとの、
もみつ、
からの語源説明でないと、意味がないのではない。その点では、
もみ(紅)の活用、
は意味がある。これは、
色は揉みて出すもの、紅(クレナヰ)を染むるに、染めて後、水に浸し、手にて揉みて色を出す、
とあり(大言海)、
もみ、
は、
ほんもみ、
ともいう(精選版日本国語大辞典)ので、結果的には、
もみじ(揉出)、
モミイヅ(揉出)の略、
とする語源説と似てくるが。
もみ、
は、
紅、
紅絹、
本紅絹、
と当て(世界大百科事典・精選版日本国語大辞典)、
紅花を揉んで染めるところから、
この名があり、江戸時代には、
紅花染を紅染(もみぞめ)、職人を、
紅師(もみし)、
といったことされる(仝上)。
緋紅色に染めた平絹
をそう呼び、
平絹、羽二重に鬱金(うこん)で黄に下染めした上へ紅をかけて、いわゆるもみじ色の緋(ひ)色に染め上げた、
とあり、
和服の袖裏や胴裏などに使う、
とある(仝上)。日本では、古くから、
紅で染めたものを肌着や裏地に用いる習慣がある。これはおそらく紅の薬物的な効力に対する信憑(しんぴょう)感から出たものであろう、
とある(日本大百科全書)。
なお、「紅葉狩」については触れた。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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