2024年02月03日

算賀


八十(やそじ)の賀にしろがねを杖につくれりけるを見て(古今和歌集)、

の、

賀にしろがねを杖につくれりける、

とあるのは、

算賀におくられるならわし、一般は竹のものが多い、

とある(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。

算賀、

の算は、

廣韻(北宋、韻書)に「物数也」とあり、年数の義、年齢の意、年賀とも云ふ、是なり、至尊の御年齢を、御算、寶算と申す、顔延之、赭白馬賦「歯算延長、聲價隆振」注「言長命而聲價盛振」、

とあり(大言海)、

算賀、

は、

年寿を祝賀する、

意で、後世では、

賀(が)の祝い、

という(世界大百科事典)。古くは、

40歳から10年ごとに祝った、

とされるが、室町末期からは、

42歳(初老)・61歳(還暦)・70歳(古稀)・77歳(喜寿)・80歳(傘寿)・88歳(米寿)・90歳(卒寿)・99歳(白寿)を祝うようになった、

とある(デジタル大辞泉)、

長寿の祝い、

を総称して、

賀寿、
賀の祝い、
算賀、

といい(世界大百科事典)、庶民の間ではこれを、

年祝と呼ぶことが多い、

ともある(仝上)。これは、中国伝来の風習で、東大寺要録には天平一二年(740)10月八日の聖武天皇の40の賀が、

皇御年四十満賀之設講初開講、

とあり、奈良時代から行なわれていたことが知られる。この算賀の儀は、

饗宴、奏楽、作詩・作歌が主要行事、

であり、この儀には、

屏風を調進し、屏風絵・屏風歌を書いて祝の席に立てていた、

とある(精選版日本国語大辞典)。祝儀の品々は、

40の賀なら白馬40匹、薬師経40巻、唐櫃(からびつ)40合、

というように年数(またはその2倍、10倍、100倍など)に数を合わせるしきたりだった。また、

竹杖、
鳩杖

を贈った(仝上・世界大百科事典)。この、10の倍数によらない、

六一(生年の干支が一巡する年としての還暦)、
七七(喜ぶの草書からの喜寿)、
八十(傘寿「傘」の略字が八十に似ているから)、
八八(米の字から米寿)、
九十(卒寿、「卒」の略字「卆」が九十と読めるから)、
九十九(白寿、百から上の一を取ると白になるから)、
百(上寿(じょうじゅ)、元々は寿命の長いことを上寿と呼ぶ)、

等々の賀を祝うことは、室町時代頃から行なわれ始めたのは上述した。

賀寿、

は、本来は、言葉の意味からは、

長寿を祝うこと、
よろこびを述べること、

で、

寿賀、

ともいうが、

算賀、

とほぼ同義で使われている。

合類節用集(元禄)には、

年算賀、人、四十歳、古来称始仕、故賀焉、相承遂年到百歳、猶修此式、

とあり、「日次記事(ひなみきじ)」(江戸前期)には、

凡、人壽、四十歳に満つる年は、老者の初と称して、始めて、延ぶる祝なす事、是れ、往来の壽算を数へ、老を延ぶる祝なり、

とある。

「賀」 漢字.gif


「賀」(漢音カ、呉音ガ)は、

会意兼形声。加は「力+口」の会意文字で、上に何かをのせるという意味をふくむ。賀は「貝+音符加」で、もっと礼物をうず高く積み上げる意。転じて、物をおくってお祝いすること、

とある(漢字源)。別に、

会意兼形声文字です(加+貝)。「力強い腕・口の象形」(力と祈り(口)である作用を「くわえる」の意味)と「子安貝(貨幣)」の象形(「財貨(金銭と品物)」の意味)から貨幣を人に贈り「いわう」を意味する「賀」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji801.html。ただ、

形声。貝と、音符加(カ)とから成る。たからを贈って祝う意を表す、

と(角川新字源)、形声文字とする説もある。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:52| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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