2024年02月16日

草枕


あさなけに見べき君としたのまねば思ひたちぬる草枕なり(古今和歌集)、

の、

草枕、

は、

くさのまくら(大辞林)、

つまり、

旅に、草を枕とすること(大言海)、

の意で、

草を結んで枕として野宿すること、

とある(広辞苑・岩波古語辞典)、

古へ、旅路の宿りに、、仮庵を作るを、草結ぶと云ひ、茅草などを束ねて枕としたり、

ということ(大言海)のようである。

笹枕(ささまくら)、
旅寝、
旅枕、
旅の仮寝、

ともいい、これが転じて、

草枕もみぢむしろに替へたらば心をくだくものならましや(後撰和歌集)、

と、

旅先でのわびしい宿泊や仮の宿、

を暗示したり、

さもこそは都のほかに宿りせめうたて露けき草まくらかな(後拾遺和歌集)、

と、

わびしい旅寝、

朝なけに見べき君とし頼まねば思ひ立ちぬるくさまくらなり(古今和歌集)、

と、

わびしい旅、

と、

旅寝、

あるいは、

旅、

の意で使われる(精選版日本国語大辞典)。この意の、

草枕、

が、転じて、

「たび(旅)」「むすぶ(結ぶ)」「ゆふ(結ふ)」「かり(仮)」「つゆ(露)」「たご(多胡)」、

等々にかかる、

枕詞、

として使わる(広辞苑)、たとえば、

久佐麻久良(クサマクラ)旅行く君を幸(さき)くあれと斎瓮(いはひへ)据ゑつ我が床の辺に(万葉集)、
家にあれば笥(ケ)に盛る飯を草枕旅にしあれば椎の葉に盛る(仝上)、

と、

道の辺の草を枕にして寝る意で

旅、

にかかり、

草まくらこの旅寝にぞ思ひ知る月より外の友無かりけり(金葉和歌集)、

と、

「枕」の語に、寝るということとのつながりを感ずるところ、

からか、

旅寝、

にかかり、

草枕このたび経つる年月の憂きはかへりて嬉しからなん(後撰和歌集)、

と、


「旅(たび)」と同音の「たび(度)」または、それを含む連語、

にかかり、

草枕夕風寒くなりにけり衣うつなる宿や借らまし(新古今和歌集)、

と、

草の枕を「結ふ」意で、「結ふ」と同音の「ゆふ(夕)」を含む連語や地名「ゆふ山」、

等々にかかる(精選版日本国語大辞典)。

「草」.gif

(「草」 https://kakijun.jp/page/0965200.htmlより)

「草」(ソウ)の字は、「」で触れたが、

形声。「艸+音符早」。原義は、くぬぎ、またははんのきの実であるが、のち、原義は別の字であらわし、草の字を古くから艸の字に当てて代用する、

とある(漢字源・角川新字源)。別に、

形声。「艸」+音符「早」。「くさ」(cǎo)を意味する字は本来「艸」であり、「草」は「どんぐり」(zào)を意味したが、のちに「草」が「くさ」を意味するようになり、「どんぐり」の意味には「皁」(「皂」)を用いるようになった、

ともhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E8%8D%89

形声文字です(艸+早)。「並び生えた草」の象形(「くさ」の意味)と「太陽の象形と人の頭の象形」(人の頭上に太陽があがりはじめる朝の意味から、「早い」の意味だが、ここでは、「艸(そう)」に通じ、「くさ」の意味)から、「くさ」を意味する「草」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji67.html

「艸」.gif


「艸」 中国最古の字書『説文解字』.png

(「艸」 中国最古の字書『説文解字』(後漢・許慎)・漢 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E8%89%B8より)

「艸」(ソウ)は、

くさの並んで生え出るさまを表した字、「艹(くさかんむり)」の原形、

とありhttps://www.kanjipedia.jp/kanji/0004210000/

象形。草が並んで生えている形、

または、

「屮」(草の芽の出る様を象る)を並べた会意文字、

とあるhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E8%89%B8

「枕」.gif


「枕」(慣用チン、漢音・呉音シン)は、「南枕」で触れたように、

会意兼形声。冘(イン・ユウ)は、人の肩や首を重荷でおさえて、下に押し下げるさま。古い字は、牛を川の中に沈めるさま。枕はそれを音符とし、木を加えた字で、頭でおしさげる木製のまくら、

とある(漢字源)。音符冘(イム)→(シム)と音変化したらしい(角川新字源)。別に、

会意形声。「木」+音符「冘」。「冘」は、H字形のもので押しつけ「沈」めることを意味。頭で押しつける木製のまくらを意味したものhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E6%9E%95

会意兼形声文字です(木+冘)。「大地を覆う木」の象形と「人がまくらに頭を沈める」象形から、「(木製の)まくら」を意味する「枕」という漢字が成り立ちましたhttps://okjiten.jp/kanji2133.html

等々の解釈もある。共通するのは、「木製のまくら」とである。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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