2024年02月18日
都鳥
名にしおはばいざこととはむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと(古今和歌集)、
の、
詞詞に、
白き鳥のはしと足と赤き、川(隅田川)のほとりにあそびけり、京には見えぬ鳥なりければ、みな人見知らず、
とある。これは、『伊勢物語』九段の、
なほ行き行きて、武蔵の国と下つ総の国との中に、いと大きなる河あり。それを隅田河といふ。その河のほとりにむれゐて、思ひやれば、かぎりなく遠くも来にけるかな、と、わびあへるに、渡守、「はや舟に乗れ、日も暮れ暮れぬ」と言ふに、乗りて、渡らむとするに、みな人ものわびしくて、京に思ふ人なきにしもあらず。さるをりしも、白き鳥の、はしとあしと赤き、鴫の大きさなる、水の上に遊びつつ魚を食ふ。京には見えぬ鳥なれば、みな人見知らず。渡守に問ひければ、「これなむ都鳥」と言ふを聞きて、
名にし負はばいざこと問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと
とよめりければ、舟こぞりて泣きにけり。
とそのままで(石田穣二訳注『伊勢物語』)、物語の文章を直接取り込んだ印象がある(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)とある。この、
都鳥、
は、
チドリ科のミヤコドリ
とするものと、
カモメ科のユリカモメ
とするものとに説が分かれる(仝上)。
ミヤコドリ(都鳥、学名: Haematopus ostralegus)、
は、
チドリ目ミヤコドリ科、
に分類され(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%A4%E3%82%B3%E3%83%89%E3%83%AA)、
全長45cm。赤白黒の目立つ色彩のチドリの仲間、メスオス同色です。頭から背、翼の上面は黒色で腹は白色。飛行時には翼に太い白帯が出るほか、腰は白色。尾も白く、黒い帯があります。くちばしは赤色で、太く見えますが、正面から見ると上下くちばしとも横から押されたように薄い形。脚は桃赤色。群性があり、同種でばかり群をつくっていることが多い、
とある(https://www.suntory.co.jp/eco/birds/encyclopedia/detail/4617.html)が、かつては旅鳥または冬鳥としてふつうに見られたが、近年は非常に少ない(精選版日本国語大辞典)という。
ユリカモメ (百合鴎、学名:Chroicocephalus ridibundus)、
は、
チドリ目カモメ科、
に分類され(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A6%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%83%A2%E3%83%A1)、
全長40cm。冬鳥として、全国の河、河口、湖沼、海岸に至る水辺に来ます。赤いくちばしと足がきれいな小型のカモメの仲間で、水上に群がる姿は白い花が一面に咲いたようです、
とあり(https://www.suntory.co.jp/eco/birds/encyclopedia/detail/1506.html)、
カモメ類ではいちばん内陸にまで飛来する鳥で、海岸から数10キロも入った川岸の街や牧草地でエサをあさったりしています、
という(仝上)。大きさは、
カモメ・ウミネコより小さく、あしとくちばしが黄色でなく赤色なので区別できる。冬羽は背が淡い灰青色、耳羽が褐色を呈するほかは白色。夏羽では頭部全体が黒褐色になる、
とある(精選版日本国語大辞典)。
白き鳥の、はしとあしと赤き、鴫の大きさなる、水の上に遊びつつ魚を食ふ。京には見えぬ鳥、
とあるので、
ゆりかもめ、
と目されている。
冬鳥で、水辺に棲み、くちばしとあしが赤いという点で共通するが、体色、体形、食物等は異なる、
として(日本語源大辞典)、
ユリカモメ、
に照応し、順徳天皇が著した歌論書『八雲御抄』(1221)にも、
城鳥 すみだ川ならでも、ただ京ちかき河にも有、白とりのはしあかき也、
も、そう解している。なお、
現在の京都ではユリカモメは鴨川などで普通に見られるありふれた鳥であるが、鴨川に姿を見せるようになったのは、1974年のことである。それ以前は「京には見えぬ鳥」であった、
とある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A6%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%83%A2%E3%83%A1)。また、食性も、「ミヤコドリ」が、
カキなどの貝類を食べる、
のにたいして、「ユリカモメ」は、
近くに水草が生えている河川や池では昆虫や雑草の種子などを食べ、港では不要な捨てられた魚を食べ、時には人の食べ物や売られている魚を横取りすることも少なくない、
と異なる(仝上)。万葉集の、
船競ふ堀江の川の水際に来ゐつつ鳴くは美夜故杼里(ミヤコドリ)かも、
も、同様、
ユリカモメ、
と目されている。
ユリカモメ、
の由来は、
ユリの花のように美しいところからとする説、
イリエカモメ(入江鴎)」が転じたとする説、
「ユリ」は「のち・あと(後)」を意味する古語説、
等々があり(語源由来辞典)、
ミヤコドリ、
の由来は、
ミヤ小鳥の義、ミヤは鳴き声ミヤミヤから(松屋筆記)、
ミメアテヤカトリ(容貌貴鳥)の義(日本語原学=林甕臣)、
等々がある(日本語源大辞典)が、確定しがたい。「ミヤコドリ」の鳴き声は、
「ギィー」とか「ギュゥーィ」と聞こえる、
とある(https://www.suntory.co.jp/eco/birds/encyclopedia/detail/1506.html)ので、ちょっと違うようだ。
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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