みよしのの吉野の滝に浮かびいづる泡をか玉の消ゆと見つらむ(古今和歌集)、
は、
をか玉の消ゆ、
に、
をがたま、
を詠みこんでいる。
をがたま、
は、
古今三木(さんぼく)、
のひとつ、
古今伝授の秘説、
とされる、
モクレン科の常緑高木、
とある(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。
ヲガタマ、
は、多く、
ヲガタマノキ、
と呼ばれ(日本国語大辞典)、古今伝授では、
榊の異名、
とされる(岩波古語辞典)。で、
ヲガタマノキ、
は、
小賀玉榊(オガタマサカキ)、
という異名を持つ(動植物名よみかた辞典)。
古今伝授(こきんでんじゅ)の三種の木は、
をがたまの木、
めどにけづり花、
かはな草、
をいうが、他に、
をがたまの木、
さがりごけ、
かはな草、
とも、
相生(あいおい)の松、
めどにけづり花、
をがたまの木、
とも、
をがたまの木、
とし木、
めど木、
ともあり、諸説があって一定しない(精選版日本国語大辞典)。また、古今伝授で、解釈上の秘伝とされた、
三種の草、
というのもあり、異伝があるが、
めどにけずりばな、
かわなぐさ、
さがりごけ、
をさし、「さがりごけ」のかわりに「おがたまの木」を入れた三木とも関連深い(仝上)とある。
(オガタマノキの花 https://matsue-hana.com/hana/ogatamanoki.htmlより)
をがたまの木、
は、
小賀玉木、
黄心樹、
招霊木、
などと当て(広辞苑・日本大百科全書)、
モクレン科の常緑高木。日本南西部の暖地に自生。高さ18メートルに達する。樹皮は暗緑色で平滑。葉は長楕円形で、光沢ある革質。春、葉腋にやや紫色を帯びた白色の小花を開き、芳香がある。果実は集まって球果状。材は床柱または器具とし、葉は香料、
とある(広辞苑)。古来、
榊(サカキ)の代用、
とし(大辞泉)、神社の境内によく植えられている(世界大百科事典)。
招靈(ヲキタマ)の転、神霊を招禱(ヲキ)奉るものなれば云ふ(大言海)、
招霊(おきたま)が転じてオガタマの名になった(世界大百科事典)、
招魂(ヲギタマ)の義(和訓栞)、
等々が、その由来とされる。因みに、
大賀玉の木(おがたまのき)、
と呼ばれる正月の飾りは、邪気を払うために1月14日の夜に門前や門松に、
クルミ、
や、
ネムノキの枝、
を飾ったものである(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%82%AC%E3%82%BF%E3%83%9E%E3%83%8E%E3%82%AD)。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95