2024年03月04日

きりぎりす


秋はきぬ今や籬(まがき)のきりぎりす夜な夜な鳴かむ風の寒さに(古今和歌集)

とある、

きりぎりす、

は、

こおろぎの古称、

とある(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。

きりぎりす、

は、

蟋蟀、
螽斯、

と当て、

コオロギの古称、

であるが、

こおろぎ(こほろぎ)、

は、

蟋蟀、

と当て、

暮月夜 心毛思努爾 白露乃 置此庭爾 蟋蟀鳴毛(夕月夜(ゆふづくよ)心もしのに白露の置くこの庭に蟋蟀(こほろぎ)鳴くも)(万葉集)、

と、古くは、

秋鳴く虫の総称、

で(広辞苑・精選版日本国語大辞典・日本語源大辞典)、

マツムシ・スズムシ・キリギリス、コオロギ、

等々すべてをいい(岩波古語辞典)、中国でも、

秋鳴く虫、

を、

蟋蟀(しつしゆつ)、

と総称した(仝上)が、

蟋蟀在堂、歳聿其莫、今我不樂、日月其除(蟋蟀、堂に在り歳聿(ここ)に其れ(く)れぬ 今我樂しまずんば 日其れ除(さ)らん)(詩経・唐風)

とある場合、

こおろぎ、

を指すともある(字通)。

コオロギ マダラズ.jpg

(コオロギの一種、マダラスズ デジタル大辞泉より)


エンマコオロギ.jpg


ただ、秋鳴く虫の中で、特に、

こおろぎ、

を指す場合は、

きりぎりす、

といった。

むざんやな甲(かぶと)の下のきりぎりす(芭蕉)、

も、

こおろぎ、

である。古くは、

促織(はたおりめ)蜻(コホロギ)蟋蟀(きりぎりす)……古にこほろぎといひ、今はいとどといふ者也(東雅)、

と、

いとど、

あるいは、

ちちろむしよる吹風やさむからしふくればいとどよはるこゑかな ちちろむしとはきりぎりすを云也(古今打聞(「1438頃)」)、

と、

ちちろむし、

ともいった(精選版日本国語大辞典)。和名類聚抄(平安中期)に、

蟋蟀、一名蛬(こおろぎ)、木里木里須、

天治字鏡(平安中期)に、

蟋蟀、支利支利須、

とある。中世になって、

こうろぎ、

という表記も見られるようになる(精選版日本国語大辞典)ようである。

きりぎりす(蟋蟀)、

の名の由来は、

鳴き声に基づく語か。スは鳥や虫など飛ぶものにいう語(広辞苑)、
鳴声から(言元梯・名言通・柴門和語類集・音幻論=幸田露伴)、
キリキリは鳴く声の聞きしなりと云ふ、スは、蟲、鳥につくる語、ほととぎす、みみず(大言海)、

と、擬声語由来というところのようである。ちなみに、

こおろぎ、

も、

古く「古保呂岐」と書かれ、黒い木を意味したもののようで、コオロギの黒褐色の体色と関連させてその名となった(日本大百科全書)、

とする説もあるが、

コホロとなく虫の意(箋注和名抄・日本古語大辞典=松岡静雄)、

と、擬声語のようである。

コオロギ(蟋蟀、蛬、蛩、蛼)、

は、

昆虫綱バッタ目(直翅目)キリギリス亜目(剣弁亜目)コオロギ上科またはコオロギ科またはコオロギ亜科に属する昆虫の総称、

であり、別名には、

しっそつ・しっしつ・しっしゅつ、

があり、日本ではコオロギ科のうちコオロギ亜科に属する、

エンマコオロギ、ミツカドコオロギ、オカメコオロギ、ツヅレサセコオロギ、

等々が代表的な種類となるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%82%AA%E3%83%AD%E3%82%AE

キリギリス.jpg


キリギリス(螽蟖、螽斯、蛬)、

は、

バッタ目キリギリス科キリギリス属、

に分類される昆虫のうち、日本の本州から九州地方に分布する種群、

ヒガシキリギリス、
ニシキリギリス、

の総称であるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%AA%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B9

こおろぎ、

は、

直翅目コオロギ上科Grylloideaに属する昆虫を呼ぶときに用いる通俗的な呼名、

で、ケラの仲間になる。コオロギ類は、キリギリス類やバッタ類とともに直翅目を構成する主要な群で、とくにキリギリス類に類縁が近い、

が、

キリギリス類は体型が縦に平たく、主として樹上生活に適応しているが、コオロギ類は、エンマコオロギで代表されるように、体型が背腹に平たくなり、地表生活に適応している。色彩も地表面の色に近い、褐色ないし黒褐色系の色彩が主流を占めている、

とある(世界大百科事典)。

「蟋」.gif

(「蟋」 https://kakijun.jp/page/E5A7200.htmlより)

「蟋」(漢音シツ、呉音シチ)は、

形声。「虫+音符悉(シツ)」羽をさっさっとさせる音をまねした擬声語、

とある(漢字源)。

「蟀」.gif

(「蟀」 https://kakijun.jp/page/E5A9200.htmlより)

「蟀」(シュツ)は、

「蟋蟀」(シッシュツ)で、

こおろぎ、または、キリギリスを指す(漢字源・字源)。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:27| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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