2024年04月14日

がてに


あしひきの山ほとときすわがごとや君に戀ひつついねがてにする(古今和歌集)、

の、

がてに、

は、

できずに、

とある(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。また、

あは雪のたまればかてにくだけつつわがもの思ひのしげきころかな(古今和歌集)、

の、

かてに、

は、

動詞「克つ」からできた連語。「こらえかねて」の意。他の動詞につくと、

桜散る花のところは春ながら雪ぞ降りつつ消えがてにする(古今和歌集)、

と、

「がてに」の形になる、

とある(仝上)。

がてに、

は、

かてに、

の濁音化、

で(広辞苑)。のちに、

ガテは難シの語幹と混同され、ニは格助詞のように意識され、

動詞に付いて、

わが宿に咲ける藤波立ち返り過ぎがてにのみ人の見るらむ(古今和歌集)、

と、

…しがたく、

の意を表すようになる。

かてに、

は、

勝てに、
克てに、

と当て(広辞苑・岩波古語辞典)、動詞の連用形に付き、

……することができる、
堪える、

意の、

下二段動詞「かつ」の未然形に打ち消しの助動詞「ず」の連用形の古形「に」の付いたもの、

で、上記の、

あわゆきのたまればかてにくだけつつわが物思ひのしげきころかな(古今和歌集)、

と、

こらえられず、
堪えかねて、

の意で使われた(岩波古語辞典・明解古語辞典)が、のちに、

語頭が濁音化し、一語と考えられ、ガテ(難)ニと意識された、

もので(大辞泉・学研全訳古語辞典)、

平安中期ごろ消滅した、

とある(岩波古語辞典)。そのため、

がてに、

は、

難てに、

と当て、

「かてに」の語源意識が薄れ、「難 (がた) し」の語幹と混同され、それに格助詞「に」の付いたものと意識されるようになったもの、

で、

春されば吾家(わぎへ)の里の川門(かはと)には鮎子(あゆこ)さばしる君待ちがてに(万葉集)、

と、

すでに上代からその例がみられる(大辞泉)。ちなみに、

かつ(克・勝)、

は、

じっとこらえて相手に負けない、

意で、

…するに耐える、
…することができる、

の意味に使い、転じて、

物事を成し得る、

意となり、

大坂に継ぎ登れる伊辞務邏(イシムラ)を手越(たごし)に越さば越しかてむかも(日本書紀)、

と、

他の動詞の連用形に付く(岩波古語辞典)。多く、

未然形には打消の助動詞「ず」、終止形には打消の意志・推量を表わす助動詞「ましじ」が接続する、

とある(精選版日本国語大辞典)。

「難」.gif


「難」(漢音ダン、呉音ナン)は、

会意。「動物を火で焼き、かわかしてこちこちにするさま+隹(とり)」。鳥を火であぶることをあらわし、もと燃(ネン もやす)と同系のことば。やけただれるひあぶりのようにつらいことの意から、転じて、つらい災害ややりづらい事などをあらわす、

とあり(漢字源)、別に、

会意文字です。「火などの災いにあって祈るみこ」の象形と「尾の短いずんぐりした小鳥」の象形から、災いにでくわして、鳥をそなえて祈る事を意味し、そこから、「災い」を意味する「難」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji1026.htmlが、

会意文字として解釈する説があるが、根拠のない憶測に基づく誤った分析である、

とありhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E9%9B%A3

形声。「隹」(鳥)+音符「𦰩 /*NAN/」。鳥の一種を指す。のち仮借して「むずかしい」を意味する漢語{難 /*nan/}に用いる、

とも(仝上)、また、

もと、𪄿と書き、形声。意符鳥(とり)と、音符堇(キン)→(ダン)(は変わった形)とから成り、鳥の名を表す。艱(カン)に通じ、借りて「かたい」意に用いる。旧字は、意符が隹に変わったもの、

ともある(角川新字源)。

「克」.gif


「克」 甲骨文字・殷.png

(「克」 甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%85%8Bより)

「克」(コク)は、

会意。上部は重い頭、またはかぶとで、下に人体の形を添えたもので、人が重さに耐えてがんばるさまを示す。がんばって耐え抜く意から、勝つ意となる。緊張してがんばる意を含む、

とあり(漢字源)、別に、

象形文字です。「重いかぶとを身につけた人」の象形から、「重さに耐える」、「打ち勝つ」を意味する「克」という漢字が成り立ちました、

ともhttps://okjiten.jp/kanji1497.html)

象形。人が甲冑(かつちゆう)を着けた形にかたどり、甲冑の重さに耐える、ひいて「かつ」意を表す、

とも(角川新字源)あるが、

不詳。複数の説が存在するが定説はない、

とする(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%85%8B)

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
高田祐彦訳注『新版古今和歌集』(角川ソフィア文庫Kindle版)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:45| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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