丹青不知老将至(丹青 老いの将(まさ)に至らんとするを知らず)
富貴於我如浮雲(富貴は我に於て浮雲(ふうん)の如し)(杜甫・丹青引贈曹将軍覇)
の、
丹青、
は、
赤と青、
で、
絵画をいう(前野直彬注解『唐詩選』)とある。
丹青(たんせい)、
は、
丹砂と青雘(せいわく)、すなわち赤の絵具の材料になる石と青の絵具の材料になる土、
を指し、そこから、また、
赤い色と青い色、
をも意味する(精選版日本国語大辞典)。
丹碧、
ともいう(仝上)。転じて、
雖竹帛所載、丹青所畫、何以過子卿(漢書・蘇武傳)、
と、
絵具、
絵具の色、
で、
絵具を塗ること、
彩色、
の意で使い(仝上)、さらに、
毎疑丹青過實、今観此景、乃知良工苦心(客越志)、
と、
彩色畫、
の意でも使う(字源)。日葡辞書(1603~04)には、
タンゼイ、エヲカク、
とあり(広辞苑)、
たんぜい、
とも訓み、
而習丹青之業以来、不致朝夕之恪勤(漢書・蘇武伝)、
と、
絵画、
また、
絵を描くこと、
の意でも使い(精選版日本国語大辞典)、当然ながら、
見嵩大師所持梵才三蔵真影。三蔵自作偈。小師徳嵩写予真乞讚。以偈答之。爾命丹青。絵予之相(「参天台五台山記(1072‐73)」)、
と、
絵を描く人、
画家、
意でも使う(仝上)。
まごころ、
不変のもの、
簡札、
歴史の書、
の意もある(字通)とあり、宋の文天祥「正気の歌」では、
天地有正気
雑然賦流形
下則為河獄
上則為日星
於人為浩然
沛乎塞蒼冥
皇路当清夷
含和吐明庭
時窮節乃見
一一垂丹青、
と、
歴史の書、
の意で使っている。
(「丹」 甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E4%B8%B9より)
「丹」(タン)は、
会意文字。土中に掘った井型のわくの中から、赤い丹砂が現れ出るさまを示すもので、あかい物があらわれ出ることをあらわす。旃(セン 赤い旗)の音符となる、
とある(漢字源)が、
会意。「井」+「丶」、木枠で囲んだ穴(丹井)から赤い丹砂が掘り出される様、
と(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E4%B8%B9)、会意文字とも、
象形。採掘坑からほりだされた丹砂(朱色の鉱物)の形にかたどる。丹砂、ひいて、あかい色や顔料の意を表す、
とも(角川新字源)、
象形文字です。「丹砂(水銀と硫黄が化合した赤色の鉱石)を採掘する井戸」の象形から、「丹砂」、「赤色の土」、「濃い赤色」を意味する「丹」という漢字が成り立ちました、
と(https://okjiten.jp/kanji1213.html)、象形文字ともある。
参考文献;
冨谷至『中国義士伝』(中公新書)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前野直彬注解『唐詩選』(岩波文庫)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95