2024年04月25日

うけ


伊勢の海に釣りする海人(あま)のうけなれや心一つを定めかねつる(古今和歌集)、

の、

うけ、

は、

釣りをするときの浮子、

とある(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。

うけ、

は、

食、

と当てると、

保食神、此云宇気母知能加微(うけもちの神)(日本書紀)、

と、

食物、

の意(岩波古語辞典)、

筌、

と当てると、

うえ(へ)、

ともいい、

魚をとる道具、

で、

竹を筒状または底のない徳利状に編んだもの、

をいい、

槽、

と当てると(ケは笥の意)、

天の石屋戸(いはやと)にうけ伏せて踏みとどろこし(古事記)、

と、

たらいのような容器、

で(デジタル大辞泉)、

穀物を入れておくいれもの、祭儀の時、これを伏せてたたき、霊魂(たま)に活力を与える、

とあり(岩波古語辞典)、

うけを衝くは神遊びの義なり(江家次第)、

とある。

神遊

は、

神々が集まって楽を奏し、歌舞すること、

が、転じて、

神前で歌舞を奏して神の心を慰めること。また、その歌舞、

の意となる(精選版日本国語大辞典)。

神楽(かぐら)、

と同じ意味である(仝上)。

有卦、

と当てると、

陰陽道(おんようどう・おんみょうどう)で、人の生年を干支に配して、五行相生相剋の理によって定めた、吉事が続くという年回り、次の5年は無卦(むけ)の凶年が続く、

という意味になる(岩波古語辞典・デジタル大辞泉)。

ここでの、

うけ、

は、

浮、
浮子、
泛子、

と当てる、

住吉(すみのえ)の津守網引(あびき)の浮(うけ)の緒の浮かれか行かむ恋ひつつあらずは(万葉集)、

の、

うき(浮)、

つまり、

釣糸や(曳)網につけて波のまにまにうかしてある木片、

をいい(仝上・精選版日本国語大辞典)、

泛子(うき)の古語、

とあり(大言海)、

ちいさきひょうたん浮きて流れもあえず見えけるを、これぞと取あげしに、刀のうけに付て酒もり半に沈め置しと見えたり(浮世草子「武家義理物語(1688)」)、

と、「浮沓(うきぐつ)」のような、

浮かばせるための道具、

をもいう(岩波古語辞典・精選版日本国語大辞典)。この、

うけ、

は、四段活用の動詞、

浮く、

の他動詞形、

浮く、

の名詞形になる。

うく」で触れたように、

物が空中・水中・水面にあって、底につかず、不安定な状態でいる意。「心が浮く」とは、平安時代には不安な感じを伴い、室町時代以降には陽気な感じを表した、

とあり(岩波古語辞典)、その語源は、

本来二音節語と考えます。「水面または空中にある」意です。ウカレル(浮か+レル)は、他の刺激により心理的に浮いた状態になる意です。ウカブは「浮カ+ブ(継続)」で、浮いた状態になることを表します。ウカベルはもその一段化で、いずれも同源です(日本語源広辞典)、
ウはウヘ(上)の意(日本釈名・日本古語大辞典=松岡静雄)、
ウヘク(上来)の義(日本語原学=林甕臣)、
ウは海、または上か。クはかろくの上略か(和句解)、

等々とあるが、「うえ(上)」は、古形は、

ウハ、

である。

「下(した)」「裏(うら)」の対。稀に「下(しも)」の対。最も古くは、表面の意。そこから、物の上方・髙い位置・貴人の意へと展開。また、すでに存在するものの表面に何かが加わる意から、累加・繋がり・成行き等の意を示すようになった

とある(岩波古語辞典)。

ウハ→ウヘ→ウエ、

の転訛である。ならば、

ウハ→ウク、

もありそうな気がするが、音韻的には無理らしい。

「泛」.gif


「泛」(①漢音ハン・呉音ボン、②漢音ホウ・呉音フウ)は、

会意兼形声。乏は「止(あし)+/印」からなり、足の進行を/印でとめたさま。わくをかぶせられて進めないこと。泛は、「水+音符乏(ボウ)」で、かぶさるように水面に浮くこと、

とある(漢字源)。「与客泛舟」(蘇武)のように「うかぶ」「うかべる」、「泛論(=汎論)」のように、「おおう」「あまねし」の意は、①の発音、「泛駕之馬(ほうがのうま 暴れ馬)」というように、「覆(くつがえ)す」の意の場合は、②の発音とある(仝上)。別に、

形声、「水」+ 音符「乏」、

と、形声文字とする説(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E6%B3%9Bもある。

「浮」.gif


「浮」(慣用フ、呉音ブ、漢音フウ)の字は、「うく」で触れたように、

会意兼形声。孚は「爪(手を伏せた形)+子」の会意文字で、親鳥がたまごをつつむように手でおおうこと。浮は「水+音符孚」で、上から水を抱えるように伏せて、うくこと、

とある(漢字源)。沈の対である。我が国でのみの使い方は、「浮いた考え」とか「金が浮く」とか「浮いた気持ち」とか「考えが浮かぶ」とか「歯が浮く」というように、本来の「浮く」の意味に準えたような、「うかぶ」「うかれる」「あまりがでる」等の意味での使い方は、漢字にはない。しかし、

浮生、
浮言、
浮薄、

といった「とりとめない」意はあるので、意味の外延を限界以上に拡げたとは言える。別に、

会意兼形声文字です(氵(水)+孚)。「流れる水」の象形と「乳児を抱きかかえる」象形(「軽い、包む」の意味)から、「軽いもの」、「うく」を意味する「浮」という漢字が成り立ちました、

ともある(https://okjiten.jp/kanji1091.html)

参考文献;
高田祐彦訳注『新版古今和歌集』(角川ソフィア文庫Kindle版)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:53| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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