舊俗疲庸主(舊俗 庸主に疲れ)
群雄問獨夫(群雄 獨夫に問う)
讖歸龍鳳質(讖(しん)は龍鳳の質に帰し)
威定虎狼都(威(い)は虎狼の都を定めたり)(杜甫・行次昭陵)
の、
讖、
は、
予言、
龍鳳質、
の、
龍鳳、
は、
天子の象徴、
で、
天子になるべき素質、
の意で、
唐の太宗、
をさす(前野直彬注解『唐詩選』)とある。
太宗がまだ若い頃、その姿を見た人が「龍鳳の姿」と評した故事を踏まえる、
とある(仝上)。
獨夫、
は、
暴虐無道の君主、
の意、
帝位にあっても、民心はすべて彼を離れ、完全な孤独の状態にあるから、こういう、
とあり、「書経」泰誓篇に、
獨夫受(紂の名)、
とあるのにもとづき、もと、
殷の紂王、
を指した(仝上)とある。「荀子」議兵には、
湯武の~桀(けつ)・紂(ちう)を誅すること、獨夫を誅するが若(ごと)し。故に泰誓に獨夫紂と曰へるは、此れを之れ謂ふなり、
とある(字通)。ちなみに、桀(けつ)は、
夏の最後の帝、
で、
殷の湯、
に滅ぼされ(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A1%80)、
紂王(帝辛)、
は、
殷の最後の王、
で、
周の武王、
に滅ぼされ(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%9D%E8%BE%9B)、
夏の桀、
殷の帝辛(紂王)、
周の厲王、
は、暴君の代名詞となった(仝上)とある。
獨夫、
は、
どくふ、
と訓ますが、
どっぷ、
とも訓ませる(精選版日本国語大辞典)。
(紂王(絵本三国妖婦伝より) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%9D%E8%BE%9Bより)
獨夫、
は、文字通り、
高祖は、領地とては一尺の地も持せず、独夫の牢人なりしかども(「集義和書(1676頃)」)、
と、
一人身の男、独身の男(字源・広辞苑)、
ただの一人の男(字通)、
独身のおとこ、ひとり身の男。また、官位や財産などのない、単なる市井の男、
といった意味(精選版日本国語大辞典)になるが、
六軍徘徊、群兇益振。是則孟津再駕之役、独夫(トッフ)所亡也。城濮三舎之謀、侍臣攸敗也(太平記)、
と、
悪政を行なって、国民から見はなされた君主、
を指し、
獨夫受(紂の名)、
とあるように、
紂王、
が象徴のようにされている。
(「獨」(独) https://kakijun.jp/page/E0D5200.htmlより)
(「獨」 中国最古の字書『説文解字』(後漢・許慎) https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%8D%A8より)
「獨」(漢音トク、呉音ドク)は、
会意兼形声。蜀(ショク)は、目が大きくて、桑の葉にくっついて離れない虫を描いた象形文字。ひつじは群れをなし、犬は一匹で持ち場を守る。獨は「犬+音符蜀」で、犬や桑虫のように、一定の所にくっついて動かず、他に迎合しないこと、
とある(漢字源)。別に、
会意兼形声文字です(犭+虫(蜀))。「犬」の象形と「大きな目を持ち桑(植物)について群がる虫(いもむし)」の象形(「不快ないもむし」の意味)から、争う事が好きな不快な犬を意味し、それが転じて(派生して・新しい意味が分かれ出て)、「ひとり」を意味する「独」という漢字が成り立ちました、
ともある(https://okjiten.jp/kanji827.html)が、
形声。「犬」+音符「蜀 /*TOK/」。「ひとつ」「他と異なる」を意味する漢語{獨 /*dook/}を表す字、
も(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%8D%A8)、
形声。犬と、音符蜀(シヨク)→(トク)とから成る。犬をたたかわせる意を表す。借りて「ひとり」の意に用いる。教育用漢字は俗字による、
も(角川新字源)、形声文字とする。
参考文献;
前野直彬注解『唐詩選』(岩波文庫)
簡野道明『字源』(角川書店)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
ラベル:獨夫(どくふ)