2024年04月26日

獨夫(どくふ)


舊俗疲庸主(舊俗 庸主に疲れ)
群雄問獨夫(群雄 獨夫に問う)
讖歸龍鳳質(讖(しん)は龍鳳の質に帰し)
威定虎狼都(威(い)は虎狼の都を定めたり)(杜甫・行次昭陵)

の、

讖、

は、

予言、

龍鳳質、

の、

龍鳳、

は、

天子の象徴、

で、

天子になるべき素質、

の意で、

唐の太宗、

をさす(前野直彬注解『唐詩選』)とある。

太宗がまだ若い頃、その姿を見た人が「龍鳳の姿」と評した故事を踏まえる、

とある(仝上)。

獨夫、

は、

暴虐無道の君主、

の意、

帝位にあっても、民心はすべて彼を離れ、完全な孤独の状態にあるから、こういう、

とあり、「書経」泰誓篇に、

獨夫受(紂の名)、

とあるのにもとづき、もと、

殷の紂王、

を指した(仝上)とある。「荀子」議兵には、

湯武の~桀(けつ)・紂(ちう)を誅すること、獨夫を誅するが若(ごと)し。故に泰誓に獨夫紂と曰へるは、此れを之れ謂ふなり、

とある(字通)。ちなみに、桀(けつ)は、

夏の最後の帝、

で、

殷の湯、

に滅ぼされhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A1%80

紂王(帝辛)、

は、

殷の最後の王、

で、

周の武王、

に滅ぼされhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%9D%E8%BE%9B

夏の桀、
殷の帝辛(紂王)、
周の厲王、

は、暴君の代名詞となった(仝上)とある。

獨夫、

は、

どくふ、

と訓ますが、

どっぷ、

とも訓ませる(精選版日本国語大辞典)。

桀.png



紂王.jpg

(紂王(絵本三国妖婦伝より) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%9D%E8%BE%9Bより)

獨夫、

は、文字通り、

高祖は、領地とては一尺の地も持せず、独夫の牢人なりしかども(「集義和書(1676頃)」)、

と、

一人身の男、独身の男(字源・広辞苑)、
ただの一人の男(字通)、
独身のおとこ、ひとり身の男。また、官位や財産などのない、単なる市井の男、

といった意味(精選版日本国語大辞典)になるが、

六軍徘徊、群兇益振。是則孟津再駕之役、独夫(トッフ)所亡也。城濮三舎之謀、侍臣攸敗也(太平記)、

と、

悪政を行なって、国民から見はなされた君主、

を指し、

獨夫受(紂の名)、

とあるように、

紂王、

が象徴のようにされている。

「獨」.gif

(「獨」(独) https://kakijun.jp/page/E0D5200.htmlより)

「獨」 『説文解字』.png

(「獨」 中国最古の字書『説文解字』(後漢・許慎)  https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%8D%A8より)

「獨」(漢音トク、呉音ドク)は、

会意兼形声。蜀(ショク)は、目が大きくて、桑の葉にくっついて離れない虫を描いた象形文字。ひつじは群れをなし、犬は一匹で持ち場を守る。獨は「犬+音符蜀」で、犬や桑虫のように、一定の所にくっついて動かず、他に迎合しないこと、

とある(漢字源)。別に、

会意兼形声文字です(犭+虫(蜀))。「犬」の象形と「大きな目を持ち桑(植物)について群がる虫(いもむし)」の象形(「不快ないもむし」の意味)から、争う事が好きな不快な犬を意味し、それが転じて(派生して・新しい意味が分かれ出て)、「ひとり」を意味する「独」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji827.htmlが、

形声。「犬」+音符「蜀 /*TOK/」。「ひとつ」「他と異なる」を意味する漢語{獨 /*dook/}を表す字、

https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%8D%A8

形声。犬と、音符蜀(シヨク)→(トク)とから成る。犬をたたかわせる意を表す。借りて「ひとり」の意に用いる。教育用漢字は俗字による、

も(角川新字源)、形声文字とする。

参考文献;
前野直彬注解『唐詩選』(岩波文庫)
簡野道明『字源』(角川書店)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:44| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください