2024年05月02日

入れ紐


よそにして恋ふればくるし入れ紐の同じ心にいざ結びてむ(古今和歌集)、

の、

入れ紐、

は、

玉状に結んだ紐を、もう一本の輪状にした紐に通して結ぶもの。袍、直衣、狩衣などに用いた。しっかりと結びつけられることの喩え、

とある(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。

入れ紐の、

は、

「同じ」または「結ぶ」にかかる枕詞、

である(広辞苑)。

入れ紐、

は、

袍(ほう)・直衣(のうし)・狩衣(かりぎぬ)などの頚上(くびかみ)の紐の、一方を結び玉にし(雄紐)、他方を輪にして(雌紐)、さしいれてかけておくもの(広辞苑)、
「直衣(なほし)」や「狩衣(かりぎぬ)」「袍(はう)」などの首回りや裾(すそ)についている紐。紐の先が輪になっている側(女紐(めひも))に、結び玉になっている側(男紐(おひも))をかけてとめる(学研全訳古語辞典)、
狩衣(かりぎぬ)、直衣(のうし)、袍(ほう)など、装束の盤領(まるえり)の頸紙(くびかみ)の開閉に用いる紐。結び玉にした雄紐を輪形の雌紐に差し入れて、留める(精選版日本国語大辞典)、
狩衣、直衣、袍などの頚圍(クビカミ)、又裾などに、一方に付きたる、雌紐とて、輪にしたるに、一方に付きたる、雄紐とて、結び玉にしたるを、其輪に差し入れて懸けおくもの(大言海)、
結び玉にしたる紐(雄紐)を、輪にしたる紐(雌紐)にさし入れて、離れないようにしたもの。狩衣・直衣・袍など、装束の首・裾の部分についている紐にいう(岩波古語辞典)、

等々とある。

うへのきぬ

で触れたように、

袍(ほう)、

は、

束帯や衣冠などの時に着る盤領(まるえり)の上衣、

で、

束帯や衣冠に用いる位階相当の色による、

位袍、

と、位色によらない、

雑袍、

とがあり、束帯の位袍には、

文官の有襴縫腋(ほうえき 衣服の両わきの下を縫い合わせておくこと)、



武官の無襴闕腋(けってき)、

の二種がある(精選版日本国語大辞典)。

縫腋の袍 有職故実図典より.jpg

(縫腋の袍 有職故実図典より)

前身(まえみ)と後身(うしろみ)との間の腋下を縫い合わせた袍、

である、

縫腋袍(ほうえきのほう)、

の、

後身は二幅、前身は一幅半ずつ、右を下前(したまえ)、左を上前(うわまえ)と称して、内側の半幅を裾開きに斜めに仕立てて登(のぼり)と呼んでいる。近世のいわゆる衽(おくみ)である。中央は、丸く刳り、それに沿って下前の端から上前の端まで襟を立てて首上(くびかみ)とし、(中略)首上の上前の端と、肩通りとに紐をつけて入れ紐といい、前者は丸く蜻蛉(とんぼ)結びとし、後者は羂(わな)として掛け解しに用い、それぞれ受緒(うけお)と蜻蛉と呼ぶ。この形式を一般に盤領(まるえり)といっている、

とある(有職故実図典)。

蜻蛉結.bmp

(「蜻蛉結」 精選版日本国語大辞典より)

蜻蛉(とんぼ)結び、

は、

トンボが羽を広げた形に結ぶ、

紐の結び方をいう。

袍、

の語の初見は養老(ようろう)の衣服令(りょう)にみられ、

イラン系唐風の衣、

で、詰め襟式の、

盤領(あげくび)、

で、奈良時代から平安時代初期にかけての袍は、

生地(きじ)の幅が広かったため、身頃(みごろ)が一幅(ひとの 鯨尺八寸(約三〇センチメートル)ないし一尺(約三八センチメートル)のはば)と二幅(ふたの)のもの、袖(そで)が一幅と、それに幅の狭いものを加えた裄(ゆき)の長いものがみられる、

とあり(日本大百科全書)、平安時代中期以後、服装の和様化とともに、

袍の身頃は二幅でゆったりとし身丈が長く、袖は、奥袖とそれよりやや幅の狭い端袖(はたそで 袖幅を広くするため、袖口にもう一幅ひとのまたは半幅つけ加えた袖)を加えた二幅仕立て、袖丈が長い広袖形式となった、

とある(仝上)。

「袍」については、「したうづ」、「襖(あを)」で、「狩衣」については「水干」、「直衣」は「衣冠束帯」で触れた。

「紐」.gif

(「紐」 https://kakijun.jp/page/himo200.htmlより)

「紐」(慣用チュウ、漢音ジュウ、呉音ニュウ)は、「下紐」で触れたように、

会意兼形声。「糸+音符丑(チウ ねじる、ひねって曲げる)」で、柔らかい寝(い)を寝(ぬ)含む、

とあり(漢字源)、

会意兼形声文字です(糸+丑)。「より糸」の象形(「糸」の意味)と「手指に堅く力を入れてひねる」象形(「ひねる」の意味)から、ひねって堅く結ぶ「ひも」を意味する「紐」という漢字が成り立ちました、

ともある(https://okjiten.jp/kanji2650.html)が、

形声。糸と、音符丑(チウ)→(ヂウ)とから成る(角川新字源)、

と、形声文字とする説もある。

参考文献;
高田祐彦訳注『新版古今和歌集』(角川ソフィア文庫Kindle版)
鈴木敬三『有職故実図典』(吉川弘文館)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:43| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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