2024年05月23日
ふりづ(振出)
紅のふり出でつつ泣く涙には袂のみこそ色まさりけれ(古今和歌集)、
の、
ふり出づ、
は、
紅に染色するとき、よく染まるように水の中で衣を振る、声を振り絞る意の、「ふりいづ」とかける、
とあり(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)、
思い出づるときはの山のほととぎす韓紅(からくれなゐ)のふり出(で)てぞ鳴く(仝上)、
の、
ふり出(づ)、
は、
ふりいづの約、
であり(岩波古語辞典)、
紅に染色するとき、水の中でよく染まるように衣を振る、
意だが、その、
ふりいづ、
と、聲を振り絞る意の、
ふりいづ、
の掛詞(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)とある。
ふりいづ、
は、
振り出づ、
と当て、
雪かきたれて降る。かかる空にふりいでむも人目いとほしう(源氏物語)、
と、文字通り、
振り切って出かける、
意だが、それをメタファに、
鈴虫のふりいでたるほど、はなやかにをかし(源氏物語)、
と、
声を高く張り上げる、
意でも使い、さらに、冒頭の、
紅のふり出でつつ泣く涙には袂のみこそ色まさりけれ(古今和歌集)、
と、
紅を水に振り出して染める、
意でも使うが、和歌では、多く、
声を高く張り上げる、
意に掛けて使う(岩波古語辞典・学研全訳古語辞典)。
「振」(シン)は、
会意兼形声。辰(シン)は、蜃(シン はまぐり)の原字で、貝が開いてぴらぴらとふるう舌の出たさまを描いた象形文字。振は「手+音符辰」で、貝のように、小きざみにふるえ動くこと、
とあり(漢字源)、同趣旨で、
会意兼形声文字です(扌(手)+辰)。「5本の指のある手」の象形と「二枚貝が殻から足を出している」象形(「ふるえる」の意味)から、「ふるう」を意味する「振」という漢字が成り立ちました、
ともある(https://okjiten.jp/kanji1390.html)が、
形声。「手」+音符「辰 /*TƏN/」。「ふる」「ふるう」を意味する漢語{振 /*təns/}を表す字、
とも(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E6%8C%AF)、
形声。手と、音符辰(シン)とから成る。すくう、たすける意を表す。もと、賑(シン)の本字。ひいて、さかんにする意に用いる、
とも(角川新字源)ある。
参考文献;
高田祐彦訳注『新版古今和歌集』(角川ソフィア文庫Kindle版)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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