2024年06月26日
石尤風
知有前期在(前期の在(あ)ること有(あ)るを知れども)
難分此夜中(分(わか)ち難(がた)し 此の夜の中(うち))
無將故人酒(故人(こじん)の酒を将(もっ)て)
不及石尤風(石尤(せきゆう)の風に及ばずとすること無(な)かれ)(司空曙・別盧秦卿)
の、
前期、
は、
将来の再会の期、
前途の期限、つまり旅程、
とするなどの説があるが、ここでは、前者が正しい(前野直彬注解『唐詩選』)とある。梁の沈約(しんやく)の「范安城に別る」という詩に、
生平少年の日
手を別(わか)つに前期を易(やす)しとせり
とあるのを踏まえる(仝上)とある。
石尤風(セキイウフウ)、
は、
旅人の行く手をはばむ向かい風、
を言う。伝説に因ると、南朝、宋の武帝の「丁都護歌」に、
願わくは石尤の風と作(な)り、
四面 行旅を断たん、
とある(仝上)。伝説に因ると、
石氏の女、嫁して尤氏の婦となる。尤遠く出でて歸らず、妻之を憶ひ、病みて死するに臨み、歎じて曰く、吾其の行を阻むる能はざりしを恨む、今より凡そ商売の遠行する者あれば、吾常に大風を起こし、天下の婦人の為に、之を阻むべしと、自後商旅船を発して、打頭の風に値へば、曰く、これ、石尤風なり、
とある(江湖紀聞)。
打頭(だとう)、
は、
常時低頭誦軽史
忽然欠伸屋打頭(蘓武)、
と、
頭を打つ、
意だが、
打頭風(だとうふう)、
は、
船怕打頭風(元稹)、
と、
逆風、
の意である(字源)。これを止めるには、
ある時、呪(まじな)いを行うものが言った。
「百銭くれれば、この風を追い返してみせよう」
ある人が百銭を与えて呪いをさせてみると、はたして風が止んだ。
後に聞いたところによると、
「石の奥様のために尤郎を呼び戻しますので、どうか舟を進ませて下さい」
と紙に書いて水に沈めれば、風が止むとのことであった。
とある(https://huameizi.com/text02/feng.htm)。
「尤」(漢音ユウ、呉音ウ)は、
会意文字。「手のひじ+-印」で、手のある部分に、いぼやおできなど、思わぬ事故の生じたことを示す。災いや失敗がおこること。肬(ユウ こぶ)、疣(ユウ こぶ)の原字。特異の意から転じて、とりわけ目立つ意となる、
とあり(漢字源)、「君無尤焉(君に尤無し)」と、咎、失敗の意、「不尤人(人を尤めず)」と、咎める意、「汝時尤小(汝時に尤も小なり)」と、もっともの意、「尤者(ゆうなるもの)」と、すぐれている意で使う(仝上)。別に、
象形。手の指にいぼができている形にかたどる。いぼの意を表す。「肬(イウ)」の原字。ひいて、突出している意に用いる、
と象形文字とする説(角川新字源)、
指事文字です。「手の先端に一線を付けてた文字」から、「異変(異常な現象)としてとがめる」を意味する「尤」という漢字が成り立ちました、
と指示文字とする説(https://okjiten.jp/kanji2423.html)に分かれる。
参考文献;
前野直彬注解『唐詩選』(岩波文庫)
簡野道明『字源』(角川書店)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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