2024年07月24日
三壽
一月主人笑幾回(一月(いちげつ)に主人 笑うこと幾回(いくかい)ぞ)
相逢相値且銜杯(相逢い相値(あ)うて且(しばら)く杯(はい)を銜(ふく)まん)
眼看春色如流水(眼(ま)のあたり看(み)る 春色(しゅんしょく) 流水の如きを)
今日殘花昨日開(今日(こんにち)の残花は昨日開きしなり)(崔恵童・宴城東荘)
の、
値、
は、
逢、
と同じ意味、
識(知り合いになる)、
となっている本もある(前野直彬注解『唐詩選』)とあるが、
値、
は、
思いがけなく出会うこと、
ともある(https://kanbun.info/syubu/toushisen462.html)。
寧見乳虎、無値寧成之怒(乳虎に見(あ)ふとも寧成の怒に値(あ)ふなかれ)(史記・酷吏傳)、
とあるように、
出くわす、
という意味で、『説文解字』に、
値、措也(値は、措くなり)、
とあり、徐注に、
一曰逢遇(一に曰く、逢遇するなり)、
とある(仝上)。
笑幾回、
は、「荘子」盗跖篇に、
人上壽百歳、中壽八十、下壽六十除病瘦死喪憂患、其中開口而笑者、一月之中、不過四五日而已矣(人、上寿百歳、中寿八十、下寿六十。病瘦・死喪・憂患を除きて、其の中(うち)に口を開きて笑う者、一月(いちげつ)の中(うち)、四五日(じつ)に過ぎざるのみ)
にあるのを踏まえる(前野直彬注解『唐詩選』・https://kanbun.info/syubu/toushisen462.html)とある。この、
上壽百歳、
中壽八十歳、
下壽六十歳、
の長寿三種を、上記出典から、
三寿(さんじゅ)、
という(広辞苑)が、
上寿(100歳または120歳)、
中寿(80歳または100歳)、
下寿(60歳または80歳)、
と幅がある(広辞苑・デジタル大辞泉)。
「値」(①漢音チ・呉音ジ、②漢音チョク・呉音ジキ)は、
会意兼形声。直は「|(まっすぐ)+目+∟(かくす)」の会意文字で、目をまともにあてて、隠れたものを直視することを示す。植(真っ直ぐ立てる)、置(真っ直ぐに立ておく)と同系のことば。値は「人+音符直」で、何かにまともにあたる、物のねうちにまともにあたる値段の意、
とある(漢字源)。「価値」の、物の値打ちに相当するあたい、の意の場合①の音、「当値(直)」の、役目や順番に当たる意、あう、当面にするの意の場合②の音となる(仝上)。別に、
会意兼形声文字です(人+直)。「横から見た人」の象形と「まじないの印の十をつけた目」の象形(「まっすぐ見つめる」の意味)から、人が見つめあう事を意味し、そこから、人が「会う」、物に向き合う「値段」、「価値」を意味する「値」という漢字が成り立ちました。また、「直(ジ)」は「持(ジ)」に通じ(同じ読みを持つ「持」と同じ意味を持つようになって)、「持つ」の意味から、「人が持つ」の意味も表すようになりました、
ともある(https://okjiten.jp/kanji968.html)が、
形声。「人」+音符「直 /*TƏK/」。「あう」を意味する漢語{値 /*drəks/}を表す字。のち仮借して「あたい」を意味する漢語に用いる、
も(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%80%A4)、
形声。人と、音符直(チヨク、チ)とから成る。立てておく意を表す。直と通じ、あたる、転じて「あたい」の意に用いる、
も(角川新字源)、形声文字とする。
参考文献;
前野直彬注解『唐詩選』(岩波文庫)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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