2024年08月22日

水脈(みお)


天の川雲の水脈(みを)にて早ければ光とどめず月ぞ流るる(古今和歌集)、

の、

水脈、

は、

水の流れる道筋、天の川を雲でできた川とみる。天の川を「川」という名前に引っ掛けて、水の流れに見立てる、

とある(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。

澪標(みをつくし)」で触れたように、

みを、

は、

澪、
水脈、
水尾、

と当て、

三輪山の山下(やました)響(とよ)みゆく水の水尾(みを)し絶えずは後(のち)も吾が妻(万葉集)、

と、

海や川の中で、水の流れる筋、

をいうが、特に、

堀江よりみを(水脈)さかのぼる楫(かぢ)の音の間なくぞ奈良は恋しかりける(万葉集)、

と、

船の航行できる深い水路、

をいう(広辞苑・精選版日本国語大辞典)。

みを、

は、訛って、

みよ、

ともいい、その由来は、

ミ(水)ヲ(緒)の意(広辞苑・岩波古語辞典・精選版日本国語大辞典)、
水緒(ミヲ)にて、流れの筋の意か、或は云ふ水尾の義、尾は引き延べたるを云ふ、山の尾の如し、澪は、水零の合字(大言海)、
ミズヲ(水尾)の義(名語記・名言通・国語の語根とその分類=大島正健)、

と、

水路、

の意味のようである。そこから敷衍して、現代では、

航行する船が背後にのこす長い帯のような航跡(ミオ)を辿るように(死霊)、

と、

航路あとに出来る水の筋、
航跡、

の意でも使う(広辞苑)。

「脈」.gif


「脈」(漢音バク、呉音ミャク)は、

会意兼形声。𠂢は、水流の細く分かれてつうじるさま。脈はそれを音符とし、肉を加えた字で、細く分かれて通じる血管、

とあり(漢字源)、

会意兼形声文字です。「切った肉」の象形と「水流が分かれている」象形(「体内を流れる血筋」の意味)から「ミャク」を意味する「脈」という漢字が成り立ちました、

https://okjiten.jp/kanji278.html同趣旨だが、

形声。血または肉と、音符𠂢(ハイ)→(バク)とから成る。体内を流れる血筋、ひいて「みゃく」の意を表す、

と(角川新字源)、形声文字とする説もある。

参考文献;
高田祐彦訳注『新版古今和歌集』(角川ソフィア文庫Kindle版)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:36| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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