2024年08月25日
末(うれ)
笹の葉に降りつむ雪のうれを重み本(もと)くたちゆくわが盛りはも(古今和歌集)、
の、
うれ、
は、
茎や葉の先の方、
で、
本、
は、
うれ、
に対して、
茎、
をいう(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)とある。
うれ、
末、
若末、
と当て(岩波古語辞典)、
植物の生長する先端、
の意(仝上・精選版日本国語大辞典)で、
ぬれ、
うら、
とも訛る(仝上・大言海)が、
うれ、
は、
ウラ(裏・末)の転、
ともあり(岩波古語辞典)、
木の末、
は、
このうれ、
とも、
雪いと白う木のすゑに降りたり」(伊勢物語)
と、
このすえ、
とも訓ませる(仝上)。つまり、
こずえ(梢・木末)、
である。
うれ、
の由来は、
末枝(ウラエ)の約まりてウレとなり、ウレ、又他語に冠すれば、ウラガレ(末枯)・ウラバ(末葉)となる(大言海)、
ウラの交換形(時代別国語大辞典-上代編)、
ウヘ(上)の転(和訓栞)、
と諸説あるが、
うれ、
の古形が、
うら、
で、
「もと」の対、
で、
幹に対する先端、
ともある(岩波古語辞典)。この、
うら、
は、
上の原語ウに接尾語ラを添えたもの(日本古語大辞典=松岡静雄)、
アナウラ(蹠 足裏)と同語(玄同放言)、
等々とあるが、
うへ、
は、
古形ウハの転。「下(した)」「裏(うら)」の対。最も古くは、表面の意。そこから、物の上方、髙い位置、貴人の意へと展開。また、すでに存在するものの表面に何かが加わる意から、累加・つながり・成行きなどの意などの意を示すようになった、
とある(岩波古語辞典)。「うえ」で触れたように、
「う」+接尾語「へ」
という説は、上代特殊仮名遣いからみて、
接尾語「へ」は、「fe」(甲類)、「うへ」の「へ」は「fë」(乙類)、
で、接尾語説は採りえない。となると、
上の原語ウに接尾語ラを添えたもの、
は成り立たず、
うわ→うら→うれ、
と見るほかないのかもしれない。なお、
上の方の枝、
の意で、
上つ枝、
とも当てる、
ほつえ(秀つ枝)、
については触れたし、
裏、
心、
と当てる、
うら、
についても触れた。
「末」(漢音バツ、呉音マツ・マチ)は、「末摘花」で触れたように、
指事。木のこずえのはしを、一印または・印で示したもので、木の細く小さい部分のこと、
とある(漢字源)。別に、
指事。「木」の上端部分に印を加えたもの「すえ」「こずえ」を意味する漢語{末 /*maat/}を表す字、
とも(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E6%9C%AB)、
指事文字です。「大地を覆う木」の象形に「横線」を加えて、「物の先端・すえ・末端」を意味する「末」という漢字が成り立ちました
とも(https://okjiten.jp/kanji698.html)ある。
参考文献;
高田祐彦訳注『新版古今和歌集』(角川ソフィア文庫Kindle版)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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