なよ竹のよ長き上に初霜のおきゐてものを思ふころかな(古今和歌集)、
の、
よ長き、
の、
よ、
は、
竹の節と節の間、
の意で、その、
「よ」と「夜」の掛詞、
とあり(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)、歌などでは、多く、
「世」「夜」などと掛けて用いる、
とある(精選版日本国語大辞典)。
なよ竹、
は、
なよなよわとしたしなやかな竹、
とある(仝上)。
なよたけ、
は、
弱竹、
と当て、
なよだけ、
なゆたけ、
とも言い、
めだけ(女竹)の別名、
ともいう(精選版日本国語大辞典)。「にがたけ」で触れたように、
めだけ(女竹・雌竹)、
は、
をだけ(雄竹)、
つまり、
マダケ、
に対して言う、
篠竹の類、
をいい(大言海)、植物学上は、
ササ、
に分類される(世界大百科事典)、
イネ科の(メダケ属)タケササ類、
で、
関東以西の各地に生え、稈は高さ三〜六メートル、径一〜三センチメートルになり、節間は長く枝は節に五〜七本ずつつく。地下茎が横に走り、葉は披針形で手のひら状につき、長さ一〇〜二五センチメートル、三〜五個が枝先からななめに掌状に出る。花穂は古い竹の皮を伴い枝先に密集してつき、小穂は線形で長さ三〜一〇センチメートル。筍(たけのこ)には苦味がある。稈で笛・竿・キセル・籠などをつくる、
とあり(日本国語大辞典・大辞泉)、
なよたけ、
おなごだけ、
にがたけ、
あきたけ、
しのだけ、
しのべだけ、
かわたけ、
等々の名がある(仝上・広辞苑)。因みに、
雄竹(おだけ)、
は、主として、
真竹(まだけ)、
をいうが、淡竹(はちく)、孟宗竹(もうそうちく)などの大柄な竹にもいう(精選版日本国語大辞典)。なお、「タケ(竹)」については触れた。
節、
は、
ふし、
と訓ませると、
竹・葦あしなどの幹や茎にあって盛り上がったり、ふくれ上がったりしている部分、
をいい、敷衍して、広く、
物の盛り上がったり瘤(こぶ)のようになったりして区切り目にもなっている部分、
にいい、
季節、くぎりめ、
の意で使い、また、
ふ、
とも訓ませ、
せつ、
と訓ませても、
竹のふし、
意から、やはり、
ふしのようになった所、つなぎ目、くぎり、
の意で使う。
せち、
と訓ませても、
季節、時節、季節のかわりめ、
といった区切を言い、
ふし(節)、
の意で、
ふ、
とも訓ませる(精選版日本国語大辞典・デジタル大辞泉)。さて、で、
節、
を、
よ、
と訓ませると、類聚名義抄(11~12世紀)に、
節、両節間、ヨ、
和名類聚抄(931~38年)にも、
節、両節間、輿、
とあるように、
節(ふし)と節の間、
の意だが、そこから、転じて、
おおきなる竹のよ(節)をとほして入道の口に当て、もとどりを具してほりうづむ(平治物語)、
と、
節(ふし)、
そのものの意でも使う。この、
よ(節)
は、
代・世、
と当てる、
よ、
と同根、
とされ(広辞苑・岩波古語辞典)、
よ(代・世)、
もまた、
ヨ(節)の義(俚言集覧・大言海・海上の道=柳田国男)、
ヨは間の義(松屋筆記)、
ヨ(間)の義、年と年との間の義(言元梯)、
ヨ(代・世)、ヨ(節)はともにヤ(弥)を語源とする(続上代特殊仮名音義=森重敏)、
と、
よ(節)、
につなげる説が大勢である。思うに、
節と節の間、
をメタファにして、
よ(世・代)、
の意味に敷衍したと思われる。それは、
ふし(節)、
せつ(節)、
等々の意味の広がり方とも通じる気がする。
「節」(漢音セツ、呉音セチ)は、「折節」で触れたように、
会意。即(ソク)は「ごちそう+膝を折ってひざまずいた人」の会意文字。ここでは「卩」の部分(膝を折ること)に重点がある。節は「竹+膝を折った人」で、膝を節(ふし)として足が区切れるように、一段ずつ区切れる竹の節、
とある(漢字源)。別に、
形声。「竹」+音符「即」(旧字体:卽)、卽の「卩」(膝を折り曲げた姿)をとった会意。同系字、切、膝など、
とも(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%AF%80)、
会意兼形声文字です(竹+即(卽))。「竹」の象形と「食べ物の象形とひざまずく人の象形」(人が食事の座につく意味から、「つく」の意味)から、竹についている「ふし(茎にある区切り)・区切り」を意味する
「節」という漢字が成り立ちました、
ともある(https://okjiten.jp/kanji554.html)。
参考文献;
高田祐彦訳注『新版古今和歌集』(角川ソフィア文庫Kindle版)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
ラベル:よ(節)