2024年08月30日

よ(節)


なよ竹のよ長き上に初霜のおきゐてものを思ふころかな(古今和歌集)、

の、

よ長き、

の、

よ、

は、

竹の節と節の間、

の意で、その、

「よ」と「夜」の掛詞、

とあり(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)、歌などでは、多く、

「世」「夜」などと掛けて用いる、

とある(精選版日本国語大辞典)。

なよ竹、

は、

なよなよわとしたしなやかな竹、

とある(仝上)。

なよたけ、

は、

弱竹、

と当て、

なよだけ、
なゆたけ、

とも言い、

めだけ(女竹)の別名、

ともいう(精選版日本国語大辞典)。「にがたけ」で触れたように、

めだけ(女竹・雌竹)、

は、

をだけ(雄竹)、

つまり、

マダケ、

に対して言う、

篠竹の類、

をいい(大言海)、植物学上は、

ササ、

に分類される(世界大百科事典)、

イネ科の(メダケ属)タケササ類、

で、

関東以西の各地に生え、稈は高さ三〜六メートル、径一〜三センチメートルになり、節間は長く枝は節に五〜七本ずつつく。地下茎が横に走り、葉は披針形で手のひら状につき、長さ一〇〜二五センチメートル、三〜五個が枝先からななめに掌状に出る。花穂は古い竹の皮を伴い枝先に密集してつき、小穂は線形で長さ三〜一〇センチメートル。筍(たけのこ)には苦味がある。稈で笛・竿・キセル・籠などをつくる、

とあり(日本国語大辞典・大辞泉)、

なよたけ、
おなごだけ、
にがたけ、
あきたけ、
しのだけ、
しのべだけ、
かわたけ、

等々の名がある(仝上・広辞苑)。因みに、

雄竹(おだけ)、

は、主として、

真竹(まだけ)、

をいうが、淡竹(はちく)、孟宗竹(もうそうちく)などの大柄な竹にもいう(精選版日本国語大辞典)。なお、「タケ(竹)」については触れた。

節、

は、

ふし、

と訓ませると、

竹・葦あしなどの幹や茎にあって盛り上がったり、ふくれ上がったりしている部分、

をいい、敷衍して、広く、

物の盛り上がったり瘤(こぶ)のようになったりして区切り目にもなっている部分、

にいい、

季節、くぎりめ、

の意で使い、また、

ふ、

とも訓ませ、

せつ、

と訓ませても、

竹のふし、

意から、やはり、

ふしのようになった所、つなぎ目、くぎり、

の意で使う。

せち、

と訓ませても、

季節、時節、季節のかわりめ、

といった区切を言い、

ふし(節)、

の意で、

ふ、

とも訓ませる(精選版日本国語大辞典・デジタル大辞泉)。さて、で、

節、

を、

よ、

と訓ませると、類聚名義抄(11~12世紀)に、

節、両節間、ヨ、

和名類聚抄(931~38年)にも、

節、両節間、輿、

とあるように、

節(ふし)と節の間、

の意だが、そこから、転じて、

おおきなる竹のよ(節)をとほして入道の口に当て、もとどりを具してほりうづむ(平治物語)、

と、

節(ふし)、

そのものの意でも使う。この、

よ(節)

は、

代・世、

と当てる、

よ、

と同根、

とされ(広辞苑・岩波古語辞典)、

よ(代・世)、

もまた、

ヨ(節)の義(俚言集覧・大言海・海上の道=柳田国男)、
ヨは間の義(松屋筆記)、
ヨ(間)の義、年と年との間の義(言元梯)、
ヨ(代・世)、ヨ(節)はともにヤ(弥)を語源とする(続上代特殊仮名音義=森重敏)、

と、

よ(節)、

につなげる説が大勢である。思うに、

節と節の間、

をメタファにして、

よ(世・代)、

の意味に敷衍したと思われる。それは、

ふし(節)、
せつ(節)、

等々の意味の広がり方とも通じる気がする。

「節」.gif


「節」(漢音セツ、呉音セチ)は、「折節」で触れたように、

会意。即(ソク)は「ごちそう+膝を折ってひざまずいた人」の会意文字。ここでは「卩」の部分(膝を折ること)に重点がある。節は「竹+膝を折った人」で、膝を節(ふし)として足が区切れるように、一段ずつ区切れる竹の節、

とある(漢字源)。別に、

形声。「竹」+音符「即」(旧字体:卽)、卽の「卩」(膝を折り曲げた姿)をとった会意。同系字、切、膝など、

ともhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%AF%80

会意兼形声文字です(竹+即(卽))。「竹」の象形と「食べ物の象形とひざまずく人の象形」(人が食事の座につく意味から、「つく」の意味)から、竹についている「ふし(茎にある区切り)・区切り」を意味する
「節」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji554.html

参考文献;
高田祐彦訳注『新版古今和歌集』(角川ソフィア文庫Kindle版)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル:よ(節)
posted by Toshi at 03:38| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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