いくばくの田をつくればかほととぎすしでの田長(たをさ)を朝な朝な呼ぶ(古今和歌集)、
の、
しでの田長、
の、
田長、
は、
農事を取り仕切る長、
とあり、
しで、
は、
諸説あるが不明、
とある(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。ここでは、ほととぎすの鳴き声を、
シデノタオサ、
と聞きなす。で、
シデノタオサ、
は、
ほととぎすの異名、
とする(仝上)。
しでのたおさ、
は、
死出の田長、
と当て(広辞苑・岩波古語辞典・精選版日本国語大辞典)、
しでたをさ(死出田長)、
ともいい(大言海)、
たをさ(たおさ)、
は、
農事の統率者、かしら、
をいい(岩波古語辞典・広辞苑)、
シズ(賎)ノタオサ(田長)の転(広辞苑・袖中抄・安斎雑考)、
死出の山から飛び来て鳴くから(広辞苑・精選版日本国語大辞典)、
シデの山からきて過時不熟と鳴いて農を勧めるのでタヲサ(田長)という(色葉和難集・河海抄・万葉代匠記)、
冥途からきて、農事をすすめるから(岩波古語辞典)、
鳴く声を名とす、シデタヲサ(シトトウサ)、ホトトギスなど、種々に聞きなさるるなり、然るを、田植の頃、盛んに鳴けば、其聲を、田に縁ありげに、勧農の鳥などと云ふ諸説、肯けられず(大言海)、
「ほととぎす」の鳴き声を写した擬音語(精選版日本国語大辞典)、
等々から、
ほととぎす(杜鵑)、
の異称とされる(日本語源大辞典・広辞苑・岩波古語辞典)。また、
田長(たをさ)、
のみで、
死出の田長の略、
として、
ホトトギス、
の異称であり、
田長鳥(たをさどり)、
も、
ほととぎす、
の異称である(広辞苑)。上記の、
死出の田長、
の由来と繋がっている。なお、
ホトトギス、
については触れた。
「田」(漢音テン、呉音デン)は、「田楽」で触れたように、
四角に区切った耕地を描いたもの。平らに伸びる意を含む。また田猟の田は、平地に人手を配して平らに押していく狩のこと、
とある(漢字源)。別に、
象形文字です。「区画された狩猟地・耕地」の象形から「狩り・田畑」を意味する「田」という漢字が成り立ちました、
ともある(https://okjiten.jp/kanji108.html)。
(「死」 甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E6%AD%BBより)
「死」(シ)は、
会意文字。「歹(骨の断片)+ヒ(人)」で、人が死んで骨きれに分解することをあらわす、
とある(漢字源)。他もほぼ同趣旨で、
会意。「歹」(骨の断片)+「匕」(人)、人が死んで骨になること(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E6%AD%BB)、
会意。歹と、人(匕は変わった形)とから成り、人が死んで骨だけになる意を表す(角川新字源)、
会意文字です(歹+匕(人))。「白骨」の象形と「ひざまずく人」の象形から、ひざまずく人の前に横たわる死体を意味し、そこから、「しぬ」を意味する「死」という漢字が成り立ちました(https://okjiten.jp/kanji34.html)、
などとある。
参考文献;
高田祐彦訳注『新版古今和歌集』(角川ソフィア文庫Kindle版)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95