2024年08月31日

しでのたおさ


いくばくの田をつくればかほととぎすしでの田長(たをさ)を朝な朝な呼ぶ(古今和歌集)、

の、

しでの田長、

の、

田長、

は、

農事を取り仕切る長、

とあり、

しで、

は、

諸説あるが不明、

とある(高田祐彦訳注『新版古今和歌集』)。ここでは、ほととぎすの鳴き声を、

シデノタオサ、

と聞きなす。で、

シデノタオサ、

は、

ほととぎすの異名、

とする(仝上)。

しでのたおさ、

は、

死出の田長、

と当て(広辞苑・岩波古語辞典・精選版日本国語大辞典)、

しでたをさ(死出田長)、

ともいい(大言海)、

たをさ(たおさ)、

は、

農事の統率者、かしら、

をいい(岩波古語辞典・広辞苑)、

シズ(賎)ノタオサ(田長)の転(広辞苑・袖中抄・安斎雑考)、
死出の山から飛び来て鳴くから(広辞苑・精選版日本国語大辞典)、
シデの山からきて過時不熟と鳴いて農を勧めるのでタヲサ(田長)という(色葉和難集・河海抄・万葉代匠記)、
冥途からきて、農事をすすめるから(岩波古語辞典)、
鳴く声を名とす、シデタヲサ(シトトウサ)、ホトトギスなど、種々に聞きなさるるなり、然るを、田植の頃、盛んに鳴けば、其聲を、田に縁ありげに、勧農の鳥などと云ふ諸説、肯けられず(大言海)、
「ほととぎす」の鳴き声を写した擬音語(精選版日本国語大辞典)、

等々から、

ほととぎす(杜鵑)、

の異称とされる(日本語源大辞典・広辞苑・岩波古語辞典)。また、

田長(たをさ)、

のみで、

死出の田長の略、

として、

ホトトギス、

の異称であり、

田長鳥(たをさどり)、

も、

ほととぎす、

の異称である(広辞苑)。上記の、

死出の田長、

の由来と繋がっている。なお、

ホトトギス

については触れた。

「田」.gif

(「田」 https://kakijun.jp/page/ta200.htmlより)

「田」(漢音テン、呉音デン)は、「田楽」で触れたように、

四角に区切った耕地を描いたもの。平らに伸びる意を含む。また田猟の田は、平地に人手を配して平らに押していく狩のこと、

とある(漢字源)。別に、

象形文字です。「区画された狩猟地・耕地」の象形から「狩り・田畑」を意味する「田」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji108.html

「死」.gif

(「死」 https://kakijun.jp/page/0699200.htmlより)


「死」 甲骨文字・殷.png

(「死」 甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E6%AD%BBより)


「死」(シ)は、

会意文字。「歹(骨の断片)+ヒ(人)」で、人が死んで骨きれに分解することをあらわす、

とある(漢字源)。他もほぼ同趣旨で、

会意。「歹」(骨の断片)+「匕」(人)、人が死んで骨になることhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E6%AD%BB

会意。歹と、人(匕は変わった形)とから成り、人が死んで骨だけになる意を表す(角川新字源)、

会意文字です(歹+匕(人))。「白骨」の象形と「ひざまずく人」の象形から、ひざまずく人の前に横たわる死体を意味し、そこから、「しぬ」を意味する「死」という漢字が成り立ちましたhttps://okjiten.jp/kanji34.html

などとある。

参考文献;
高田祐彦訳注『新版古今和歌集』(角川ソフィア文庫Kindle版)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:58| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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