2024年11月03日

雄飛


聲華大國寶(聲華 大國の寶)
夙夜近臣心(夙夜(しゅくや) 近臣の心)
逸興乗高閣(逸興 高閣に乗じ)
雄飛在禁林(雄飛 禁林に在り)(張九齢・和許給事直夜簡諸公)

の、

夙夜、

の、

夙、

は、

朝早く、

の意で、「詩経」大雅、烝民(じょうみん)の、

夙夜、懈(おこたら)ず、以て一人(天子)に事(つか)う、

を踏まえ、

朝早くから夜遅くまで、

の意とある(前野直彬注解『唐詩選』)。

雄飛、

は、

雌伏、

に対する言葉で、

空高く、雄々しく飛ぶこと、

とある(仝上)。

雌伏、

は、

雄鳥に雌鳥が従うという意味から、将来の活躍を待ちながら人に従うということ、

雄飛、

は、

雄鳥が高く羽ばたくように、雄雄しく飛び立つこと、

の意https://yoji.jitenon.jp/yoji/497だが、

雌伏雄飛、

といい、『後漢書』趙温伝に

大丈夫當雄飛、安能雌伏(大丈夫(だいじょうふ)当(まさ)に雄飛すべし、安(いずく)んぞ能(よく)雌伏せん、

とあるのによるhttps://kanbun.info/syubu/toushisen131.html#google_vignette。趙温伝には、

初為京兆丞、嘆曰大丈夫當雄飛、安能雌伏、遂棄官去。遭歲大饑、散家糧以振窮餓、所活萬餘人。獻帝西遷都、為侍中、同輿輦至長安、封江南亭侯、代楊彪為司空、免、頃之、復為司徒、錄尚書事……

とある(https://zh.wikisource.org/wiki/%E5%BE%8C%E6%BC%A2%E6%9B%B8/%E5%8D%B727)ように、後に飢饉の時に私財を投じて庶民を救って名を挙げ、望み通り出世を遂げた。

なお、

雌伏、

は、

将来の活躍の日を期しながら、しばらく他人の支配に服して絶えていること、

の意味から、敷衍して、

雌伏竟非天(温庭筠)、

と、

退きて、隠れる、

意でも使う(字源)。

「雄」.gif


「雄」(漢音ユウ、呉音ウ・ユ)は、

会意兼形声。厷(ユウ)は、「手+∠印(肱を張った形)」の会意文字で、肱(ひじ)の原字。雄はそれを音符とし、隹(とり)を加えた字で、肩を張って威勢を示す、オスの鳥、

とある(漢字源)。別に、

会意兼形声文字です(厷+隹)。「肱(ひじ)」の象形(「広げる」の意味)と「尾の短いずんぐりした小鳥」の象形から、翼を広げている鳥を意味し、そこから、「おす鳥」を意味する「雄」という漢字が成り立ちました、

ともあるhttps://okjiten.jp/kanji1302.htmlが、

形声。「隹」+音符「厷 /*WƏNG/」。「おす」を意味する漢語{雄 /*wəng/}を表す字、

https://ja.wiktionary.org/wiki/%E9%9B%84

形声。隹と、音符厷(コウ)→(イウ)とから成る。勇ましい鳥、おすの鳥、ひいて「おす」の意を表す、

も(角川新字源)、

形声、声符は(こう)とされているが、声が合わず、右の変化したものであろう。漢碑には右に従う字が多い。〔説文〕四上に「鳥なり」とし、声とする。鳥の雌雄をいう字であるが、雄壮・雄健など、男性的な徳性をいうことが多い(字通)、

も、形声文字とする。

「雌」.gif



「雌」 楚系簡帛文・戦国時代.png

(「雌」 楚系簡帛文字(簡帛は竹簡・木簡・帛書全てを指す)・戦国時代 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E9%9B%8Cより)

「雌」(シ)は、

会意兼形声。此(シ)は、足がちぐはぐに並んださまを表す会意文字。雌は「隹(とり)+音符此」で、左右に羽をちぐはぐに交差させて、尻を隠すメスのとり、

とあり(漢字源)、別に、

会意兼形声文字です(此+隹)。「立ち止まる足の象形と年老いた女性の象形」(「わずかに開いて踏む」の意味)と「尾の短いずんぐりした小鳥」の象形(「小鳥」の意味)から、生殖器がわずかに開いた「めす」を意味する「雌」という漢字が成り立ちました、

https://okjiten.jp/kanji1303.html、やはり会意兼形声文字とするが、

形声。「隹」+音符「此 /*TSE/」。「めす」を意味する漢語{雌 /*tshe/}を表す字、

(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E9%9B%8C)

形声。隹と、音符此(シ)とから成る(角川新字源)、

も、形声文字とする。

参考文献;
前野直彬注解『唐詩選』(岩波文庫)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:56| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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