聲華大國寶(聲華 大國の寶)
夙夜近臣心(夙夜(しゅくや) 近臣の心)
逸興乗高閣(逸興 高閣に乗じ)
雄飛在禁林(雄飛 禁林に在り)(張九齢・和許給事直夜簡諸公)
の、
夙夜、
の、
夙、
は、
朝早く、
の意で、「詩経」大雅、烝民(じょうみん)の、
夙夜、懈(おこたら)ず、以て一人(天子)に事(つか)う、
を踏まえ、
朝早くから夜遅くまで、
の意とある(前野直彬注解『唐詩選』)。
雄飛、
は、
雌伏、
に対する言葉で、
空高く、雄々しく飛ぶこと、
とある(仝上)。
雌伏、
は、
雄鳥に雌鳥が従うという意味から、将来の活躍を待ちながら人に従うということ、
雄飛、
は、
雄鳥が高く羽ばたくように、雄雄しく飛び立つこと、
の意(https://yoji.jitenon.jp/yoji/497)だが、
雌伏雄飛、
といい、『後漢書』趙温伝に
大丈夫當雄飛、安能雌伏(大丈夫(だいじょうふ)当(まさ)に雄飛すべし、安(いずく)んぞ能(よく)雌伏せん、
とあるのによる(https://kanbun.info/syubu/toushisen131.html#google_vignette)。趙温伝には、
初為京兆丞、嘆曰大丈夫當雄飛、安能雌伏、遂棄官去。遭歲大饑、散家糧以振窮餓、所活萬餘人。獻帝西遷都、為侍中、同輿輦至長安、封江南亭侯、代楊彪為司空、免、頃之、復為司徒、錄尚書事……
とある(https://zh.wikisource.org/wiki/%E5%BE%8C%E6%BC%A2%E6%9B%B8/%E5%8D%B727)ように、後に飢饉の時に私財を投じて庶民を救って名を挙げ、望み通り出世を遂げた。
なお、
雌伏、
は、
将来の活躍の日を期しながら、しばらく他人の支配に服して絶えていること、
の意味から、敷衍して、
雌伏竟非天(温庭筠)、
と、
退きて、隠れる、
意でも使う(字源)。
「雄」(漢音ユウ、呉音ウ・ユ)は、
会意兼形声。厷(ユウ)は、「手+∠印(肱を張った形)」の会意文字で、肱(ひじ)の原字。雄はそれを音符とし、隹(とり)を加えた字で、肩を張って威勢を示す、オスの鳥、
とある(漢字源)。別に、
会意兼形声文字です(厷+隹)。「肱(ひじ)」の象形(「広げる」の意味)と「尾の短いずんぐりした小鳥」の象形から、翼を広げている鳥を意味し、そこから、「おす鳥」を意味する「雄」という漢字が成り立ちました、
ともある(https://okjiten.jp/kanji1302.html)が、
形声。「隹」+音符「厷 /*WƏNG/」。「おす」を意味する漢語{雄 /*wəng/}を表す字、
も(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E9%9B%84)、
形声。隹と、音符厷(コウ)→(イウ)とから成る。勇ましい鳥、おすの鳥、ひいて「おす」の意を表す、
も(角川新字源)、
形声、声符は(こう)とされているが、声が合わず、右の変化したものであろう。漢碑には右に従う字が多い。〔説文〕四上に「鳥なり」とし、声とする。鳥の雌雄をいう字であるが、雄壮・雄健など、男性的な徳性をいうことが多い(字通)、
も、形声文字とする。
(「雌」 楚系簡帛文字(簡帛は竹簡・木簡・帛書全てを指す)・戦国時代 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E9%9B%8Cより)
「雌」(シ)は、
会意兼形声。此(シ)は、足がちぐはぐに並んださまを表す会意文字。雌は「隹(とり)+音符此」で、左右に羽をちぐはぐに交差させて、尻を隠すメスのとり、
とあり(漢字源)、別に、
会意兼形声文字です(此+隹)。「立ち止まる足の象形と年老いた女性の象形」(「わずかに開いて踏む」の意味)と「尾の短いずんぐりした小鳥」の象形(「小鳥」の意味)から、生殖器がわずかに開いた「めす」を意味する「雌」という漢字が成り立ちました、
と(https://okjiten.jp/kanji1303.html)、やはり会意兼形声文字とするが、
形声。「隹」+音符「此 /*TSE/」。「めす」を意味する漢語{雌 /*tshe/}を表す字、
も(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E9%9B%8C)、
形声。隹と、音符此(シ)とから成る(角川新字源)、
も、形声文字とする。
参考文献;
前野直彬注解『唐詩選』(岩波文庫)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95