2024年12月27日

スペクトラム


小林憲正『生命と非生命のあいだ 地球で「奇跡」は起きたのか』を読む。

生命と非生命のあいだ.jpg


生命を維持するのに欠かせないタンパク質が、偶然にできる確率は、

10の四万乗分の1

と試算され(フレッド・ホイル)、生命誕生には、

「多数のヌクレオチド(核酸を構成する単位)を結合させたリボ核酸、いわゆるRNAが必要とされている」(序章)

が、

「条件を満たすRNAをつくるには、ヌクレオチドを40個、正しい順番でつなぐ必要があります。」

が、それが地球系で偶然できる確率は小さく、そこで宇宙での発生を考えると、

10の40乗個、

ほどの恒星があれば、「何とか偶然にRNAがひとつできる(戸谷友則)というが、銀河系には、

4000垓(4×10の23乗)、

の恒星、惑星も、

數秭(ジョ 10の24乗)、

あり、地球で生命が誕生したのは奇跡とされる(仝上)。そんな中で、本書は、

「生命とは何か、生命はいかに誕生したか」を、古代から近年までの研究の流れを説明し(第1~4章)、
生命誕生のシナリオとしての「RNAワール」に代わりうるモデルとして、「がらくたワールド」を提案する(第5章)。
さまざまな生命の起源説を調べる手がかりとして、「宇宙」というタイムマシンがあり、生命の誕生、進化のさまざまなステップは、この宇宙のどこかに現在進行形で存在している、その可能性を探しに行き(第6章)、
生命誕生のプロセスについては、「化学進化」概念が主流になっているが、その正しい理解のために「生物進化」を参考にしつつ(第7章)、
最後に、生命と非生命のあいだをどう埋めればよいかを考える(第8章)、

という流れで、

生命と非生命のあいだ、

をつなぎ、

両者はデジタル的に0と1に区分できるものではなく、スペクトラムに、連続的につながっている、

として、

生命スペクトラム、

という結論を述べていく。

地球上の生命の特徴は、

第一に、地球生命は水と有機物に依存したものです。これが大前提です。
第二に、地球生命は外界と区別する「細胞膜」を持っています。細胞膜はおもにリン脂質でつくられています。
第三に、地球生命は細胞膜の中で化学反応を行います。これは「代謝」とよばれます。代謝は、酵素というタンパク質が触媒となって、コントロールされています。
第四に、地球生命は「自己複製」を行うことにより、増殖します。
第五に、地球生命は環境の変動に応じて「進化」(変異)します。

とし、

「最後の2つ(第四と第五)が可能になるのは、核酸のおかげです。」、

とする(第1章)。で、「地球型」生命の誕生には、

リン脂質、
タンパク質、
核酸、

が必要で、

「とりわけタンパク質と核酸は、両者がともにそろわなければ生体内でつくることができないものであり、地球生命 の根源をなす分子と考えられます。」

ので、生命の起源研究では、

タンパク質と核酸の起源が最重要課題、

と考えられてきた。しかし、これは、

あくまでも地球生命の「特徴」であって、「条件」ではない、

ので、

全く異なる生命がないとは言えない。しかし、生命の基本である、

自己複製、

などを考えた時、

「自己触媒により自分自身を作り出す」

という可能性があり、

細胞膜、

も、

「有機体の凝集体(他の分子をすきまにはさんだもの)から、きれいな膜状のもの、さらに現在の細胞膜のように膜外から必要なものを取り込んだり、不要なものを外に出したりできる高性能のものまで」(第8章)、

さまざまなレベルがある。そう考えると、完成体の、

生命、

からではなく、

非生命、

から、

スペクトラムとして連続的に(アナログ的に)存在している状態、

を考えた時、

生命、

の概念も変わるのではないか、そんな気がした。

参考文献;
小林憲正『生命と非生命のあいだ 地球で「奇跡」は起きたのか』(ブルーバックスKindle版)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:45| Comment(0) | 書評 | 更新情報をチェックする
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