みつる


ますらをと思へる我(わ)れをかくばかりみつれにみつれ片思(かたもひ)をせむ(大伴家持)

の、

みつれにみつる、

は、

体も心もやつれしおれる、

意で、

みつる、

は、

下二段動詞、

とある(伊藤博訳注『新版万葉集』)。この、

みつる、

は、

羸る、

と当て、

れ/れ/る/るる/るれ/れよ、

の、

自動詞ラ行下二段活用、

で、

やつれる、
疲れはてる、
病みつかれる、

意である(学研全訳古語辞・精選版日本国語大辞典)。

身やつるの約、

とする説がある(大言海)が、

身がmïの音なので成立困難、

とある(岩波古語辞典)。

同義語に、

かじく、

がある。

かじく、

は、

悴く、
瘁く、

と当て、古くは、

形色(かほ)憔悴(カシケ)(日本書紀)、

と、

かしく、

と清音で、日葡辞書(1603~04)では、

Caxiqeta(カシケタ)ナリ、
Cajiqe、uru、eta(カジクル 悪化する。衰弱する。または、やせて醜くなる。比喩、貧しく、衣類もない人に言う)、カジケビト、または、cajiqeta(カジケタ)ヒト(貧しい人。貧乏人)、

とあり、

生気がなくなり、衰える、

意から、それをメタファに、

みすぼらしくなる、

意でも使うことがわかる(精選版日本国語大辞典)。

「羸」.gif


「羸」 中国最古の字書『説文解字』.png

(「羸」 中国最古の字書『説文解字』(後漢・許慎)  https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%BE%B8より)

「羸」(ルイ・レン)の異体字は、

𦏞、𦣉、𬢙、𮊵、𮊷(俗字)、𮚨(同字)、

とあるhttps://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%BE%B8。字源は、

会意兼形声。「羊+音符𣎆(ラ 柔らかいむき身の略体)」。力なく、ぐったりした羊を表す、

とある(漢字源)が、他は、

形声。「羊」+音符「𣎆 /*ROJ/」https://ja.wiktionary.org/wiki/%E7%BE%B8

と、形声文字とする。

参考文献;
伊藤博訳注『新版万葉集』(全四巻合本版)(角川ソフィア文庫)Kindle版)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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