世界の対象化


エルンスト・カッシーラー(生松敬三・木田元訳)『シンボル形式の哲学』を読む。

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正直、読むのがきつい。

シンボル形式、

の意味が、最後までよくわからないだけでなく、枝葉が多く、論旨を追うのに、辟易させられる。僕なりに、全体像を整理すると、

認識とはもともとこの本質的な目標――特殊なものを一つの普遍的な法則と秩序にはめこむこと――にむけられている、

そして、

すべての真に厳密で精確な思考は、シンボル論と記号論のうちにはじめて、おのれを支えてくれる足場を見いだいことになる、

ということを前提に、いわば、著者の、

シンボル形式化、

とは、世界を捉える方法としての、

世界のメタ化(客観化)、

の手法なのだと理解した。冒頭の、

哲学的思索の出発点は、存在という概念によってしるしづけられる。存在という概念がまさしく概念として構成された瞬間に、つまり、存在者が多種多様であるのに対して存在するということはひとつであるという意識が目覚めた瞬間に、はじめて哲学固有の世界考察の方向が成立するのである、

ということに象徴されるような、

自立したメタ化世界を作っていく、

という、その手法として、著者は、

言語、
神話(的思考=概念)、
科学(的思考=概念)、

をキイ概念にして展開していく。そして、

シンボル形式、

の代名詞でもある、

記号、

について、

記号の本質的・普遍的利点として、記号が単に表示のためだけでなく、なによりも一定の論理的関係の発見に役立つこと、――それが単に既知のもののシンボルによる略記法を可能にするだけでなく、未知のもの、与えられていないもののもとに赴く新たな道を開くものだということ、

と記してもいる。しかし、世界をメタ化、つまり、著者のいう、

シンボル形式化、

が、

この三者で足りているのかどうかについては、浅学の自分にはわからない。あえて憶説を言うなら、

文学、
詩、
絵画、

といった、メタ化の最たるものについてのウエイトが少なく、より鮮明に、

科学と対立させつつ別に論ずべきもの、

なのではないか、という疑問はある。

あらゆる科学の基礎概念、つまり、科学がそれによってみずからの問題を提起し、その解決を定式化する手段は、もはやある与えられた存在の受動的な写像ではなく、みずからつくり出した知的なシンボルだと考えられるようになる、

と書くように、

現実の写像、

や、

現実の代替、

ではなく、

メタ化された世界そのものの自立した世界、

を目指すとして、少し古臭い、19世紀的なイメージではあるが、

科学的思考、

とりわけ、

数学、

を頂点に置いたところで、21世紀の今日から見ると、時代からの遠い距離を感じざるを得ない。著者は、

数学的記号に固有の意味は、それ自体で〈存在する〉記号のうちにあるのでも、それらの記号が〈模している〉もののうちにあるのでもなく、理念形成作用のある特殊な方向にある、――つまり、それらの記号が目指している外的客観にあるのではなく、ある特定の客観化の仕方にあるのである。数学的諸形式の世界は、秩序化の形式の世界なのであって、事物の形式の世界ではないのだ、

と書き、だから、「シンボル形式の哲学」が主張するのは、

〈記号〉がけっして思考の単に偶然な外被ではなく、記号の使用のなかに思考の特定の方向転換が、思考のある基本的な傾向や形式がはっきり刻印されている……、

のであり、で、

シンボル的思考の本性は、思考内容そのものを操作するのではなく、それぞれの思考内容に特定の記号を対応づけ、この対応づけの力を借りて、複雑な証明の連鎖のすべての項をひとつの形式にまとめあげ、それらを一目で文節された総体として捉えることを可能にしてくれる濃縮化を果たすことにあるからである、

ということなのだとする。そして、象徴的なのは、本書の掉尾である。

自然科学的認識は、おのれ自身の圏内で、精神のある一般的な構成法則を立証し実現してゆく。自然科学的認識は、それがおのれ自身に集中し、おのれの現状と、おのれの望んでいるものを把握すればするほど、世界を把握し理解する他のすべての形式と区別されるおのれ独自の契機――と、おのれをそれら他のすべての形式と結びつける契機と――が、いっそう明確に際立ってくるのである、

と。もちろん、著者自身が、

数学的自然科学の可能性を問題にするとしても、数学的自然科学は……、やはり客観化作用一般の一特殊例としかみなされない……、

とはいっているものの。

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参考文献;
エルンスト・カッシーラー(生松敬三・木田元訳)『シンボル形式の哲学』(全四冊)(岩波文庫)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

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