風吹けば黄葉(もみぢ)散りつつすくなくも吾(あが)の松原清くあらなくに(万葉集)
の、
すくなくも、
は、多く、「なくに」と呼応し、
ちっとやそっとの……ではない、
の意となり、ここでは、
すくなくも吾(あが)の松原清くあらなくに、
は、
この吾(あが)の松原はちっとやそっとの清らかさではない、
と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)。
すくなくも、
は、
少なくも、
とあて、現代語だと、副詞の、
少なくとも、
といい、
少なくとも15分かかる、
というように、
いくらか少なく見積もって、
最少にして、
の意や、
すくなくとも、それは間違っている、
というように、
他のことはさておいて、
せめて、
の意で使う(広辞苑)。
すくなくも、
も、
少なくも、
とあて、
形容詞「すくなし」の連用形に助詞「も」が付いてできたもの(精選版日本国語大辞典)、
形容詞「すくなし」の連用形に係助詞「も」が付いて一語化したもの(学研全訳古語辞典)、
で、
すくなし、
は、
く・く・し・き・けれ・○、
と活用する、ク活用になる。
すくなし、
は、
量が少ししかないことに重きを置く語、類義語スコシは、量がわずかであることに重きを置く語、
とある(岩波古語辞典)。
すくなくも、
は、冒頭の歌や、
さ丹つらふ色にはいでずすくなくも心のうちにわが思はなくに(万葉集)、
のように、下に打消や反語表現を伴って、
少しどころか……(非常に……だ)、
すこしばかり……ではない、
いくらすくなく見ても……などというものではなく、大いに、
の意で使う(岩波古語辞典・精選版日本国語大辞典)が、転じて、下に打消を伴わないで、肯定表現、希望表現などで結ばれる、
控え目に見ても、
最小限であっても、
と、今日の、
すくなくとも、
と同義の使い方になっていく(精選版日本国語大辞典)。
すくなくも、
の語幹、つまり、形容詞「すくなし」の語幹、
すくな(少)、
は、
やせやせに、御髪(ぐし)すくななるなどが、かくそしらはしきなり(源氏物語)、
と、
すくないこと、
の意だが、多く名詞の下に付けて、
人少な、
言少な、
文字少な、
と、形容動詞を作る。この、
すくな、
を重ねた、
ひしと功程をかんがへて、諸国にすくなすくなとあてて(愚管抄)、
と、
すくなすくな(少少 すくなずくな)、
という言い方があるが、
控え目に、
の意で、
訴人したら褒美は少(スク)な少(ズク)な銭十貫(浄瑠璃「壇浦兜軍記(1732)」)、
では、
控え目にみても、
と、ほぼ、
すくなくとも、
と同義でも使う(精選版日本国語大辞典)。
(「少」 甲骨文字・殷 https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%B0%91より)
「少」(ショウ)の異体字は、
(俗字)、
とある(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%B0%91)。字源は、
会意文字。「小(ちいさくけずる)+ノ印(そぎとる)」で、削って減らすこと。のち、分量や数が満ち足りない意に用い、年齢の満ち足りないのを少年という、
とある(漢字源)が、他の多くは、
象形。いくつかの砂粒を象る。「すな」を意味する漢語{沙 /*srˤai/}及び「ちいさい」「すくない」を意味する漢語{小 /*seuʔ/}、{少 /*steuʔ/}、{藐 /*meuʔ/}を表す字。秦以前の時代には「小」と「少」の使い方には区別がなかったが、秦の時代に「小」と「少」を単語によって区別して使うようになった(https://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%B0%91)、
象形文字です。「小さい点」の象形から「すくない」を意味する「少」という漢字が成り立ちました(https://okjiten.jp/kanji157.html)、
象形。小さな貝や玉を綴った形。〔説文〕二上に「多からざるなり」とし、字を丿(へつ)声とするが、声が合わない。貝や玉を綴ったものを𧴪・瑣(さ)という(字通)、
と、象形文字としている。この他に、
会意形声。小(セウ)と、一(ひとつのもの)とから成り、物がより「すくない」、ひいて「わかい」意を表す(角川新字源)、
と、会意兼形声文字とするものもある。
参考文献;
伊藤博訳注『新版万葉集』(全四巻合本版)(角川ソフィア文庫Kindle版)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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