妄想

小路田泰直『卑弥呼と天皇制』を読む。 タイトルからして,嫌な予感がした。大和王朝は,卑弥呼の存在を知らない。中国史書からその存在を知って,帳尻を合わせようとして見事に破たんしている。にもかかわらず,両者を地続きとして,構想しているのではないか,と。その予感が,そのまま当たって,どういったらいいか。これだけ妄想を積み重ねると,まあ,一つの物語としても,笑うに笑えない。 著者は,はじ…

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思想

佐藤正英『日本の思想とは何か』を読む。 著者は,冒頭でこう書いた。 「日本の思想は,のっぺらぼうの布筒のようなもので,ときどき流行する思想が,構造化されないままに,雑然と同居している。欧米諸国におけるキリスト教(ヘブライズム+ヘレニズム)に対応する座標軸が見出せない。日本の思想を通底している持続低音は『つぎつぎになりゆくイキホヒ』であって,祭祀の究極の対象は標榜とした時・空の彼方…

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敗者

渡邊大門『東北の関ヶ原』を読む。 関ヶ原の合戦は,関ヶ原での戦いに焦点が当たり,それ以外の地域での戦いには関心が払われていない。しかし,本書では,主人は, 上杉景勝 そして, 「『直江状』『小山評定』等々の検討を含め,『東北版 関ヶ原合戦』の全貌を明らかにすることにしたい。」 という。圧巻は,直江状の真贋検証である。 越後から会津120万石に移封され,領国…

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秀頼

福田千鶴『豊臣秀頼』を読む。 「天下人の血筋を誇りながら,凡庸な性格が豊臣家を滅亡させた」 と言われることが多い,豊臣秀頼に焦点を当てた。 「父は天下人豊臣秀吉。母は戦国大名浅井家に生まれた茶々(淀)。ゆえに,祖母は天下人織田信長の妹市であり,信長は大伯父にあたる。」 血筋から言えば,貴公子である。しかし,過去,彼は,あまり好意的には受け止められてこなかった。 …

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パフォーマンス

佐藤綾子『非言語表現の威力』を読む。 どうも,一読の印象は,「パフォーマンス」「パフォーマンス学」という言葉で受けるイメージとは異なって,本書のほとんどは,表現力,つまりは,プレゼンテーションや,スピーチ,コミュニケーションといったところに矮小化されてしまっている気がしてならない。 もともとパフォーマンス学というものが何たるか知らないくせにと言われそうだが,それなら単にコミュニケ…

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日清戦争

大谷正『日清戦争』を読む。 これを読んでいて,不意に頭をよぎったのは, 「そろそろどこかで戦争でも起きてくれないことには,日本経済も立ちゆかなくなってきますなあ。さすがに日本の国土でどんぱちやられたのではたまらないから,私はインドあたりで戦争が起きてくれれば,我が国としては一番有り難い展開になると思ってますよ。」 という発言をしたという,葛西敬之JR東海代表取締役名誉会長の…

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信長像

神田千里『織田信長』を読む。 この著者の『島原の乱』には大変お世話になった記憶がある。そんなことで思わず手にした。それと,いくつかの信長本に,神田説の引用もあったことを覚えている。 既に信長については, http://ppnetwork.seesaa.net/article/406501271.html http://ppnetwork.seesaa.net/arch…

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天下

松下浩『織田信長 その虚像と実像』を読む。 著者は,史実にもとづいて信長の真実の姿を明らかにする,という課題の他に,「近江の中世から近世への過程をたどる」のを第二の課題としている。思えば,元亀の浅井・朝倉との死闘は,近江が舞台であったし,安土城も近江にある。 さて,本書の意図は別にしても,一番の特徴は,信長の目指したものをどう明確にしたかだろう。 まずは「天下」。 既…

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ことば

白井恭弘『ことばの力学』を読む。 サブタイトルに「応用言語学への招待」とある。応用言語学は,主たる対象が外国語教育であったものが,現実社会のあらゆる場面で重要な役割を果たしている言語についての,「現実社会の問題解決に直接貢献するような言語学」なのだという。 その意味では,実践的なもののはずだが, 「本書で扱われる多くの現象の背後にあるのは,言語とパワー(権力)の関係です。『…

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検証

平山優『検証 長篠合戦』を読む。 本書は,同じ著者の『長篠合戦と武田勝頼』の姉妹編,というより,同書で漏れた,史料の検証と合戦における両軍の戦力,物量の比較検討部分を独立させている,という。 従来の信長・徳川の三千挺の鉄炮が三段撃ちで,武田騎馬隊を撃破したという通説に対し,三千挺への疑問,三段撃ちへの疑問,騎乗しての戦闘への疑問等々の批判が相次ぎ,通説が揺らいでいる。 本書…

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勝頼

平山優『長篠合戦と武田勝頼』を読む。 平山優『検証 長篠合戦』の姉妹篇になる。同書については,昨日, http://ppnetwork.seesaa.net/article/409358085.html?1416602810 で触れた。本書は,勝頼の出自にかなりのペースを割く。それは,勝頼が背負っているものが,長篠合戦に踏み切る勝頼の決断にかなりの影響を与えているからだと,…

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最前線

日本史史料研究会編『信長研究の最前線』を読む。 副題に,「ここまでわかった『革命児』の実像」となっているが,14人の競作のせいか,必ずしも理論的な背景が一致していない憾みがあり,旧態依然のイメージから書いている人もあって,結果としては,印象が散漫になった。 「本書は一般の歴史愛好家の方を対象にして,ほかりやすく『現在の信長研究の到達点』を示すべく刊行をけいかくした。」 とい…

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外交交渉

加藤祐三『幕末外交と開国』を読む。 1853年7月8日(嘉永六年六月六日),浦賀沖に巨大な蒸気船二隻に,帆船二隻のペリー率いるアメリカ東インド艦隊が現れた。その船に向かって,浦賀奉行所の役人二人が小さな番船で近づいた。 「幕府は『ウィンブルという旗を掲げた船が旗艦であることをよく知っていた。』と記録している。」 旗艦サスケハナ号に近寄ってきた二人の役人が,「I can sp…

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旗本御家人

氏家幹人『旗本御家人』を読む。 巻末で,この本が書かれたころ話題になった,例の「死亡届を出さす,年金を受け取っていた」ことに絡んで,「憤まんやるかたない気持ちになった」かもしれないが,として,著者はこう書く。 「ところで,この国は昔はそれほどご立派だったのだろうか。たとえば将軍以下の武士が支配していた江戸時代はどうか。『武士は今の役人よりずっと誇り高く責任感が強かったし,なにより…

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幕臣

氏家幹人『幕臣伝説』を読む。 旧旗本の大木醇堂が,明治になって綴った『醇堂叢稿』に,主として,よっているので,前作『旗本御家人』の続編と言えなくもない。前作については, http://ppnetwork.seesaa.net/article/410162722.html?1417810594 で,昨日書いた。 冒頭に,幕臣の鳥谷部春汀『旧幕の遺臣』によって,幕臣気質に…

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ノンキャリア

門松秀樹『明治維新と幕臣』を読む。 本書は,戊辰戦争の混乱期,全国統治の空白が生じかねない状況下,明治新政府は,その危機的状況に対応するため, 「幕臣の継続登用」 をはかり, 「各奉行所などの幕府機関を,所属する人員も含めて継承」 することで乗り切った。その多くは, 「ほぼ無名といってよい小身の旗本や御家人であった。彼らは著名な幕臣たちとは異なり,政府の政…

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不正

榎木英介『嘘と絶望の生命科学』を読む。 著者は,あとがきで書く。 「告白しよう。STAP細胞の論文が最初にメディアに取り上げられた夜,私は興奮していた。理由は二つある。一つはSTAP細胞が発生学上の大発見だったからだ。もう一つは,小保方氏が『後輩』だと知ったからだ。」 と,しかし,現在進行形なのでと断りながら, 「STAP細胞が明らかにした様々な問題は,理研特有の問題…

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天体衝突

松井孝典『天体衝突』を読む。 2013年ロシア南部のチェリャビンスクに落ちた隕石は, 「これまで潜在的に指摘され,あるいは実際に,地球史や生命史においては,それが本質的な役割を果たしてきたことが近年明らかにされた天体衝突という現象が,人類あるいは社会に,実際に大きな被害をもたらすことを実証した天体衝突」 であったらしい。天体衝突は,小惑星か彗星ということになる。 「素…

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生態学

江崎保男『自然を捉えなおす』を読む。 本書は,サブタイトルに「競争とつながりの生態学」とあるように,生態学の立場からの自然の捉え方なのだが,しかし,「序」で,視点を変えるのは人だけで,その視点の差は,「立ち位置」に左右される,と書いているところから見ると,本書が,さまざまな学問的な立ち位置によって,自然の切り取り方が,こうも変わるのだということを,書こうとする,意図があるのだと思う。 …

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官僚

矢部宏治『日本はなぜ「基地」と「原発」を止められないのか』を読む。 沖縄の地上面積の18%が米軍基地であるが,上空は,100%支配されている, という。しかし,それを沖縄だけのことと思っては大間違いである。実は,日米地位協定によれば, 「日本国の当局は,…所在地のいかんを問わず合衆国の財産について,捜索,差し押さえ,または検証を行なう権利を行使しない。」 つまり,場所…

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