表現ということについて~自分の表現史

面倒な理論はともかく,表現というのは,かつて吉本隆明が『言語にとって美とは何か』で,自己表出と指示表出と概念化した考え方に強く影響されている。しかし実際に小説を論じようとしたとき,その理論は使わなかった。というより,自分にとって,表出の構造よりは,強く文体に関心があったせいかもしれない。 恥ずかしながら,かつて文学青年であったなれの果てで,古井由吉の「木曜日に」の文体に衝撃を受け,芥川…

続きを読む

自己表現

先日,【第1回 表現の世界で生き続けている人は日々,何を想っているのか(アート・漫画・演劇 クロストーク)】 に参加させていただいた。 https://www.facebook.com/events/112888575581725/ アートディレクターの竹山貴さん, 女流漫画家の渡邊治四(ワタナベジョン)さん, 元俳優で今は作家の飯塚和秀さん, 三人のクロストークなの…

続きを読む

書く

普通何かがあるから,それを書く。しかし,それではつまらない。人と違うことをしなくては,自分を表現したことにはならない,そういう思い込みがある。だから,(書くことがない場合でも)何もなくても,何かを必ず書き出し,書き切る。そのために,僕は,試みに,お題を決めて,そこから何が書けるかにチャレンジしている。 その言葉から,何が出てくるか,言葉自身から何かが広がることもある。その言葉に感応して…

続きを読む

格好よさ

先日,【第2回 表現の世界で生き続けている人は日々,何を想っているのか(アート・漫画・演劇 クロストーク)】に参加してきた。 https://www.facebook.com/events/406178926155040/?ref_dashboard_filter=upcoming 別業界で活躍する, アートディレクターの竹山貴さん, 女流漫画家の渡邊治四(ワタナベジョン)さ…

続きを読む

言語化

言葉にする,というのは,言語のスピードの20~30倍の意識の流れから,言語に置き換えて,ことばとして発声する。その時,耳は,自分の声を,改めで,情報として聞くという。 オートクラインが起きるのは,このせいだが,言語化することができるようになったということは, もの(こと)を,俯瞰する, 視点を手に入れたということだ。だから,ユンギアンは,言葉を覚えたときから,われわれは…

続きを読む

片思い

どうも,ずっと片思いが続いているような気がする。 もちろん恋愛のそれも含めて,自分の思いが届かないことを指している。 思いが相手に届くことで, 共通の土俵に乗れるかもしれないし, (清水博さんの言う「自己の卵モデル」黄身と黄身の混じり合った)共通の場ができるかもしれない。 しかし,それが叶わないことで,自分には自分の可能性を削いでいるような感じがする。しかし…

続きを読む

異和

「異和」と書いたが,普通は,「違和」と書く。ただ,なぜか,この言葉が気になる。 僕の記憶に間違いがなければ,吉本隆明は,『初期ノート』から,「異和」を使っていて,編者の川上春雄が,それに「まま」とルビを振っていた記憶がある。 吉本は,若い頃から,癖なのか,意識してなのか,「違和」ではなく,「異和」を使い,最後まで使いとおした。その意図は,もう確かめようはないが, 異和 …

続きを読む

書く

言葉を覚えるということは,ある種俯瞰する視点を手に入れたことを意味する。それは,ユンギアンが言うように,そのときから,空を飛ぶ夢を見るというのは,その象徴といってもいい。 例えば,目の前の石くれを,石という言葉で置き換えることで,多くの石のひとつに,それはなった。 しかし,そのことで,石と目の前の石とは,ギャップが生まれる。置き換えて失ったのは,自分にとってのかけがえのないニ…

続きを読む

表現

表現を,仮に, 現(うつつ)を表わす, としたとする。そうすると, 「現」とは, あらわれる(あらわす), うつつ, 起きている, という意味になり,まあ出来事,現実,と捉えておく。では「表す」の「表」はどうか,同義語と比較すると, 見は,隠れたものが出てくる, 現は,見と同じ。現在=見在, 表は,うわ側へ出してあらわす, 顕は,照り輝くほど…

続きを読む

メタファー

ふいに, 山のあなたの空遠く という文句が,泡のように,意識の下層から浮かび上がってきた。 どうも,ある年代以上のひとにとっては,三遊亭歌奴が新作落語『授業中(山のあな)』でネタにしてしまったために,どうも印象がお笑い色になってしまっているが, 山のあなたの空遠く 「幸」住むと人のいふ。 噫,われひとゝ尋(と)めゆきて, 涙さしぐみ,かへりきぬ。 山のあなたに…

続きを読む

手紙

考えれば,手紙というのは,そこにわずかでも,手書きの部分があれば,その人柄がしのばれる。宛名や差出人名すら,本文がワープロであっても,わずかな手書きの手筋で,その人の状態や心理が窺える気がする。 ちょっとネットで別のコトを調べていたら,長田弘「すべてきみに宛てた手紙」に,こんな文章があることを知った。 書くというのは,二人称をつくりだす試みです。書くことは,そこにいない人にむ…

続きを読む

現出

先日,【第3回 表現の世界で生き続けている人は日々,何を想っているのか(アート・漫画・演劇 クロストーク)】 に伺ってきた。 https://www.facebook.com/events/1392994380956040/ 「表現の世界」で活躍される, アートディレクターの竹山貴さん 女流漫画家の渡邊治四(ワタナベジョン)さん 元俳優で今は作家・エッセイストの飯塚和…

続きを読む

勢い

第6回「女流漫画家 渡邊治四(ワタナベジョン)から学ぶキャリアアップのために必要なこと」に参加させていただいた。 https://www.facebook.com/events/237193076445754/?notif_t=plan_edited 今回のテーマは, なぜ漫画家になりたかったのか, 今後の目標 だが,この中で,10代半ばで,投稿して,受賞した時, …

続きを読む

処女作

処女作が最高傑作, と,あるところでついつい言ってしまったが,それをどこかで,目にした記憶がぼんやりある。何をもって処女作というかはいろいろあるが, 初めて完成させた作品, というのでは,習作との区別がつかない。意味的には,習作とは, 文芸・音楽・絵画・彫刻などで,練習のために作品をつくること。また,その作品。エチュード, となる。どれを見ても似たような感じにな…

続きを読む

喩え

たとえば,熱い思いとか,思いの深さというときの, 熱いとか深いは,「思い」というものを熱せられた何か,あるいは深い淵になぞらえなければ,表現できない。しかし思いはカタチのあるモノではない。まあ, 喩え, あるいは 比喩 なのだが,何気なく使うこれは,何なのだろう,とあらためて整理し直してみたくなった。比喩については,アナロジーを中心において考えると分かりやすい。 …

続きを読む

悲しみ

ふいと, 汚れっちまった悲しみに というフレーズが,口をついて出ることがある。有名な,中原中也の, 汚れっちまった悲しみに 今日も小雪の降りかかる 汚れっちまった悲しみに 今日も風さえ吹きすぎる(『山羊の歌』) の冒頭である。つづいて, 汚れっちまった悲しみは たとえば狐の革裘 汚れっちまった悲しみは 小雪のかかってちぢこまる 汚れっちまった悲…

続きを読む

とんだ孫右衛門

いまどき, とんだ孫右衛門。 で意味の分かる人は,それほど多くはいまい。 前に, http://ppnetwork.seesaa.net/article/418053269.html で,泥道で難儀するのを, 粟津の木曾殿, という喩を使った話をしたが,明治・大正期の人たちは(というか僕が無知なだけだが),総じて,この喩が,半端ではない。たとえば,岡…

続きを読む

々,ゝ,〱,ゞ

々,ゝ,〱,ゞ は,漢字でも仮名でもなく,しいて言うと,記号で, 踊り字 というらしい。そのことは, http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B8%8A%E3%82%8A%E5%AD%97 http://ja.wiktionary.org/wiki/%E3%80%85 http://e-zatugaku.com/nihongo/o…

続きを読む

古文真宝

小説を読んでいて, 「古文真宝な顔」 とあった。どんな顔なのか。 古文真宝とは,辞書(『広辞苑』)等々によると, 先秦以後宋までの詩文の選集。宋の黄堅編といわれる。前集10巻は漢から南宋までの古体詩,後集10巻は戦国時代末から北宋までの古文の模範とするものを集めたもの。各時代の様々な文体の古詩や名文を収め,簡便に学習することができたため,初学者必読の書とされて来た。日…

続きを読む