死について~あるいは生き方について

友人が,前立腺癌を宣告されて6年。本人は,痛みも苦しみもなく,普通にすごしてこられたことに感謝している,と淡々と言う。本来は免疫力の強い体質という結果が出たとかで,発見が遅れなければ,完治したのではないか,という感想を言っていた。すでに「癌は外へ出ていて」(という言い方をした)転移している。その中で,苦しみなく過ごせてきたことを言っているらしい。 検査数値が高くなると,これが見納めか,…

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得体のしれぬものに向き合う~石原吉郎の詩をめぐってⅡ

言語化することの大切さを先日も感じさせられることがあった。言語に置き換えることで,あるいは言語を置き換えることで,それから脳が受ける刺激が変わる。所詮日本語で考えている。言葉が発想を左右する。ヴィトゲンシュタインは,持っている言葉で見える世界が違うと言った。たぶん,虹だけでなく,日本語の虹を見るのと,他の言語で虹を見るのとは違うように,他にも一杯違いがあるはずだ。 一生の人との出会…

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「好き」についてあるいは「好き」の効果について

年甲斐もない,と言われそうだが,また「好き」のことを考えてみたい。 「好き」については, http://blogs.dion.ne.jp/ppnet/archives/11041914.html で,「恋」「愛」「好」の関係について触れたが,もう少し別の角度から考えてみたい。 どうしたら好きになるか,については,好意の互恵性だの,相手の自己開示だの,接触頻度だのとあ…

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「開く」「「聞く」「物語」について~対話への途についてⅡ

前回の, http://blogs.dion.ne.jp/ppnet/archives/11071791.html に続いて,対話への途を考えてみる。 対話について,物理学者デヴィッド・ボームは,こう書いている。 対話では,人を納得させることや説得することは要求されない。「納得させる(convince)」という言葉は,勝つことを意味している。「説得する(persuad…

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タイムレスについて

先日,第1回月刊☆西澤ロイ コトバの宇宙を巡るトークライブに参加した。 http://www.facebook.com/home.php#!/events/253615608101671/ 時間感覚がテーマであったが,結局生き方がその人の時間感覚を変える,という話だと受け止めた。 キーワードは,クロノスとカイロス。 クロノス,カイロスを,ネットで調べると,こうある。 …

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かりもの

最近,「かりもの」ということが気になる。自分が,ということもあるが,人を見ていて,そう思うこともある。口幅ったいし,まあそんな偉そうな口をきける立場でもないが(だからこそ言い得るということもある),上は,外国人(特に欧米)の著者や考え方のお先棒担ぎから,下は,ひと様の考えの真似まで,自覚なく自分のもののごとくしゃべっていると,キリではあっても,キリにはキリの虚仮の一念というのがあっていい,そ…

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意志力について

ちまたで意志力が話題になっているが,へそ曲りなので,いささか身も蓋もないことをいうが,僕は,人間の意志力というものに疑問を感じている。きっかけは,人の意志より前に脳が活動しているということだ。 何かをしようとする意図が意識されるのは,実際に手を動かすより150ミリ秒前だが,それよりも400ミリ秒前に,脳の運動神経系(補足運動野)の活動電位は上がっている,という。つまり,脳が動こうとする…

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「死」から見る

マジに,死から考えるのが,自分にとって,もはや当たり前になった。もうあと何年かが,気になる。そういう人間にとって,「未完了」などという言葉は,ちまちまして見える。その言葉に器量もスケールも感じられない。 死から考えると,どんなことも尺度が違う。 死はそれほどにも出発である 死は全ての主題のはじまりであり 生は私には逆向きにしかはじまらない 死を<背後>にする…

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関係について

人との関係を,つながりという言い方には違和感がある。誰とつながっているかが大事なので,誰とでもいいというわけにはいかない。 僕は昔から,ひとと意味なくつながるくらいなら,一人でいよう,という思いが強かった。 「連帯を求めて孤立を恐れず,力及ばずして倒れることを辞さないが,力尽くさずして挫けることを拒否する」 これは,1969年1月,東大の安田講堂に立てこもった全共闘の学生…

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分岐点

あの時,あれを選んだから,いまがあるというような,そんな大きな分岐点は,そうそうあるものではない。しかし人生は,日々分岐点だ。出かけるか出かけないか,とか,昼に何を食うか,とか,大小さまざまな決断の連続の中で,人生というタイムラインが,分岐していく。 そうしたいくつもの分岐点を分かれた結果が,いまの自分に至る。当然別の分岐に行けば,別の人生になる…かもしれないし,結局遠回りしても元へ戻…

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吹き出し型会話

マンガでは,発せられた言葉が,人物から吹き出しで表現される。 しかし揚げ足を取るようだが,あれは, 内語 か 独語 と同じく,言葉は閉じこめられている。人に向かって開かれていない。 それでなくても,口頭のメッセージの歩留りは,25%という説がある。四分の一なのである。閉じられていては,もっと低い。 あるいは自覚的には,言葉を放っている。しかし, …

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想像力

「第4回 女流漫画家,渡邊治四(ワタナベジョン)先生から学ぶ,キャリアアップのために必要なこと」に参加してきました。 https://www.facebook.com/home.php#!/events/517711378294743/ そこでのキーワードは,想像力だった気がする。ただ,想像力といった場合,僕は, 1.現実の知覚によって与えられていないイメージを浮かべる, …

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捨てる

捨てるについては, http://blogs.dion.ne.jp/ppnet/archives/11033741.html で触れたことがある。なんとなく,捨てることに,意味を持たせたがっている風潮が好きにならない。 僕が社会人になったころ,ワンウェイということで,使い捨てがキャッチフレーズであった。捨てるはプラスの意味が与えられていた。確かヤクルトが,ボトルの一体成…

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経験

人は経験しているが,日々時間の流れの中で,忘れていく。それでなくても,8時間後には,学んだことの半分ないし,3分の1は忘れていく。 人によっては,とても口では言えないくらいのドラスチックな経験をしたり,すさまじい冒険をしたりしている。 僕は経験が非日常的だから,そこに価値があるとは思わない。所詮非日常は非日常だ。冒険家だって,社会へ復帰すれば,ただ日々食うために生きて行かなくては…

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沼山

横井小楠,沼山津へ転居後,沼山とも称した。僕はこの号が好きだ。 小楠は,二度,日本を大回転させるべき機会で,狭量なるテロリズムによって,その行く手を遮られた。一度は,同じ熊本藩の勤王党によって襲撃を受け,二度目は,新政府に招かれたところで暗殺された,尊攘派志士によって。 小楠については, http://blogs.dion.ne.jp/ppnet/archives/1115…

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不器用

まあ,不器用といっていい。人との付き合いも,仕事の仕方も,そう器用にサクサクと片づけていけない。尾を引く。 器用の, 器 というのは,ひとつは, はたらき(才能) であり,いまひとつは, 度量 であり,器量の器,大きさといっていい。いまひとつは, うつわにする, つまり,才能に従って使用する, ひとつのことに役立つ, という意…

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引っ掻き傷

かつて入社してしばらくたったころ,年長の先輩から, この会社に引っ掻き傷を残せ, と言われた。その時は,何か自分の名前のついて回る新商品を出せ,という意味だと聞いていたものだが,いま考えると,そういうことだけではなく,もっと,自分という存在が,そこにいた痕跡を残せというような意味だと理解している。 いまはこの会社は,社員の何人かが買い取って,別の会社になっているが,ついこの…

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諦める

諦めるは, 思いきる, 仕方がないと断念したり,悪い状態を受け入れたりする, それまで続いていたものを終わりにすること, といった意味が辞書にある。しかし,この「諦める」は,「明らむ」の,「明るくなる」という意味以外の, 物事を見きわめる, 物事が明らかになる, 確かめられる, という意味からきているという。 ということは,諦めると決めたとき,どっち…

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分れ道

何気なく,分れ道と書いて,別れ道とはちょっとニュアンスが違うことに気づいた。岐路の意味で,分岐点と同じ意味で言い換えたつもりだが,そこには,メタファーが潜んでいて,別れ道というと,人との別離が意味されているということに気づいた。当然,その先には死別が含意されてくることになる。 ちょうど分岐点のところで,手を振って別れる。握手して別れる。いまなら,乗り換えのところで,そうやって別れる…

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