言葉によって見える世界~好きなフレーズを拾うⅠ

かつて学生のころ,ひとつの転機を表現する意図だと思うが,二つの代表作の完結について, (鉄腕)アトムは太陽に向かって飛び,(サイボーグ)009は流れ星になった, という名文句を,読んだ記憶があるのだが,たぶんそれだと思った石子順造の本(『マンガ芸術論』)には出ていなかった。もう一人の石子だったかもしれない。そう思うと,かつて読んで,心に残った一言が気になりだし,とりあえず気になる…

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意地

意地という言葉は,あまりいい意味に使われない。 意地汚い 意地が悪い 片意地 意地っ張り 意地を通す 意地にかかる 意地になる 底意地 等々まあ,依怙地というか,頑固というか,執心というか,心映えが悪いというか,おのれの我を通すという意味に使われることが多い。 這っても黒豆, といった,強情さそのもののように言われる。 しかし,へそ曲りなので,僕に…

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ことば

コーチング・フェローズの毎月一回のコーチング・セッション会に参加してきた。そこでの体験については,何回か書いたことがある。 http://blogs.dion.ne.jp/ppnet/archives/11132452.html http://blogs.dion.ne.jp/ppnet/archives/11099351.html ただ,最近は,コーチングということにこだ…

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間(ま)

間抜けの,「マ」が気になり,続いて, 合間と間合と隙間, という言葉がふと浮かんだ。 単なる思い付きだが,ここから,どんな展開にできるか,成り行き任せ,ということで…。 合間,というのは,物事の途切れた間,あるいは,「たまに」。 間合,というのは,何かをするのに適当な距離や時機,ころあい。調子や拍子の間。相手との距離。 隙間,というのは,モノとものとの隙,…

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迷い

いまさら迷うような歳ではない,とふとつぶやいて,迷い,という言葉の意味が気になった。 言ってみれば,迷うということは,煩悩は凡夫ゆえに仕方ないとして,何かを未決のまま,決めかねている状態といっていい。まあ,ここまで生きてくると,それは少ない。というか,迷いを蹴散らさなくては(見過ごす,目を瞑るも含めて),生きてこられまい。 辞書では一番に, ①布の経糸と緯糸がほつれて偏ること,…

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捌く

てきぱきと手際よく物事を捌く,というのは,傍から見ていて気持ちがいい。手際とは,要するに, もの事を処理する腕前, ということになる。手際とは, 手+キワ(処理を極める) だから,手並み,腕前となる。 捌くは, サ+分く で,入り組んだ物事をきちんと処理する意味である。だから,捌くの意味は, ①入り乱れたりからんだりしているものを解きほぐす …

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嗜む

たしなむ, という言葉の響きがいい。語源は, タシナム(堪え忍ぶ)の変化, だという。転じて, 深く隠し持つ, 常に心がける, 謹む, 遠慮する, 身辺を清潔にする, 有ることに心を打ちこむ, といった意味になる,とある。ニュアンスは,嗜みは, 身につけておくべき芸事の心得を指し,「素養」よりも技術的な側面が強い, とある。では,素養はとい…

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知る

たしか,映画『たそがれ清兵衛』の中で,娘が,裁縫を習うのは役に立つが,学問をすることが何の役に立つか,と問うところがあった。そのとき清兵衛は,自分の頭で考えることができる,という趣旨のことを答えていたと記憶する。 考えるについては, http://ppnetwork.seesaa.net/article/389704147.html で触れたので,ここでは,知る,ということ…

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心が折れる

心が折れる,とは, 諦めるや挫折といったような心境 を意味するらしい。 最近使われ出した。印象深いのは,イチローが使ったのだが,元祖は,女子プロだという。 折れる とは, 曲って二重になる, 曲って,二つに別れ離りる, 道などを曲がる, 挫ける,気勢を削がれる(腰が折れる) 主張・意見を和らげ,相手に従う ものごとに苦労する(骨が折れる) …

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甲斐

「かい」とは何だろう。 甲斐は, 行動の結果として現れるしるし。努力した効果, 期待できるだけの値うち, とある。 甲斐は, 甲斐, 詮, 効, を当てる。しかし, 甲斐がない, と 詮がない, と 効(目)がない, では微妙に違う。 詮は,「はかり」の意味で, 物事の道理を明らかにとく, 物事の道理が整然と備わ…

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すみません

つい言ってしまわないか。 すみません と。大概曖昧だ。謝る意思を示すときは, ごめんなさい, と言う。しかし,すいませんは,ちょっとニュアンスを濁す感じがある。 すむ, は, 住む,済む,澄む,清む,棲む,栖む, と当てる。 すみませんは,語源的には,僕の見たものでは, 「澄み+ません」で,謝罪,感謝,依頼などで,「済みません」と書…

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立つ

立つの語源は,「タテにする」「地上にタツ」らしい。立つ,建つ,起つ,発つ,は中国語源に従うとある。これと別系統で,「タツ」というのが,裁つ,絶つ,断つ,とある。これは,タチ切ル,のタチから来ているらしい。 では,立つの意味は,というと,これが凄い。広辞苑(電子辞書版)をベースにいくつか加えると…。 1事物が上方に運動を起こしてはっきりと姿をあらわす  ①雲・煙・霧などがたちのぼ…

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視圏

持っている言葉によって,見える世界が違う。 と,ヴィトゲンシュタインが言ったと思い込んでいるが,見当たらない。あるいは, 私の言語の限界が私の世界の限界を意味する をそう読み替えたのかもしれない。いずれにしても,持っている言葉が, その人の世界 を限る。 確か,僕の理解では,敗戦に対する思想的な決着として,和辻哲郎は『鎖国』を書いた。鎖国とは, 鎖さ…

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ヒマ

暇だな,と思ったとき,では暇ってなんだ,と疑問がわいた。 ひまは, 暇, 閑, 隙, の字を当てる。「すき」との差はあまりない。同じ字を当てる。語源的には, ヒ(すいたところ)+マ(すきま) とあり,空間的なヒマから時間的なヒマへと変化した,という。ただ,中国語では, 暇 は,隠れた価値をもつ時間という意味で, 日+瑕(未加工の玉) …

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切ない

切ない,などという心境は,加齢とともに,心臓が鈍磨し,感じなくなって久しい。なかなかナイーブな気持ちに思う。 意味的には,ともかく,語源的には, 切+ない(甚だしい) で,心が切れるほどの思い,とある。 だから,語義的には, ①悲しさや恋しさで、胸がしめつけられるようである。やりきれない。やるせない。 ②からだが苦しい。 ③身動きがとれない。どうしようもない…

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ことば

ことばというのは,『大言海』には, 口にあらわるる意なるべし。ことのは,とも,口のは,ともいう とある。しかし,語源的には,三説あるらしい。 ①コト(言)+ハ(葉)で,言の葉が語源とする,紀貫之の『古今集』の序で述べている説 ②コト(言・事未分化)+葉(茂らせる)が語源。事柄を口に出し茂らせる意 ③コト(言・事)+ハ(端)が語源で,事柄の一端を口に出すのが言葉,という説…

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ご免

天下御免の向う傷, と言ってピンとくる人は,ほぼ同年代といっていい。しかし,この場合の, 御免 と ごめんなさいの ご免 が同義とは到底信じがたい。語源的には, 御+免 で, 免ずる(免許,免職)の尊敬語 とある。「お許しを」の尊敬語となる。しかし,語義は, ①免許の尊敬語。お上のおゆるし。「天下御免」はそれ。 ②免官・免職…

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面倒

最近,何事もめんどくさがるようになった。えっ,面倒って?ということで調べると, 語源的には,四説ある。 ①目+ドウナ(だるい)の変化。見るのも大儀な,の意。 ②メドウ(目遠)の撥音便化で,見にくいの意。 ③見たくもないの意の「面伏せ」を漢字に訳し,「面倒」として音読した。 ④目+ダウ(無益)で,見るのも無駄の意。 どうもこれといって確定していないようだが,見苦しい,く…

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約束というのは, 括り束ねること ある物事について将来にわたって取り決めること,約定 種々の取り決め かねてから定まっている運命,約束事 といった意味がある。日葡事典は, ヤクソクヲトグル ヤクソクヲタガユ という用例があるらしいので,戦国期には使われていたらしい。 これを守るかどうかは,たぶん,その人のコアの倫理観を反映している気がする。あまり迂闊に言…

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仕儀

辞書を調べると, ことの次第, ことのなりゆき とある。語源を調べようとしたが,持っているものでは載っていない。で,大槻 文彦編『新訂大言海 』を繰ると, 旨義 あるいは 時宜 の転か,とある。 旨義は,文章などで表現されているものの,おもむき,意味,とある。 時宜は,ときの宜しきにしたがうこと,程よき頃,とある。 そのとき を少し長くす…

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