2015年03月30日
時間感覚
時間感覚は,歳と共に早くなる。
空間は双方向なのに,時間は一方通行で,逆転はない。それについて,こんな記述があった。
「虚数の時間を,数学的に,空間の一つの次元(方向)と同じものに当たると考えると,かつて時間は存在しなくて(それゆえ因果律はなくて),四つの次元を持つ四次元空間が存在しており,その四次元空間のうつの一つの次元が,何らかの理由で変質し,それがやがて私たちの知る実数の時間になった(それゆえ因果律のある時間になった)のかもしれない。」
と,まあ,しかし逆転はないので,時間が一方通行である事実に変わりはない。
ほとんどの生物は,24時間サイクルの体内時計を持っている。生理時計である。サーカディアンリズム,
おおよそ一日のリズム
である。人間(をはじめ,哺乳類)だと,視床下部の視交叉上核が,主要な役割を果たしている,という。地球上生物は,動植物から単細胞生物まで,地球の昼夜の24時間サイクルに適応した生理リズムを創り出してきた。
しかし,人間の場合,意識というか,自身を対象化している対自がある。その心理的な時間がまたある。その心理的時間が,生理的時間,物理的理的とは別に,人に違う時間感覚を与える。たとえば,夢中になっていると,時のたつのを忘れて,もうこんなに経ったのか,と感じるように。
ジャネの法則
というのがあるそうである。、19世紀のフランスの哲学者ポール・ジャネが発案し,甥の心理学者ピエール・ジャネの著書において紹介された法則である。
①人間は,生理的に興奮して体温が上がるほど,心理的には時間の流れを「遅く(長く)」感じる
興奮して体温が上がると体内時計が早くなり,脳内の酸化新陳代謝の速度も速くなるから,生理的には同じ時間でも,心理的には「遅く(長く)」感じるものらしい。それは,平静だと,逆に,心理的には早く感じる,ということになる。
②人間は生理的には同じ時間でも,時間の経過に注意を向ければ向けるほど,心理的には時間の経過を「遅く(長く)」感じる。
早く過ぎてくれればいいと思うときほど,時間はなかなか過ぎて行ってくれない,というのはよくある。
③人間には生理的に同じ時間でも,時間の経過中に起きる出来事が多いほど,心理的には時間の流れを「遅く(長く)」感じる。
ここから,逆に,
加齢にともなう時間感覚が想定できる。つまり,なぜ,歳をとると,時間の流れを早く感じるのか,と。
生涯のある時期における時間の心理的長さは年齢の逆数に比例する(年齢に反比例する)
というのである。
その人が自分の人生で経験してきた「時間の長短」(年齢差)によるからである。
つまり,同じ一年でも,五歳の子にとっては,1/5だが,80歳の人間にとっては,1/80だからである,ということになる。
しかし寿命時間は,一律である。
心拍数の周期(心周期)は,体重の1/4乗に比例する,
人は,一分間に約60回,心周期は1秒,ハツカネズミは600回,心周期は0.1秒。つまり,
体重が十六倍になれば心周期は二倍になる,
さらに,寿命も,
体重の1/4乗に比例する,
という。で,心周期も寿命も,それぞれ体重の1/4乗に比例するので,
寿命を心周期で割ると,すべての哺乳類は,
15億回,
という数値になる。心臓が15億回鼓動すると,寿命が尽きる,というわけである。さらに,寿命を呼吸の周期で割ると,
3億回,
つまり,すべての哺乳類は,3億回呼吸をすると,寿命が尽きることになる。ずいぶん昔,『ゾウの時間ネズミの時間』(本川達雄)で読んだはずだと思うが,すっかり忘れていたが,
心拍数
呼吸数
は,どの生物も皆,それぞれのサイズにあった,同じ長さの時間を生きる,ということになる。それは,細胞の分裂の限度(DNAの末端にあるテロメアは分裂ごとに短くなり,半分になると分裂を停止する),つまり,細胞再生しないとき,と一致しているのであろう。
ならば,どれだけ,
長い,
と感じる時間を生きるか,ということになるのだろう。それを,
心の時間
というのだろう。それを,人間の心の中だけにある,
宇宙の時間,
とハイデガーは呼んだそうだ。そこでは,
相対性原理の物理的時間の制約
を免れているのである。
参考文献;
岸根卓郎『量子論から解き明かす「心の世界」と「あの世」 』(PHP)
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm