2013年04月05日

承認の先


承認については,

http://blogs.dion.ne.jp/ppnet/archives/10999038.html

で,触れた。一般に,承認(アクノレッジメント)については,

「a statement or action which recognizes that something exists or true」

そこに存在していることに気づいていると表明したり振る舞いで表すこと,とされている。つまり,相手の存在を認め,更に相手に現れている違いや変化,成長や成果にいち早く気づき,それを相手に伝えることである,とした。

茂木健一郎さんは,

脳内報酬物質を放出させるきっかけになる外部からの刺激のうち,最も強力なものは,他人からの承認である。何かをやって,それを周囲から認められたり,褒められたりしたときに,そのことが脳内のドーパミンをはじめとする報酬物質を放出させるのである。その結果,強化学習が成立することになる。脳は,「他人にほめられるように」変化していくのである。

厳密に言うと,ほめると承認は違う。その微妙な差も,

http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/prod06431.htm

で触れた。承認には,そのありようの承認と,そのふるまいの承認がある。しかし,もう一つ突っ込むと,ありようの承認につながらなくては,口先のリップサービスになる。その意味では,すでに,認知に近い。つまり,ある特定の行動を起こしたり,ある特定の目標を達成したりする過程で発揮したその人の強みや良さを本人に伝えること。相手がどんな人なのか,その人自身が気づいている以上のリソースや力,価値観などを伝えることである。

ある意味でその人の遺伝子の可能性に気づくきっかけになる。それをリソースの最大化と呼んでもいい。

しかし視点を変えると,ひとは承認されるために生きているのではない。認知されなくても,おのれ自身で自分を認めなくては,次へは進めない。次のハードルへはチャレンジできない。

自分の中に,自分を動機づけ,自分をけしかけて,駆けさせる何かを持っているかどうかが,鍵なのではないか。その人にとっては,承認は,引き金になるかもしれない。あるいは落ち込んでいる自分を励ます機会になるかもしれない。

しかし順序はあくまで,自分の中にチャレンジするエネルギーがなくてはならない。

では,そのエネルギーは何か?

あるいは,自分を前へ進めさせるものは何か?

子曰く,如之何(いかん),如之何(いかん)と曰わざる者は,吾は如之何(いかん)ともする末(な)きのみ。

と。つまりは「問い」がある。問うべき何かが自分の中にある。

人には,「己の為にする」(自己の向上を志す)心があってこそ,はじめて「己に克つ」ことができ,己に克つことができるからこそ,己を成すことができる。そのために学ぶ。

克己心というが,ここで言うのは,おのれ自身の糧とするために,前へ出る。それを,自分の中にある,自分本来の仏性を生かして,おのれを完成する。見性成仏ともいう。すべてのひとがおのずから『箇箇円成』し,大なるは大を成し,小なるは小を成し,外に求めずとも,いっさいが自己に具足している。

神田橋條治さん流に言うと,遺伝子を開花させる。ただし鵜は鵜に,鷹は鷹に。見性をそうとれば,自分の中にある可能性を最大化する,「己の為にする」とはそのことだ。

それを成長欲求と呼んでもいいし,自己探検と呼んでもいい。そこに目的はない。おのれの「のびしろ」を楽しむそういうマインドが必要なだけだ。「のびしろ」は,いっぱいになると,またのびる,その繰り返しの中で,自分がどこまでの可能性をもっているのかをわくわくしながら追いかける。それが生きる楽しさなのかもしれない。

あるいは,もうひとつ踏み込むと,変身欲求,あるいは変身願望でもいい。もっと違う自分に出会えるのではないか。自分はこんなんじゃない,こんな程度ではないという,自分への期待かもしれない。

それは,ほんのちいさなことを認められる。「自分はそうなんだ」と自己認知を変えるきっかけがあればいい。自分は気づいていないが,人からはそれがその人の「凄い」点と認められるだけで,自分を見る目が変わるかもしれない。ダメだダメだ,と自分を貶め続けていたのに,その自分に厳しいところがいいと言われた瞬間,当たり前にやっている自分の行為が,自分のリソースに見えてくる。特徴に見えてくる。その「見え方」の変化する瞬間を持てたかもてないかが大きな違いになる。

人は自分のいいところに気付けると,自分の見え方が変わり,自分の見方が変わる。自分にとって当たり前のことが,人にとっては当たり前ではない。その人それぞれの当り前でないところが,その人のその人たる所以なのだろう。

承認は,その意味で,ひとつのきっかけ,その先へ行く大事な突破口なのかもしれない。


参考文献;
茂木健一郎『思考の補助線』(ちくま新書)
貝塚茂樹訳注『論語』(中公文庫)
王陽明『伝習禄』(溝口雄三訳 中公クラシックス)

今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm



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posted by Toshi at 06:00
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