2013年05月10日

リアリティを支えるもの


ロバート・ウォボルディング『リアリティ・セラピー』を読む。

グラッサーの『選択理論』を読んだ流れから,ここに遡っている。リアリティ・セラピーについては,訳者の柿谷正期氏が,こう要約している。

他のカウンセリングと違う点は,過去の出来事が現在の状況に直接関係していなければ,クライアントの過去についてあまり話をさせないようにすることである。また,「感情」は「全行動」の構成要素のひとつに過ぎないので,コントロールしやすい「行為」と「思考」に関連づけ,いつまでも「感情」に焦点をあて続けることをしない。変化をもたらす具体的な方法では,クライアントが現在欲しているものを尋ねる。そしてここからクライアントが自分の人生を展開していきたいと思っている方向に広げていく。

だから,クライアントの今していること(全行動)に焦点を合わせ,現在の方向は自分で選択したものであることを理解させる。

リアリティ・セラピーの中心点は評価の質問にある。「現在の行動を続けていて,自分の求めているものが手に入る可能性があるか。また自分が行きたいと思っている方向に行くことができると思うか」と尋ねる。

過去を重視しないのは,ブリーフ・セラピーは,過去を問題にしないので,リアリティ・セラピーの専売特許ではないが,「行為」に着目するところは結構面白いと思う。ソリューション・フォーカスト・アプローチのミラクルクエスチョンでは,奇跡の起きた朝を,詳細に聞いていくが,必ずしも行為ではなく,その場,そのシチュエーションを詳細に描写する方に力点がある。そうすることで,奇跡のリアリティが高まり,それだけで気づきが起きる。

リアリティ・セラピーの前提になっているのは,次の二つである。

ひとつは,人間を動かしている基本的な欲求は,4つである。
①所属の欲求 人と親しくなり,かかわりをもちたいという欲求
②力への欲求 人との競争の中,あるいは何かを達成したいという欲求
③楽しみの欲求 遊びや笑いの欲求
④自由の欲求 選択肢場所を移動する自由,内面の自由の欲求

いまひとつは,人の行動は,行為,思考,感情,生理反応の4要素から成り立っている。

そこから,リアリティ・セラピーの原則が生まれる。
第一原則 人は欲求(ニーズ)と願望(ウォンツ)を充たすことに駆り立てられている。
第二原則 自分の求めているものと,置かれた状況で自分の得たものとの差(フラストレーション)が具体的な行動を生み出す
第三原則 人間の行動は,行為,思考,感情,生理反応で構成されており,目的がある。すなわち行動は,自分の求めているものと,自分が得ているとおもうもののあいだにあるギャップを埋めようとするものである。
第四原則 行為,思考,感情,生理反応は,分離できない行動で,内側から生じる。そのほとんどは選択である。
第五原則 知覚を通してこの世を見るが,知覚には,出来事や状況を知識として取り入れる低いレベルと,それについて評価を加える高いレベルがある。

ある意味で,望んでいること(目標)と現状とのギャップを明確にして,その目標実現をサポートしていく,問題解決プロセスに近似しているように見える。

だから,まず「何を欲しているか?」「何を望んでいるか?」という質問が重要である。そこで自分の欲求をどう満たしたいかを明確にしていく。しかし,それが,本当に望んでいるものかどうかが,クライアント自身にだってはっきりしているとは限らない。一見,試験に通ることを望んでいるようでいて,実は,その先の,「自由」を目指していることだってある。で,こんな質問になる。

「もし欲しているものが得られたら,何を手に入れることになりますか?人生はどうなると思いますか?」

だとして,

「いまあなたのしていることは,そのために役に立っていると思うか?現在の方向は満足のいくものになっていると思うか?」

そして,

「人生をよりよいものに変えるために,今晩どんなことをしてみたいですか?」

つまり,自分の人生の支配権は自分にあり,人生そのものが自分の選択にかかっている,ということを質問を通して,クライアントに提案している,あるいはリクエストしていることになる。

人生の大まかな方向について明確にした後,具体的に何をするかを詰めていく時,有効なのが,「行為」についての質問だ,というところが,リアリティ・セラピーの要になることのように思う。

「あなたは何をしているか?」

という問いである。

何が出来事に遭遇してばたついたときや欲求不満に陥ったとき,われわれは自分の感情には気づいても,その時の「行為」には気づいていない。リアリティ・セラピーでは,他のセラピーがするように,「感情をみきわめ,感情に触れ,何年もさかのぼって,原因と思われる過去の出来事に対して洞察を得る」ようなことはしない。感情は,あくまで,クライアントの選び取った行動から自然に出てきたものと考える。あくまで,行為の結果とみなす。だから,行為に着目する。

確かに,落ち込んだり動揺しているとき,心の状態に意識が向いているので,そのとき自分が何をしていたか,そのときの振る舞いや行為には無自覚だ。そこで,

自分の行動の「行為」の部分を変えれば―ということは,よりよい選択をすれば―感情も必ず変わる…

と考える。そこで,クライアントが一番気づいていない「行為」に焦点をあてる。特定の日に,何をしたかを,テレビカメラで記録するように,詳細に,描写する。

その上で,クライアント自身に自分を評価させる。

「あなたのしていることは,役立っていますか?」
「いましていることをつづけて,自分の求めているものを手に入れられますか?」
「あなたの欲しているものは現実的ですか?達成可能なものですか?」
「そのような見方をして役に立ちますか?」
「あなたは此のカウンセリングで自分の人生を変えることに,どれほど本気で取り組む決意ですか?」
「それは役に立つ計画ですか?」

そして,行為を変える,行動計画を立てるが,リアリティ・セラピーの計画は,些細な「行為」にある。

「今晩何をしますか?」

は,大それたことである必要はない。たとえば,いつも喧嘩している妻に,「笑顔になる」という行為であるかもしれない。鬱の女性は,車で送迎してくれる娘に,「川がきれいだね」と一言言うのかもしれない。

小さなものの積み重ねがあって完成があるが,何かを完成させることは小さなことではない。

大事なのは,結果(目標)中心ではなく,過程中心の計画なのだと,リアリティ・セラピーは考えている。小さな行為を積み重ねる(選択する)ことで,行動が変わる。行動が変わることで感情が変わる。

楽しいから笑うのではなく,笑うから楽しい。

http://blogs.dion.ne.jp/ppnet/archives/11165966.html

で触れたように,怖いから鳥肌立つのではなく,鳥肌立つから怖い,つまり,笑うからうれしいし,泣くから悲しい。これが今の脳科学の常識らしい。その意味では,小さな行為を通して,行動を変え,感情を変えていくことは理にかなっている。


参考文献;
ウイリアム・グラッサー『選択理論』(アチーブメント出版)
ロバート・ウォボルディング『リアリティ・セラピー』(アチーブメント出版)

今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm



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posted by Toshi at 04:06
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